◆ プロ野球記録を更新
楽天の則本昂大が偉業を成し遂げた。
6月1日の巨人戦で、自身7試合連続の2ケタ奪三振を記録。野茂英雄超えのプロ野球新記録を樹立したかと思えば、8日のDeNA戦でも当然のように9回完投で12個の三振を奪い、記録を8試合連続に更新。単純に比較することはできないが、ペドロ・マルティネスとクリス・セールが記録したメジャー記録にも数字上では肩を並べた。
プロ野球新記録となれば、当然シーズン奪三振記録への挑戦というところにも目が向いてくるところではあるのだが、残念ながらそれはあまり現実的ではない。
【シーズン奪三振ランキング】
1位 401個 江夏 豊(阪神/1968)
2位 353個 稲尾和久(西鉄/1961)
3位 350個 金田正一(国鉄/1955)
4位 340個 江夏 豊(阪神/1970)
5位 336個 杉浦 忠(南海/1959)
▼ 以下、300奪三振以上
334個 稲尾和久(西鉄/1958)
327個 梶本隆夫(阪急/1956)
321個 稲尾和久(西鉄/1959)
317個 杉浦 忠(南海/1960)
316個 金田正一(国鉄/1956)
313個 金田正一(国鉄/1959)
312個 秋山 登(大洋/1957)
311個 金田正一(国鉄/1958)
310個 権藤 博(中日/1961)
306個 金田正一(国鉄/1957)
305個 鈴木啓示(近鉄/1968)
302個 西村一孔(阪神/1955)
301個 梶本隆夫(阪急/1957)
奪三振のシーズン記録1位はと言うと、江夏豊氏が1968年に記録した「401個」というもの。中6日のローテーション制が主流となっている現代野球においては不可能な数字と言っても過言ではないだろう。
かつては300イニング以上投げるのが当たり前だった時代で、シーズン300奪三振以上は過去18例もある。いずれも40~50年前に記録されたものであり、ここに立ち向かっていくのは現実的ではない。
◆ 250奪三振以上は2人だけ
では、“平成以降”に限定してシーズン奪三振の記録を見てみるとどうなるか。ランキングは以下の通り。
【平成限定・シーズン奪三振ランキング】
1位 287個 野茂英雄(近鉄/1990)
1位 287個 野茂英雄(近鉄/1991)
3位 276個 野茂英雄(近鉄/1993)
3位 276個 ダルビッシュ有(日本ハム/2011)
5位 247個 今中慎二(中日/1993)
6位 241個 石井一久(ヤクルト/1998)
6位 241個 田中将大(楽天/2011)
8位 239個 伊良部秀輝(ロッテ/1994)
8位 239個 伊良部秀輝(ロッテ/1995)
10位 230個 川口和久(広島/1991)
トップは野茂英雄が1990年、91年と続けて記録した「287個」。それに次ぐ記録も自身で打ち立てており、そこに肩を並べたのが2011年のダルビッシュ有であった。平成以降でシーズン250奪三振以上を記録したのは、この2人だけである。
◆ 驚異の奪三振率
2011年のダルビッシュは232回を投げて276奪三振を記録。奪三振率(*)は10.71だった。今季の則本はここまで75回を投げて102奪三振をマークしており、奪三振率は12.24という驚異の数字。奪三振率のシーズン記録も狙える好成績を叩き出している。(*1試合=9イニング完投したと仮定した場合の平均奪三振数)
【シーズン奪三振率ランキング】※規定投球回以上
1位 11.05 石井一久(ヤクルト/1998)
2位 10.99 野茂英雄(近鉄/1990)
3位 10.98 大谷翔平(日本ハム/2015)
4位 10.97 江夏 豊(阪神/1968)
5位 10.96 石井一久(ヤクルト/1999)
しかし、もし仮に則本がこのままのペースを保ちながら200イニングを投げたとしても、単純計算でシーズン272奪三振止まり。平成3人目の250奪三振超えは可能だが、野茂やダルビッシュの牙城を崩すためには、とにかくイニング数を増やしていくしかないのだ。
プロ野球の新たな歴史を作った右腕が挑む、“平成の奪三振王”への道…。破竹の勢いで三振を奪い続ける則本は、シーズン終了後に一体どれだけの三振を積み上げているのか。どうか故障することなく、このまま走り抜けてもらいたい。