◆ 白球つれづれ2026・第24回
セ・パ交流戦は大詰めを迎え、王者の行方に注目が集まっている。
14日に、ソフトバンクに代わって首位に立ったのは西武だ。
巨人との激闘。石井一成選手の一発で挙げた1点を守り切り、13勝3敗1分けと白星を積み上げた。
交流戦の残りは雨天中止分の3試合。16日の阪神-西武戦(甲子園)に、引き分けか、勝てば西武が交流戦初の優勝。もし負けた場合はソフトバンクや、日本ハムにもチャンスは巡って来るが、レオ党にとってはここまで来れば悲願を達成したいところだ。
ペナントレース全体でも、両リーグを通じて40勝一番乗りで首位を快走する西武だが、同時に行われているオールスターゲーム(7月28、29日東京ドーム他)のファン投票では、珍現象が起きている。
15日発表の中間投票でも、西武勢の1位はいない。先発部門の平良海馬、一塁部門のタイラー・ネビン選手らが2位に付けているものの、首位を快走するチームからトップに名前が出て来ないのは珍しい。
考えられる要因は、個人で突出した成績を収めている野手がいないこと。まだ球界全体では認知度が低い選手が多いこと。逆な見方をすれば、それだけ「日替わりヒーロー」が誕生していると言うことだろう。
そんな地味なレオ勢? にあって、近頃最も脚光を浴びているのが滝澤夏央選手だ。おそらく今年の球宴にはファン投票でなくても、監督推薦で出場間違いなし。打ってはつなぎの二番として、守っては、あの守備天才・源田壮亮選手を押しのけて二遊間をそつなくこなす、いぶし銀のようなプレーヤーである。
21年の育成2位で新潟・関根学園から入団。身長164センチは昨年までは球界最小兵。今年、広島に入団した勝田成選手が1センチ低いため「最小兵」のレッテルは失ったが、スポーツ全般が大型化に進む時代に、この体で活躍は素晴らしい。
15日現在、打率.286は、パリーグの打撃成績8位。チームではトップに就けている。中でも記憶に新しいのは、今月12日の巨人戦で4打数3安打2打点の活躍。この時点で32試合連続出塁を記録。今では同じ育成出身の長谷川信哉選手との二、三番コンビがチームの欠かせないピースとなっている。
野球不毛の地とも言われる新潟で甲子園とは無縁の小粒な選手。しかも三年の夏は背番号1をつけてマウンドに立っていたと言うから、各球団のスカウトの目には止まりにくい。プロ入りの調査書を求めてきたのは、西武とソフトバンク2球団だけだったと言う。中でも西武は早い時期から、その守備の技術と堅実さに目をつけ、育成で獲得にこぎ着けた。
小柄な体に、プロのパワーは大きな壁となって立ちはだかったが、人一倍の練習量とバットを振り込むことで徐々に力をつけ、昨年は125試合に出場してミニブレーク。中でも華麗な守備はシーズンオフにテレビ局が現役選手100人に聞く「守備名人」のアンケートで堂々1位を獲得。そして今年の本格開花につながった。
過去にさかのぼって、小さな大選手をひも解けば、古くは吉田義男(阪神)大石大二郎(近鉄)や青木宣親(ヤクルト)各氏らの名前が浮かぶ。だが、投手の球速は150キロ台まで上がり、試合数も昔より多くなっている。その分、小柄な選手への負担は大きく、克服するのも並大抵ではない。
今では「チームに欠かせない存在」と西口文也監督も全幅の信頼を寄せる。
打って良し、守って良し、に加えて、走っても良し、の三拍子を兼ね備えた22歳の若者がどこまで突っ走れるか?そこに西武夏の陣以降の成否もかかっている。
世界はサッカーW杯一色に染まる。日本の初戦、オランダも190センチ越えの屈強な選手を揃えてパワー勝負を仕掛けてきたが、日本代表もひるむことなく引き分けに持ち込んだ。対格差を克服して初めて日本スポーツの活路が見いだせる。
164センチ、65キロも上等。滝澤夏央の“夏祭り”は、これからが勝負所を迎える。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)