ニュース 2021.06.03. 14:14

【横浜球友会】子ども達を惹きつけ続ける、人気チームの秘訣に迫る(後編)

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少年野球人口の減少が叫ばれる中にあっても部員数が70人を超える童野球チーム「横浜球友会」(横浜市都筑区)。保護者のお茶当番なし、試合に全員を出場させるなど、今でこそ良く耳にする取組みをチームを結成した22年前からいち早く行ってきた。子ども達が集まり続ける秘訣はどこにあるのか? 前回に続き、笹木郁男監督に話を聞いた。

(インタビュー前編はこちら)







横浜球友会にはチームを創立した22年前からちょっとずつ書き足して作った「横浜球友会 格言」がある。



この格言はプリントされて配布されているが、他にも4年生の秋頃から野球の絶対理論、カウントマップ、バッティングポイントの考え方などが記されたプリントも配布されている。
「この理論を覚えてこないと試合に出さないぞー(笑)、とか煽りながらやっています」
技術的なことはこれらをベースに、その時の子ども達の能力などを見ながらアレンジを加えて指導しているのだという。

「現代野球はスキルの前に頭ですから」と言う笹木監督。配布するプリントもすぐに全部を理解できなくていい、やりながら覚えていけば良い。何より大事なのは、子どもたちに「野球は頭を使うスポーツ」と理解してもらうことだと話す。

 

笹木監督流、キャッチボール理論


笹木監督はキャッチボールでは二つのことを重視している。一つは「投げる」よりも「捕る」ことをメインに考えること。
「キャッチボールの基本は『相手の胸にボールを投げろ』って言われると思うんですけど、そもそも野球をはじめたばかりの小さい子や初心者は胸に投げられないですから。だから、投げることより『捕ることを頑張れ!』ということなんです。どこに飛んで来るか分からないボールに反応するわけですから、それがmovementトレーニングにもなるし、コーディネーションにもなるしビジョントレーニングにもなるんです」

そしてもう一つは動きながら行うこと。
「試合中に止まってボールを投げることってほとんどないですよね。なのになぜキャッチボールってみんな止まったままやるのでしょうか? だからウチでは障害物を飛びながらジャンピングスローとか、横ジグザクをしながらとか、色んな動作をしながらキャッチボールをしています。そうやって投げさせることで対応能力が付いてきますし、自然に投げ方も覚えていきます」



笹木流キャッチボールは限られた時間を効率的に使う工夫にも繋がっている。動きながらキャッチボールを行うことが全身運動にもなり、アップを兼ねることもできるからだ。
また、1年生や初心者は必ずコーチとキャッチボールをさせているが、それも時間の効率利用の一つなのだという。
「1年生や初心者同士でやらせると後ろに逸らすことが多くなってしまいますから、ボールを捕りにいく時間がもったいないですからね」

長年多くの子ども達を見てきた笹木監督らしい着眼点だ。
練習時間は平日の2日、時間は2時間程度。長時間練習を行わない分、練習の至る所に時間を無駄にしない工夫が見て取れる。

 

子ども達の帰ってくる場所


横浜球友会は毎年3月になると3日間の春合宿を行っている。この合宿を6年生たちはずっと楽しみにしているのだそうだ。
「5年生以下は野球をガッツリやるのですが、6年生は野球をやってもやらなくてもいいんです。最終日の午前中だけ5年生対6年生の壮行試合をやるんですけど、それ以外のスケジュールは近くの温水プールとか体験工房とかに僕と遊びに出かけるんです(笑)」

楽しそうに笹木監督は続ける。
「合宿のしおりも6年生とそれ以外は分けて作って。5年生以下は21時消灯、お菓子の持ち込み制限、自動販売機のジュース購入禁止とかあるんですけど、6年生は消灯時間なし、お菓子持ち込み放題、自動販売機のジュース購入可能とか、露骨に差をつけて(笑)。とにかく6年生に対して『こんなに面白い、楽しい合宿はない!』って思わせてやろうと、毎年趣向を凝らして色々とおもてなしを考えているんです。6年生は少年野球の最後のこの合宿が楽しみで仕方なくて、5年生はそんな6年生を見ているから『来年の合宿まで頑張ろう!』ってなるんです(笑)」

横浜球友会の卒団生の多くは中学、高校でも野球を続けている。しかし、卒団しても笹木監督、チームと繋がりを持ち続ける子が多いという。部活での悩みを相談に来る者、グラウンドを訪れて隅で練習を行う者。そういった関係性が続くことも横浜球友会の特徴の一つだ。最後にその象徴的なエピソードを紹介したい。

「チームを立ち上げた22年前、自分の中である目標を立てたんです。それは試合に勝つとか優勝するとかではなく、将来教え子達が戻ってきてコーチ全員がOBになること。そうなったら楽しいだろうなって」

送り出した卒団生が中学、高校、大学へと進み、いつしか学生コーチとして1人、2人と帰ってきてくれるようになった。そして2016年、立ち上げから17年で笹木監督の目標は達成されることになった。
「次の目標は教え子達の子どもがチームに入ってきてくれたらいいなと、そんなことを今は思っています」。

そして、取材の最後に言った。
「自分のチームさえ良ければという考えは捨てています。横浜球友会のやっていること、ノウハウは誰にでも教えますし、色んな野球関係の方と繋がって同じ志を持つ仲間が増えるといいなと思っています。とにかく野球をする子どもをもっと増やしたいんです」。(取材・写真:永松欣也)
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