ニュース 2017.01.06. 17:30

意外と奥が深い「全球団勝利」

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オリックス入団テスト中の成瀬善久[写真はヤクルト時代]

「全球団勝利」という記録


 現在、日本のプロ野球には12球団が存在する。その12球団すべてから勝利を挙げた投手――すなわち「全球団勝利」を成し遂げた投手というのは、過去に17人しかいない。

 球団の消滅に伴う合併や新球団の誕生、そして交流戦の導入などもあって、その難易度や内容も少しずつ変わってきているものの、80年の歴史で17人しか達成していない貴重な記録。2014年に林昌範(DeNA)が達成したのを最後に、この2年間は達成者が現れなかった。


 この記録を達成するためには、少なくとも2球団以上に在籍することが絶対条件。そのうえで主戦投手として活躍することが求められる。

 交流戦がなかった頃はリーグを跨ぐ必要があったため、最低でも4球団以上に在籍する必要があったのだが、今ではシーズン中にリーグが異なる相手と対戦する機会があるため、ややハードルは低くなった。今季で言えばFAで移籍した岸孝之(西武→楽天)、山口俊(DeNA→巨人)などは、新たにこの記録への挑戦権を掴んだことになる。

 ちなみに、岸は古巣・西武と広島、山口は古巣・DeNAのほかに日本ハムと西武から勝ち星を挙げると「全球団勝利」の達成となる。なお、いま最もこの記録に近いところにいるのはヤクルト・成瀬善久で、残すは古巣・ロッテの1球団のみとなっている。


交流戦導入前はわずか3人...


 達成者は17人と紹介しているが、これを交流戦がスタートした2005年以前に限ると、なんと3人にまで減る。いかに貴重な記録だったかがお分かりいただけるだろう。3名の達成者は以下の通りだ。


【交流戦導入前の全球団勝利達成】

▼ 野村 収/通算121勝
所属:大洋~ロッテ~日本ハム~大洋~阪神(1983年達成)

▼ 古賀正明/通算38勝
所属:太平洋クラブ・クラウン~ロッテ~巨人~大洋(1983年達成)

▼ 武田一浩/通算89勝
所属:日本ハム~ダイエー~中日~巨人(2002年達成)


 上でも触れた通り、交流戦導入前の難しさは各リーグで2球団以上に在籍しなければできないという点だ。野村は18年、武田は15年の
キャリアでの達成となったが、古賀はなんと9年間で達成。通算勝利数もわずか38と、とてつもない効率の良さで全球団を制覇した。


「13球団制覇」


 また、「全球団勝利」の達成者の中には、近鉄・楽天を合わせた「13球団勝利」という記録も含まれる。達成者は以下の通りだ。


【13球団勝利】

▼ 工藤公康/通算224勝
所属:西武~ダイエー~巨人~横浜(2007年達成)~西武

▼ 杉内俊哉/通算142勝
所属:ダイエー・ソフトバンク~巨人(2012年達成)

▼ 寺原隼人/通算70勝
所属:ダイエー・ソフトバンク~横浜~オリックス~ソフトバンク(2014年達成)


 奇しくも全員がダイエー・ソフトバンクと縁がある選手となっている。なお、このあと帆足和幸(当時ソフトバンク)がこの記録に挑むも、古巣・西武から勝利を挙げることができず。あと一歩届かずユニフォームを脱いだ。


 

その他の記録


【単独リーグ在籍の全球団勝利】

▼ 涌井秀章/通算118勝
所属:西武~ロッテ(2014年達成)

▼ 大竹 寛/通算92勝
所属:広島~巨人(2014年達成)


【外国人選手による全球団勝利】

▼ セス・グライシンガー/通算64勝
所属:ヤクルト~巨人~ロッテ(2012年達成)

▼ ジェイソン・スタンリッジ/通算71勝
所属:ソフトバンク~阪神~ソフトバンク~ロッテ(2014年達成)


「全球団勝利」達成者


1.野村 収(1983年)
2.古賀正明(1983年)
3.武田一浩(2002年)
4.門倉 健(2005年)
5.吉井理人(2006年)
6.工藤公康(2007年)
7.久保康友(2009年)
8.藤井秀悟(2010年)
9.石井一久(2010年)
10.杉内俊哉(2012年)
11.セス・グライシンガー(2012年)
12.木佐貫洋(2013年)
13.涌井秀章(2014年)
14.寺原隼人(2014年)
15.大竹 寛(2014年)
16.ジェイソン・スタンリッジ(2014年)
17.林 昌範(2014年)
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