ニュース 2022.04.08. 17:30

緩くてもいい、子ども達が「野球って楽しいな」と思える環境を目指す|大田ドリームス(前編)

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かつての勝利至上主義の方針から育成重視に大きく方針転換をした中学軟式野球チーム「大田ドリームス」(東京都大田区)。チームに集まるのは小学生時代にレギュラーになれなかった子がほとんど。強豪チームで全国大会出場や強豪高校への進学を目指すのではなく、楽しく野球ができる環境を求める子達の受け皿になっているチームです。2年生チームの監督と事務局長を務める潮田剛己さんにお話を聞きました。




「野球って楽しいな」って、このチームで思ってもらいたい


——大田ドリームスの特徴はどんなところにありますか?
近年は育成をメインに考えている点ですね。

——「近年は」ということは、昔は違ったのでしょうか?
結成当初はとても強くて全国大会にもよく出るようなチームでした。それがあるときから部員が集まらなくなったんです。どうやったら部員が増えるかと考えたときに、今のやり方で子どもが集まってきていないのだから同じやり方を続けるのはどうなのかなと。それで、それまでの勝ちを求める方針から育成をメインにする方針に転換しました。強さを求めるだけであれば他のチームと同じですから。
ですから、どうしても勝ちたい、全国大会に出たいのであれば「他のチームに行った方がいいですよ」と体験会に来た子どもや保護者に話をしています。その代わり、うちのチームでは全員を試合に出しています。

——全員試合に出すというのは公式戦も練習試合も?
そうですね。ベンチ入りメンバーは全員試合に出します。

——今現在はどういう子ども達が集まってきていますか?
小学校時代にレギュラーじゃなかった子達がほとんどです。



——チームとして指導する上で「こういうことはしない」と決めていることなどはありますか?
怒鳴る指導は一切しないことです。怒鳴れば怒鳴るほど「私には指導力がありません」と言っているようなものですから。そういうことはスタッフ会議で話してもいます。

——確かに練習を見ていて怒鳴り声などは一切ないですね。コーチ達も非常に楽しそうにしている姿が印象的ですね。
大人が楽しそうにしていないと子どもも楽しくないと思うので、それもいつもコーチ陣で話していますね。

——グラウンドの中でも選手とコーチ達が談笑したり、関係性の良さが見えますね。
今の子ども達って、どういうものが好きで、どんなことを考えているかも分からないですから、我々の方から「お前彼女できたのかよ?」とかそういう他愛のない話をしたりしていますね。



——近年、少年野球人口が減少しています。そのなかでも中学軟式は減少が激しいですが、中学野球の指導者として思うところはありますか?
他のチームなどを見ているとやっぱり怒鳴って指導しているチームが多いですよね。監督、コーチが偉くて、お前達は言うことを聞いておけば良いというような、そういう空気感に嫌気がさしているのではないかと感じています。だからこそうちのチームでは、雰囲気は緩く見えるかもしれませんが、子ども達は楽しく野球をやっています。最終的には楽しくやりながらも試合で勝てるようにという、敢えて難しいところを目指しています。

——「楽しい」と「勝つ」の両立は本当に難しいですよね。
そうですね。でも楽しくやっているからといって、試合に勝たなくたっていいということではやっていません。うちのチームには負けたからと言ってヘラヘラする子もいませんし、2年生くらいになると負けて悔し涙を流す子もいるくらいです。

——チームの目標はどこに置いていますか?
楽しくやりながらも、中三になったときに勝てるチームになることです。

——「楽しい」と結果の両立を目指すということでしょうか?
結果は残ってくれたらいいなとは思っています。でも一番は彼等に高校、大学などで長く野球を続けてもらうことですね。そのためにも「野球って楽しいな」って、このチームで思ってもらえることが大事ですし、そんな環境を提供できれば最高かなと思いますね。目指すところはそこですね。(取材・写真:永松欣也)

インタビュー後編に続きます。
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