露呈した不安
キャンプも終わりに差し掛かった2月23日。宮崎・アイビースタジアムで行われたソフトバンクの紅白戦で、ドラ1右腕・田中正義が苦しい投球を見せた。
2回を投げて1失点も、四球を4つ献上。いずれもイニングの先頭打者を歩かせるなど、苦しい投球が目についた。
思えば、キャンプ中盤頃から不安を口にしていた右腕。その原因は“変化球を投げる際に腕が緩む癖”にあるという。本人も「投げれば投げるほど、足りないものが分かってきた」と述べているように、ほんのわずかなフォームの違いでも、プロの打者はストレートと変化球を見極める。そんな恐ろしさをひしひしと感じているところだろう。
しかし、ソフトバンクといえば他球団が羨むような戦力を持っており、先発投手陣も豊富。ここで焦る必要は全くない。ある程度時間はかけても、自信を持って投げられるようになるまで試行錯誤を繰り返せば良いのだ。
田中にヒントを与えるのは...
振り返ってみると、田中の先輩である東浜巨も同様の癖で悩んでいた。ドラフト1位入団ながらなかなか結果を残せない日々が続いたが、彼は時間をかけて自らと向き合い、2016年には9勝を挙げる活躍を見せている。
4年目にしてようやくだが、投球を模索する間の経験は糧となる。技術面はもちろんのこと、苦しい時を耐え抜いたという経験は、きっと今の田中を助けることだろう。
また、若い投手を支えるのはベテラン捕手の役割でもある。ソフトバンクには鶴岡慎也と高谷裕亮という二人のベテラン格がいるが、田中にはぜひとも鶴岡と組んでもらいたい。
というのも、鶴岡は昨季東浜が先発した20試合のうち、10試合でスタメンマスクを被っている。悩める若手投手の力を、ベテランらしく引き出したという部分も大いにあるだろう。
さらに千賀滉大とも16試合でバッテリーを組んでおり、自身初の2ケタ・12勝を挙げた活躍をアシストした。この千賀もストレートとフォークを武器とするという点では田中と似た部分があるだけに、持ち味を引き出すリードに期待が高まる。
昨秋ドラフトの目玉だったということもあり、周囲からの期待はとてつもなく大きい。それだけに、本人にとってはもどかしい気持ちもあるだろうが、開幕までにはまだ時間がある。
もっと言えば数ヶ月後、いや、1年後や2年後でもいい。ゆっくりと時間をかけて自分と見つめ合い、自信を取り戻した田中正義の姿を見せてもらいたい。