◆ 主将がメモリアル100号アーチ
「特に気にしていない。嬉しいのは嬉しいですけど、もっと上を目指しているので」。メモリアルアーチにも、レオの主将は冷静だった。
20日のソフトバンク戦、西武・浅村栄斗がプロ通算100号を放った。2回、二死一三塁からソフトバンクの先発・中田の141キロのストレートをフルスイング。打球は西武ファンが待つ、左翼席へ吸い込まれた。
打った瞬間、本塁打とわかる会心の当たり。浅村は「キセキですよ」と頭を掻いた。
前夜の悔しさも力になった。19日のソフトバンク戦、エース菊池雄星が8回2失点と試合を作るも、援護できず。4打席中3打席で得点圏にランナーを置きながら無安打に終わった主将は「きのうは自分がチャンスで打てなかったので、きょうは何とか打ちたいと思っていた」と唇をかみしめた。
◆ チームの勝利のため、チームバッティング意識
チームの勝利のため。胸にCマークをつけた26歳は変わった。持ち味のフルスイングは「一番大事」と話しつつも、今季はチームバッティングを心掛けた。「今年は源田が前でつないでくれて、得点圏で回ってくることが多いので、ヒットでランナーを返すことを考えている。チームが勝てれば」。
20日時点でリーグトップの39打点。まだ試合数はシーズンの3分の1も消化していないが、打点は間もなく昨季82の半数に達しようとしている。これこそチームバッティングだ。そして浅村は続ける。「(ヒットで走者を返すというバッティングが)自分の引き出しになれば、レベルも上がる」。フルスイングしないことも浅村にしたら成長の一環なのだ。
そんな主将に指揮官も信頼を置く。「浅村はチームバッティングに徹してくれている。無口な男だが、背中で引っぱってくれている。頼もしい」と目を細めた。
しかし、この日は違った。カウントはノースリー。本来なら打ちにいく球ではないが、浅村は獲物を逃がさなかった。
甘く入った直球をこれでもかというほどのフルスイング。「ノースリーだったので、強く振ろうと。中途半端にいくカウントではない。真っ直ぐを狙っていたわけじゃく、真ん中にきたら打とうと思っていた」と納得の表情で頷いた。
それでもすぐに表情を引き締める。「これでオーバースイングにならないように気を付けます。今まで通りに」と。
◆ 頼もしい背番号「3」
開幕から間もなく2カ月が経つ。そろそろ疲れが出てくるころだが、「疲れ?ないですよ」と一蹴。「チームが調子良いですし、雰囲気も良い。勝っていれば疲れなんてないですよ」と本当に頼もしい。
日に日に大きくなっていく主将の背中。伝統の背番号「3」を背負う男の覚悟がひしひしと伝わってきた。