◆ 犠打の極意
ロッテの愛斗は今季3度のバント機会、全て成功させているが、どの場面も“相手チームが100%バント”と分かった中で決めている。
今季初バントを決めたのは、6月5日の巨人戦、1-1の10回無死二塁の場面。大勢が投じた外角の128キロスライダーを一塁方向にバントすると、巨人の一塁手・増田陸が三塁へ送球するもこれがセーフとなり、記録は一犠野になった。その後、満塁となり髙部瑛斗の死球でチームはサヨナラ勝ち。
6月11日の広島戦は、2-2の9回無死一塁の場面に安田尚憲の代打で登場し、森浦大輔が投じた初球の145キロストレートをピッチャー前に転がして、一塁走者・石垣雅海を二塁へ進めた。
相手チームも代打バントと分かりきっている中で、初球できっちりと送りバントを決めたのはさすが。
「自分的には集中しすぎない、絶対決めると思わないというか、(絶対に決めると)思えば思うほど、固まっちゃうので。絶対決めるとか思わない。できるだけ力を抜いて、バットは前に置いとくくらい。ここから角度を変えない。来たらバットに当てるくらいのイメージですかね」と、ピンチバンターでの極意を語った。
『8番・ライト』でスタメン出場した15日のヤクルト戦、4-4の9回無死一塁で迎えた第4打席、清水昇が投じた初球、体に近いインコースのストレートを捕犠打。一塁走者・髙部は三塁ベースがガラ空きになっているのを見て三塁へ。続く代打・角中勝也がレフトへ犠牲フライを放ち、サヨナラ勝ち。愛斗の犠打、髙部の好走塁が角中のサヨナラ犠飛に繋げた。
ホーム・ZOZOマリンスタジアムでの試合前練習では、バントマシンを相手に黙々と犠打練習する姿がある。試合に向けて、やるべきことをきっちりと行っている。
◆ 長打にこだわる
愛斗は、石垣島春季キャンプの取材で、「ライナーというよりは角度をつけて長打を打ちたいというか、去年までは低い打球という感じだったんですけど、今年は長打を打っていきたい感じですね」と“長打”に強くこだわって取り組んできた。
石垣島春季キャンプでも、「今年は長打を打つために、形を作るのが大事なんですけど、最後はストレートを打つんですけど、ロングティーやったり、今日(2月2日)ロングティーをやりましたけど、スローボールを打つとか、泳がされる、詰まるときに、完璧なタイミングで完璧なポイントで打てる打席は少ないので、ちょっと泳がされても飛ばす、ちょっと刺されても飛ばす打ち方を浅村さんがやっていた。泳いだら、泳ぎっぱなしではなくて、泳いでも飛ばす、詰まっても飛ばす」と、連日全体練習後に最後まで居残りバットを振った。
“長打”にこだわってきた中で、送りバントを求められる場面でしっかりと決めている。
「スタメンで出ることが一番大事だと思っているので、そこは長打、自分の良さを消さない。試合に出ていないからスタイルを変えるとかは、僕がやってきたことがゼロになっちゃうので、それは貫きたいというところですね」。長打にこだわる姿勢は変わらず持っている。
試合前練習の打撃練習では、「自分の癖をできるだけでないように打つために、ノーステップでやっています」とノーステップ打法で打つなど工夫を凝らす。
ここまで送りバントを3つ決めているが、スコアボードに“H”ランプを灯せていない。「試合に出続けて、普通にやれば打てると思っているので、そのくらいの感じですね」と自信を見せる。
◆ ベンチではどう過ごしてる
愛斗は15日のヤクルト戦はスタメン出場したが、5月27日に一軍登録されて以降、スタメン出場は2試合でベンチスタートの日が多い。
味方が守備の際、ベンチでは「“このバッターはこういうテーマを打ってきているんじゃないか”、“今日、明日はまた変わるかもしれない”とか、状況に応じたバッティングができるのかなとか、できない人もいるし、そういうのを考えながら主にピッチャーとバッターを見ながら試合中はやっている感じです」と投手と打者の力量を分析する。
一方、味方が攻撃の際は「相手の守備とかを見て、こういうふうに打っていったほうがヒットになるなとか、逆に言えばなんでここに守っているんだろうみたいな。絶対こっちじゃないだろうみたいなのを見ていますね。自分がその場に行った時にそういう逆のことだけはしないように、相手のミスから学べることもあるので、そういうところも見ていますね」と、相手チームの守備を入念にチェックする。
途中出場で結果を残すことが難しい中で、意識していることについて「代打バントとか、代走とか、守備固め、守備はとにかく攻める、攻めることを忘れずに。たまに出るからと言って、おきに行くというか、大事にいきすぎると自分の長所は出なくなっていくので、そこは守備の時は攻める。走塁も攻めるんですけど、バントの時は落ち着いてくらいの気持ち」と教えてくれた。
高い守備力に加え、相手の隙を突いた走塁も上手で、バントもしっかりと1球で決める。ここからチームに欠かせないピースになっていく。
取材・文=岩下雄太