ニュース 2023.03.27. 12:08

「本当に楽しいものは楽じゃない。楽なものは本当の楽しさじゃない」|つくばヤング

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2018年には全国大会で初めてベスト8に進出。この春も含めて三期連続の全国大会出場を決め、甲子園常連の強豪高校へ進む選手も増えている「つくばヤング」(茨城)。前編ではオフ期間のトレーニングについてお伝えしましたが、後編ではチームを率いる籔田武史監督にお話を聞きました。




——リトルシニア、ボーイズ、ポニーなど色んな中学硬式野球がありますが、ヤングの特色はどんなところにあるのでしょうか?

他の団体との違いでいうと、例えばシニアだと6月とかに予選が終わったらほぼ終わりになると思いますが、ヤングの場合は秋にも大会があり、結果次第では11月のグランドチャンピオン大会という全国大会があります。そういう面では中学3年生たちに最後まで大会を経験させるという趣旨があると思います。

——監督の指導方針、モットーを教えてください。

「本当に楽しいものは楽じゃない。楽なものは本当の楽しさじゃない」ということです。
「楽しい」というのは私の中では、試合に勝つことであったり技術の向上のこと。(勝敗は気にせず)「子ども達の自主性に任せる」というチームもあると思いますが、中学生年代に自主性に任せるのはまだちょっと厳しいと感じています。自主性に任せる前に、まずは色んな選択肢を選手達に与えておかないと中学生年代では簡単に自主性も芽生えないかなと思っています。

——中学年代で自主性は必要ない?

自主性はもちろん求めるんですけども、そのために必要な材料はティーチングという形で、まずは与えないといけないと思っています。だからとって1から100まで全部教えるのではなくて、10教えたら20、30と理解して欲しい。ティーチングとコーチングのバランスですよね。野球に限らずバランスが大事だと思っています。



——つくばヤングの良さはどんなところにありますか?

私自身が野球の実績は全くありませんので、自分の考えが全てだとは思っていません。ですので常に新しいことを取り入れていこうと柔軟に対応できるのがこのチームの良さかなと思っています。色々と試してみて、その中で良いものはどんどん取り入れています。例えば、怪我防止のために肘の角度と腕の振りを速さを測定する器具を使ったりですとか、色んなツールを使って色んな測定をして、選手達になるべく自分の現状を可視化できるようにしています。それを踏まえて指導者から「ここがダメだから速い球が打てないよな?」「コントロールが悪いよな」など、そういうところを分かるようにしています。

——オフ期間というのもあると思いますが、練習前のウォーミングアップやトレーニングにかなり時間をかけていましたね。

私は中学時代にピッチャーをやっていて肘を痛めてしまったんです。でも当時は「痛い」といえる空気ではなくて。結局、その影響もあって高校の途中で野球を辞めてしまったんです。そんな経験があるから子ども達に怪我をさせたくない、野球を高校、大学までやりきって欲しいという強い思いがありますから、怪我の予防という点にはかなり力を入れています。
チームとしては、勝利、優勝をもちろん目指していくのですが、でも根底にあるのは高校、大学で大きく花開くために、中学時代に土台を大きく頑丈にしてあげることが大事だと思っています。

——少年野球人口が減ってる時代ですが、どんな原因が考えられると思いますか?

昔のようにテレビ中継があったり、公園で野球をやっていた時代はルールも分かっていたと思うんですけど、今は野球に対する土台が全くないが子どもが多い。そういう子をいきなり野球チームに入れてやらせるのは難しいのかもしれませんね。野球のルールは複雑で難しい。道具も多いし値段も高い。野球の土台がゼロベースの子どもには、野球チームに入っていくにはハードルが高すぎるかもしれません。言い換えると野球が身近なものではなくなっているということだと思いますね。



——監督をやっていて嬉しいときはどんなときですか?

子ども達が、できたなかったことができるようになったときですね。あとは高校にいって、あまり浮かれないで野球をきちんとやっている姿を見たときですね。少しはこのチームでやってきたことが役になっているのかなと思いますし、高校野球を引退するときに挨拶に来てくれるのも嬉しいですね。

——今後の目標を教えてください。

時代に合わせることは必要だとは思っていますが、何をやっても「いいよ! いいよ!」というような、「履き違えた楽しさ」というのは違うかなと思っています。そこは大事にしたいと思っています。と言ってしまうととても厳しく、ピリピリしているチームと思われるかもしれないですけど、子ども達を見ても分かるように、結構楽しそうにやっているでしょ?(笑)。(取材・写真:永松欣也)
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