◆ 直近7試合全てでクオリティ・スタートを達成
4月9日、昨季の覇者・広島が6-2でヤクルトを下して1分けを挟んで7連勝。阪神に敗れた巨人をかわして単独首位に浮上した(4月9日終了時点)。この日のヒーローのひとりは先発・九里亜蓮。7回二死から2点を失ったが、3回から6回は無安打に抑えるなど終始安定した投球を続け、終盤の逆転劇を呼び込んだ。
昨季限りで引退した黒田博樹の穴をいかに埋めるか――。広島連覇の鍵として多くの評論家が口をそろえる。前田健太がメジャーに移籍した昨季も同様の課題が掲げられたが、意味合いは全く異なるという声も聞かれる。昨季、黒田の傘の下にいた若手たちは、前田の移籍を自身にとってのチャンスだと感じた。対して黒田の引退は大黒柱そのものを失うこと。その穴を埋めるべき後輩たちが感じる重圧は、前田のときの比ではないというのだ。
ところが、そんな外野の声など当の若き投手たちにとっては意味を持たないようだ。開幕カードの対阪神第2戦までは、寒い雨が降るなかというコンディションの悪さや球審の厳しいジャッジなどもあり大荒れのゲームとなったが、対阪神第3戦以降の7試合は先発投手がきっちりとゲームを作っている。以下は直近7試合における広島先発陣の投球成績だ。
【直近7試合における広島先発陣の成績】
4月2日 阪神 九里亜蓮 6回 自責1
4月4日 中日 野村祐輔 7回 自責1
4月5日 中日 床田寛樹 6回1/3 自責3
4月6日 中日 大瀬良大地 6回 自責0
4月7日 ヤクルト 加藤拓也 8回1/3 自責1
4月8日 ヤクルト 岡田明丈 8回1/3 自責1
4月9日 ヤクルト 九里亜蓮 7回 自責2
◆ 黒田の穴を埋めるという課題は杞憂に終わるか
直近7試合では、6回を自責点3以内に抑えるクオリティ・スタートを全7試合で達成。うち4試合は7回を自責点2以内に抑えるハイクオリティ・スタートも達成しており、先発陣の安定感がはっきりと見て取れる。
また、一見して分かるのが、先発投手の若さである。床田寛樹と加藤拓也は22歳のルーキー。岡田明丈が2年目の23歳で、九里と大瀬良大地が4年目の25歳。最年長が27歳の野村祐輔と、平均年齢はなんと24歳だ。黒田が抜けた穴を埋め、連覇を望むファンの期待という重圧を受けていることなど感じさせないのはこの若さゆえかもしれない。
もちろん、このままシーズンを通してローテーションを回すことは簡単ではない。経験の浅さによる不調や疲労、ケガなどにより離脱してしまう可能性もある。ただ、広島には彼らに加えて、咽頭炎で7日の先発を回避したジョンソン、開幕直前にインフルエンザに感染して調整中のヘーゲンズ、キャンプ中の背中の張りで出遅れた福井優也らも控えている。
黒田の穴を埋めなければならないという課題など杞憂に終わるのではないか、そんな気にもさせられる広島の連勝劇であった。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)