◆ ナゴヤドーム名物になるか
「35億」――!
長いプロ野球の歴史でも、こんな声援が送られる選手はこの男だけだろう。中日のルーキー・京田陽太だ。
ホームゲームで京田が打席に入る際に流れる登場曲が、オースティン・マホーンの『Dirty Work』。この曲自体は2015年に発売された楽曲であるが、日本ではお笑い芸人・ブルゾンちえみのネタに使われる楽曲として一気に知れ渡った。
「35億」とは、そのネタの中で使われるフレーズ。当初はちらほらだったこのコールも、今ではライトスタンドから球場中に届くほどに浸透して来ている。
◆ 逆襲のキーマン
青森山田高から日大を経て、昨年のドラフト2位で中日に入団した京田。巨人の1位・吉川尚輝と並ぶ大学No.1内野手と評され、特にその守備と走塁は即戦力という見立てが多かった。
オープン戦では打率.260を記録し、自慢の快足を活かして二塁打は3本、三塁打も2本をマーク。2盗塁で9得点という部分も評価され、今年のルーキーでは唯一となる開幕一軍の切符を手中に収める。
さらに巨人との開幕戦に「7番・遊撃」で出場すると、球団では1989年の大豊泰昭以来となる新人の開幕スタメン安打をマーク。課題とされたバットでもいきなり結果を残してみせた。
以降もコンスタントに成績を残し、ここまでは無安打の最長も3試合まで。現在は5月10日のDeNA戦から10試合連続安打を継続しており、5月は打率.359で1本塁打、4打点とチームを牽引している。
苦しい戦いがつづいたなか、ここに来てチームは4連勝。特にビシエドとゲレーロの助っ人コンビが調子を上げているだけに、いかにして2人の前にチャンスを作るのか。すなわち上位で京田が好調を維持していくことが、ここから逆襲をめざすうえでの鍵となる。
◆ 生涯年俸「35億」
あるプロ野球中継で「35億」の声援が話題となった際、解説を担当していたプロ野球OBの金村義明氏は「35億稼ぐようなプレーヤーになってくれたらいいですよね」という話をした。
ちなみに、メジャーではクレイトン・カーショー(ドジャース)の今季の推定年俸が3300万ドル(*)となっており、日本円にすると約36億6000万円ほど(*USA TODAYより)。トップ中のトップとなれば1年で稼ぐことも可能だが、日本でこの金額というと軽く1球団の総年俸を上回ってしまうような額で、現実味はない。
では、プロ野球選手としてのキャリアの中で稼ぐ“生涯年俸”だとどうなるか。そこでいいお手本となるのが、同じ左の内野手・鳥谷敬(阪神)だ。
同じく大卒でプロ入りし、今年で14年目を迎える虎の鉄人の昨季までの推定年俸を足し算してみると、24億6400万円という数字が出てくる(金額は推定)。
鳥谷は2014年のオフに推定年俸4億円の5年契約を結んでいるため、そのまま4億円ずつが積み上がるとなると来季終了後には30億円を突破し、5年契約が終わる2019年・鳥谷が38歳になる年に36億円に到達する。長く安定した活躍が求められるが、決して不可能な数字ではない。
いつの日か球団の顔、リーグを代表する遊撃手となって、「35億」超えへ…。中日ファンは、そんな日が来るのを楽しみに“待つの”だ。