幼稚園児から大学生まで野球を指導して27年。『たてぶり先生」の愛称で親しまれる榊原貴之さん(座間ひまわり野球倶楽部代表)が監修した書籍、『少年野球 ワンランク上の選手になるための新常識52』(日本文芸社)が発売されました。「昔から正しいとされてきた野球界の常識」にメスを入れ、古い常識をどのようにアップデートするべきかを伝えるこの本の中から、「キャッチボールのNG」について、たてぶり先生にお話を聞きました。
——子どもの頃、キャッチボールは「相手の胸に向かって投げる」が基本だと教わりました。今もそのように指導をされている方も多いと思います。これはなぜNGなのでしょうか?
たてぶり先生:相手の胸に向かって投げると、ややクロス方向に投げることになるので、そうするとボールがいわゆる「引っかけた」軌道になってしまうんです。それだとボールが上から下に伸びないですし、引っかけて投げると肘の故障の原因にもなりかねないですしね。
——キャッチボールでそこまで考えてみたこともなかったです。
たてぶり先生:例えば右投げ同士でキャッチボールをする場合は、グラブをはめている相手の左側、顔の高さに投げるキャッチボールをオススメしています。こちらの方が、ボールを引っかけずに真っ直ぐ投げればいいですし、指にかかった伸びのあるボールが投げやすくなります。捕る側にしても体の中心でボールを捕るより、(右利きの場合)体の左で捕った方が捕りやすいです。特に小さな子どもだと自分の体の中心に向かってくるボールは距離感も掴みにくくて怖いですよね。顔の斜め前にだしたグラブにボールがくれば、軌道を斜めから見ることが出来ますから距離感も掴みやすくなります。
——なるほどなるほど。
たてぶり先生:意外に実際のプレーの中でもみんな経験しているんですよ。内野の4−6−3のダブルプレーの時のショート、ファーストの動きとかを考えると分かりやすいのですが、引っかけて体の右側に飛んでくるボールって捕りにくいですよね? だから相手の体の左側(右投げの場合)を意識して送球していると思うんです。それなのにキャッチボールは「体の真ん中、胸の前に投げないといけない」という先入観に縛られている気がします。
——これは野球を始めたばかりの子どもだけでなく、高校、大学、プロなど、全カテゴリーに共通のことですか?
たてぶり先生:全カテゴリーで共通ですし、全ポジションにも共通しています。ピッチャーであれば、いわゆる「伸びるボール」を投げるには真っ直ぐに投げてシュート成分のあるボールを投げた方が伸びますし、内野は先ほど話した通り、ファーストへの送球も綺麗なボールが行くようになります。外野のバックホームもボールがたれなくなります。
——この本の「ピッチング編」の章に、「(右投手の場合は)プレートの三塁側に立って角度のあるボールを投げよう!」というのはNGで、「プレートの一塁側に立ってストライクを取りやすくしよう」という記載もありますが、理屈は同じということでしょうか?
たてぶり先生:はい、そうなんです!全部つながっています!
——この本では他にも「キャッチボール」をテーマに色んなことが書かれていますが、「全力で同じボールを投げる」のもNG?
たてぶり先生:まずケガのことを考えると100%の出力で投げるのはリスクが高いですよね。これは子どもだけではなくて大人もそうです。あとは、100%の出力で狙ったところに投げるって、僕は無理だと思っています。プロ野球でも先発ピッチャーだったら、完投を考えるのであれば1試合で2、3球だと思うんですよね、100の力で投げるのって。
——「相手の胸をめがけて強いボールを投げろ」って指導されがちですけど、全然真逆のことをやらせているということですね。
たてぶり先生:悪気はないと思うんですけど、自分が小さいころに言われたことを「本当に正しいのかな?」って、検証せずにそのまま子ども達に教えてしまっていると思うんですよね。おかしなことってたくさんあるので、まずは「これはどうなんだろう?」って疑問を持って、自分で勉強していただくしかないですね。もしくはこの本を読んでいただくか(笑)。
——全力で同じボールを投げないかわりに、「色んな投げ方で投げよう」「色んなボールを投げよう」と書かれていますね。
たてぶり先生:野手の場合だと、ボールを捕った体勢に応じてサイドスローだったり、トスとか色んな投げ方をしますよね。全部をオーバースローで投げる方が無理な話ですから。だから色んな投げ方ができる引き出しを持っておいた方が良いですよね。あとは色んなボールを投げるというのも、緩いボールだったり、ワンバウンドだったり、試合の中で使い分けしますよね。
——確かに、セカンドフォースアウトの時など、ベースカバーに入る選手のタイミングに合わせて軽めのボールを投げたり、ボールを捕った位置によってはファーストまで強いワンバウンドのボールを投げたりしますね。
たてぶり先生:そうなんです。だから投げるにしても捕るにしても、キャッチボールで一つの型だけをずっとやるのではなく、色んな投げ方、捕り方をする。打つ方でも色んな打ち方を日頃からやっておく。そうしておけば、色んな場面に応じた引き出しが多くなりますし、多くなった方が選手としての可能性も広がりますよね。
——色んな投げ方、捕り方ができることが、この本の「コーチング」の章にもでてきますが、複数ポジションを守れることにも繋がるんですね。
たてぶり先生:そうなんです!全部繋がるんです!
*次回「バッティング編:素振りが基本はNG」に続きます。
縦振り先生/榊原貴之
座間ひまわり野球倶楽部代表。『たてぶりせんせい』って呼ばれてます。野球の技術指導が本業です。小中学生に野球教室をしたり、甲子園に出るような高校の外部コーチもやってます。自身が代表を務める『座間ひまわり野球倶楽部』は小学部と中学部があります。SNSにも野球観、人生観を毎日綴っています。https://twitter.com/taka19740921
——子どもの頃、キャッチボールは「相手の胸に向かって投げる」が基本だと教わりました。今もそのように指導をされている方も多いと思います。これはなぜNGなのでしょうか?
たてぶり先生:相手の胸に向かって投げると、ややクロス方向に投げることになるので、そうするとボールがいわゆる「引っかけた」軌道になってしまうんです。それだとボールが上から下に伸びないですし、引っかけて投げると肘の故障の原因にもなりかねないですしね。
——キャッチボールでそこまで考えてみたこともなかったです。
たてぶり先生:例えば右投げ同士でキャッチボールをする場合は、グラブをはめている相手の左側、顔の高さに投げるキャッチボールをオススメしています。こちらの方が、ボールを引っかけずに真っ直ぐ投げればいいですし、指にかかった伸びのあるボールが投げやすくなります。捕る側にしても体の中心でボールを捕るより、(右利きの場合)体の左で捕った方が捕りやすいです。特に小さな子どもだと自分の体の中心に向かってくるボールは距離感も掴みにくくて怖いですよね。顔の斜め前にだしたグラブにボールがくれば、軌道を斜めから見ることが出来ますから距離感も掴みやすくなります。
——なるほどなるほど。
たてぶり先生:意外に実際のプレーの中でもみんな経験しているんですよ。内野の4−6−3のダブルプレーの時のショート、ファーストの動きとかを考えると分かりやすいのですが、引っかけて体の右側に飛んでくるボールって捕りにくいですよね? だから相手の体の左側(右投げの場合)を意識して送球していると思うんです。それなのにキャッチボールは「体の真ん中、胸の前に投げないといけない」という先入観に縛られている気がします。
——これは野球を始めたばかりの子どもだけでなく、高校、大学、プロなど、全カテゴリーに共通のことですか?
たてぶり先生:全カテゴリーで共通ですし、全ポジションにも共通しています。ピッチャーであれば、いわゆる「伸びるボール」を投げるには真っ直ぐに投げてシュート成分のあるボールを投げた方が伸びますし、内野は先ほど話した通り、ファーストへの送球も綺麗なボールが行くようになります。外野のバックホームもボールがたれなくなります。
——この本の「ピッチング編」の章に、「(右投手の場合は)プレートの三塁側に立って角度のあるボールを投げよう!」というのはNGで、「プレートの一塁側に立ってストライクを取りやすくしよう」という記載もありますが、理屈は同じということでしょうか?
たてぶり先生:はい、そうなんです!全部つながっています!
——この本では他にも「キャッチボール」をテーマに色んなことが書かれていますが、「全力で同じボールを投げる」のもNG?
たてぶり先生:まずケガのことを考えると100%の出力で投げるのはリスクが高いですよね。これは子どもだけではなくて大人もそうです。あとは、100%の出力で狙ったところに投げるって、僕は無理だと思っています。プロ野球でも先発ピッチャーだったら、完投を考えるのであれば1試合で2、3球だと思うんですよね、100の力で投げるのって。
——「相手の胸をめがけて強いボールを投げろ」って指導されがちですけど、全然真逆のことをやらせているということですね。
たてぶり先生:悪気はないと思うんですけど、自分が小さいころに言われたことを「本当に正しいのかな?」って、検証せずにそのまま子ども達に教えてしまっていると思うんですよね。おかしなことってたくさんあるので、まずは「これはどうなんだろう?」って疑問を持って、自分で勉強していただくしかないですね。もしくはこの本を読んでいただくか(笑)。
——全力で同じボールを投げないかわりに、「色んな投げ方で投げよう」「色んなボールを投げよう」と書かれていますね。
たてぶり先生:野手の場合だと、ボールを捕った体勢に応じてサイドスローだったり、トスとか色んな投げ方をしますよね。全部をオーバースローで投げる方が無理な話ですから。だから色んな投げ方ができる引き出しを持っておいた方が良いですよね。あとは色んなボールを投げるというのも、緩いボールだったり、ワンバウンドだったり、試合の中で使い分けしますよね。
——確かに、セカンドフォースアウトの時など、ベースカバーに入る選手のタイミングに合わせて軽めのボールを投げたり、ボールを捕った位置によってはファーストまで強いワンバウンドのボールを投げたりしますね。
たてぶり先生:そうなんです。だから投げるにしても捕るにしても、キャッチボールで一つの型だけをずっとやるのではなく、色んな投げ方、捕り方をする。打つ方でも色んな打ち方を日頃からやっておく。そうしておけば、色んな場面に応じた引き出しが多くなりますし、多くなった方が選手としての可能性も広がりますよね。
——色んな投げ方、捕り方ができることが、この本の「コーチング」の章にもでてきますが、複数ポジションを守れることにも繋がるんですね。
たてぶり先生:そうなんです!全部繋がるんです!
*次回「バッティング編:素振りが基本はNG」に続きます。
縦振り先生/榊原貴之
座間ひまわり野球倶楽部代表。『たてぶりせんせい』って呼ばれてます。野球の技術指導が本業です。小中学生に野球教室をしたり、甲子園に出るような高校の外部コーチもやってます。自身が代表を務める『座間ひまわり野球倶楽部』は小学部と中学部があります。SNSにも野球観、人生観を毎日綴っています。https://twitter.com/taka19740921