「23対9」―――。まるでフットボールのスコアを見ているかのような数字がメジャーリーグで刻まれた。
日本時間15日、アスレチックスとロッキーズの3連戦最終戦。ロッキーズの先発マウンドに上がった菅野智之は、初回にいきなり4点を失うと、その後も失点を重ねた。5回8失点と苦しい内容だったが、打線が23得点を叩き出したことで、菅野は今季7勝目を手にした。
両チーム合わせて39安打、32得点を記録する壮絶な打撃戦となった。だが、この試合で注目を集めたのは勝敗よりも開催地だった。
試合が行われたラスベガスは「眠らない街」として知られる全米でも屈指の観光地。ロッキーズが本拠地を置くデンバーの1600mほどではないが、標高は600mを超える。乾燥した気候と比較的高い標高も相まって、打球が飛びやすい環境として知られている。
その証拠に、アスレチックスはラスベガスで戦った直近6試合で総得点102点、35本塁打を記録。1試合平均に換算すると17得点、5.8本塁打という異常なペースだ。
特にラスベガスシリーズを締めくくった試合がめったに見ないハイスコアになったことで、ファンから「第二のクアーズではないか」との声も出た。アスレチックスは2028年からラスベガスを本拠地とする予定だが、ロッキーズの本拠地クアーズフィールドに匹敵する打者天国となるのだろうか。
今回、“ラスベガスシリーズ”の6試合が開催されたラスベガス・ボールパークは、アスレチックス傘下3Aアビエイターズの本拠地で、同球場は以前から打者有利の環境として知られている。しかし、2028年にアスレチックスがプレーする球場は、同パークから数キロ離れたところに建設中で、新球場は完全密閉型のドーム球場になる見通しだ。
クアーズフィールドほど極端ではないにせよ、海抜の低い都市と比べれば空気密度は低くなる。ドーム化によって気温や湿度は管理できても、標高そのものは変えられない。新球場がボールの飛距離や変化球の挙動にどのような影響を与えるのかは、実際に運用が始まるまで現時点では判断できない。
アスレチックスのラスベガス移転は、単なる本拠地移転ではない。球場設計が標高という物理的ハンデキャップをどこまで克服できるのか――。新球場はメジャーリーグにおける新たな「実験」の舞台になるかもしれない。
文=八木遊(やぎ・ゆう)