ブルペンで投球練習を行うロッテ・横山陸人[撮影=岩下雄太]

 「最後の方は監督やコーチにお願いして50試合投げさせて欲しいといって、50試合いけたという感じなので、来シーズンとかは自然と50試合いけるようなチーム状況、自分の数字だったり出していければなと思います」。

 ロッテ・横山陸人はプロ6年目の今季、近年は毎年目標に掲げていた“シーズン50試合登板”を初めて達成した。

 昨季は43試合に登板し、3勝1敗18ホールド3セーブ、防御率1.71と抜群の安定感を誇り、シーズン終了後には『WBSCプレミア12』の日本代表に選出され、フル稼働の1年となったが、「しっかり休めるところは休みましたし、そのぶん、例年よりも2月に出ている出力が多分低いので、自然と上がっていくと思うんですけど、しっかりそういうところも自分で考えながら、疲労も考慮しながらやっていければいいのかなと思います」とメリハリをつけて練習した。

 石垣島春季キャンプでは「まだまだ出力だったり足りないところが多いですけど、しっかり調整できるようにやっていければいいのかなと思います」と話していたが、オープン戦に入り出力について訊くと、「だいぶ自分の中でも改善されてきて、しっかり試合でも出力を出せているのかなと思います」とのこと。

 3月9日のソフトバンク戦のオープン戦、5-5の9回一死走者なしで笹川吉康を2ストライクから空振り三振に仕留めた141キロフォークはストライクゾーンからボールゾーンに落ちる良い球だった。

 「まだ良し悪しがはっきりしているところもあるんですけど、ソフトバンク戦に関しては右バッターに対してはしっかり投げられていましたし、笹川選手に対しても投げ切るところはしっかり投げきれていたので、そういうのを続けていければもっともっと自分の感覚になっていくのかなと思います」。

 オープン戦では「建山さんから色々できたほうがいいという話をミーティングでされていたので、試合で積極的に取り入れている感じです」と、走者がいない時にクイックで投げたり、タイミングを変えて投げていた。

 「開幕からいいスタートを切れるようにしっかり調整して行きますし、まだまだ自分の中でもう少し足りないなと思う出力の部分、体の部分だったりがあると思うので、そこをもう少し突き詰めてやっていって、万全の状態でスタートして1年間完走できるようにしていけたらいいなと思います」。

 今季初登板となった3月29日のソフトバンク戦、4-4の8回二死走者なしで山川穂高に対し、2ボール2ストライクから空振り三振に仕留めた縦に落ちるスライダーが良かった。

 スライダーについて「去年から安定して投げられている球がスライダーだと思います。そこは自信を持って今のところ投げられていると思うので、良いのかなと思います」と話す。

 フォークも「投げていても感じは悪くないですし、初登板の時に近藤さんにセンター前に打たれてしまったんですけど、そのフォークも全然自分の中では悪いフォークではなく、さすが近藤さんだなという感じの打たれ方だった」と好感触を掴んでおり、「これからもっともっと試合で使っていて、よくしていったり、バッターに意識させていければいいのかなと思います」とのことだ。

 投球の軸になるストレートは「球質的には自分なりにしっかり投げられているんですけど、まだまだコントロールというところが西武戦ではできていなかったので、そこはもう一度見つめ直して、意識するところは意識していければいいかなと思います」と明かした。

 7-1の8回からマウンドに上がり、1回を無失点に抑えた4月8日の西武戦は、14球中12球がストレートのパワーピッチング。ストレート主体だったのは、点差が開いていたことも関係しているのだろうかーー。

 「点差が開いていたというのもありますし、ある程度点差が開いて勝っている状況で、ストレートを押していって、本当はストライク先行でいきたかったんですけど、ボールが増えてしまったので、そこは反省かなという感じです」。

 開幕直後は同点、勝ち試合、ビハインドゲームなど様々な場面で腕を振っていた横山だが、4月29日のオリックス戦、2-2の9回に登板し麦谷祐介に適時打を浴びサヨナラ負けを喫し、翌30日に一軍登録を抹消となった。

 ファーム降格後、2試合に先発登板し、5月22日のオリックス戦で一軍先発。ストレート主体の投球の打たせて取る投球で、「今自分のできるピッチングはできたのかなと思います。けどまだまだできなかったことや課題もたくさん見つけたので、まずは0で抑えることができて良かったなと思います」と、5回2被安打無失点で先発初勝利を手にした。

 翌日に再び一軍登録抹消となり、ファームで先発の経験を積んだ。5月29日の巨人二軍戦では、6回・93球を投げ3失点にまとめ、6月5日のオイシックス(3回・55球・4失点)、6月10日のDeNA二軍戦(2回・36球・0失点)で先発した。

 「二軍にいた時に、大家さんにチームで1、2番目に投げるテンポが遅いと言われたので、そこはしっかり改善しないといけないなと思っていたので、意識して早めに投げるようにしていました」と、先発に転向後、投球テンポも上げた。

 6月13日に一軍に再昇格すると、再びリリーフに配置転換。同日のヤクルト戦、「特に意識することなく、普通に先発をやっていたので、先発の時に投げている時の感じで投げていました」と、4-4の6回に登板すると3回を無失点に抑える好リリーフ。

 先発を経て、リリーフで活きていることについて横山は「リリーフだと1イニングなので、強い球を放ろうと先行しちゃって、力んじゃったことが多かった。しっかり自分のコントロールできる範囲で自分の球が投げられているところがあったので、そういうところは(先発を)やって良かったのかなと思います」と話す。

 リリーフに戻ってからも力感のないフォームで150キロを超えるストレートでねじ伏せた。

 「力んでしまうとコントロールのばらつきが出てしまうので、そこをしっかりコントロールしながら、出せる範囲で球速を出していくというところで今は突き詰めてやっています。もっとコントロール、力感なく投げて球速がしっかり出るようにやっていければいいのかなと思います」。

 力感のないフォームで投げる中で、打たれたら怖いなと思ったりすることはないのだろうかーー。

 「もちろんめちゃめちゃありますね。力ない球がいくんじゃないかという思いもあるんですけど、そういうところはしっかり長打がないコース、高さを間違えないように投げている感じです」。

 また、昇格してしばらくは、1イニングだけでなく、6月22日のDeNA戦、7月5日のオリックス戦、7月27日の日本ハム戦など複数のイニングを投げることも多かった。

 「だいたい試合展開でもう1イニング行きそうだなというのがわかるので、あらかじめ心の準備をしていますし、特に回またぎをするかと言って自分の投球を変えることもないです。球が2イニング目に悪くなるということもないので、そこは全然意識していないというか、なんとも思わず投げています」。

 リリーフ陣の台所事情が苦しい中、時にイニングまたぎもしながら、ホールド数を積み重ね、8月27日のオリックス戦でシーズン自己最多となる19個目のホールドを挙げた。8月30日のソフトバンク戦以降は、「9回投げる以上は、もちろん無失点できるのもそうですし、今年の最初の方にも言いましたが、打者圧倒できるような投球ができれば、そういうポジションを任せていただけるのではないかなと思います」と、勝ち試合の9回を任されるようになり、セーブを積み重ねた。

 8月31日のソフトバンク戦でシーズン自己最多の4セーブ、9月20日の日本ハム戦では敗戦投手になったが、シーズン自己最多の44登板達成すると、シーズン最終戦となった10月5日のソフトバンク戦で目標に掲げた50試合登板を達成した。

 今季は登板数(50)、ホールド(20)、セーブ(12)、奪三振(47)と様々な部門でキャリアハイの成績を残したが、どの数字が一番嬉しかっただろうかーー。

 「う〜ん、50試合というところですかね。ずっと目標にしていましたし、とにかく一軍の試合で投げることがチームに貢献できていることだと思うので、そういうところに関しては一番自分の中で良かった数字だと思います」。

 今季の横山は、課題にしていた“右打者”をしっかりと封じた。一軍定着した23年以降、右打者の被打率は23年が.324(74-24)、24年が.229(70-16)と2割を超えていたが、今季右打者の被打率.175(103-18)、奪三振32と抑え込んだ。右打者を打ち取っている要因、三振が多い要因というのも、シンカーを投げ切れるようになったことが大きい。

 「色々毎年毎年、いろんな握り、感覚を試している中で、今回はこれだというのを見つけられたので、それは継続してやっていくのと、感覚は毎日変わっていくものなので、毎日違う感覚になったとしても、同じ変化の仕方、キレで投げられるように、もっともっと突き詰めていければいいかなと思います」。

 シーズン終了後には、「初めて50試合に投げられたので、疲労感というのはまだわからないですし、とにかく自分の体のコンディションというところと、今シーズン8割くらい投げていたところがあって、それで良くなったんですけど、どうしても競った場面で10割でコントロールできる球をなげられなきゃいけない場面も出てくると思う。思いっきり投げた中でのコントロールを磨きをかけて行けたらいいかなと思います」と、秋季練習、秋季キャンプにも参加。

 ここ数年の活躍が認められ、背番号も60から15に変更となる。「美馬さんが着けていた番号なので、重い番号だなと思うんですけど、しっかりその背番号に見合った活躍を来シーズンやっていきたい」と背筋を伸ばす。

 「数字というよりかはタイトルが欲しいので、セーブ王を狙ってやっていきたいと思います」。来季に向け、守護神を勝ち取ることを宣言した。チームが若返りが進む中で、来年で7年目・25歳と、若手から中堅に差し掛かりつつある。

 「自分が引っ張ろうというのはもちろんありますけど、年齢的にも下の方ですので、先輩たちに多少迷惑というか、負担をかける場面もあるかもしれないですが、自分の中でしっかり自分を持って、自分の教えられる範囲では後輩たちと色々話をしながら、先輩としての自覚を持って、行動だったりやっていければいいかなと思います」。

 来季はシーズン通して一軍で投げ、2年連続50試合登板、目標のセーブ王のタイトルを獲得してほしい。

取材・文=岩下雄太

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