今季のメジャーリーグで最も高い得点力を誇るのはどのチームの打線か。
多くのファンはドジャースやヤンキース、もしくはフィリーズあたりの名前を挙げるだろう。しかし、正解は「ナショナルズ」である。
日本時間29日現在の得点数上位5チームは以下の通りだ。
【MLBチーム別1試合平均得点ランキング、29日現在】
1位 5.28 ナショナルズ
2位 5.27 ドジャース
3位 5.16 ブリュワーズ
4位 5.11 パイレーツ
5位 4.93 ヤンキース
大谷翔平擁するドジャースをしのぎ、メジャートップに立っているのはナショナルズ打線。1試合平均で5.28得点を叩き出している。
打撃項目で見ると、チーム打率はメジャー13位と飛び抜けているわけではない。一方で、本塁打は同4位タイ、盗塁は同2位タイ。長打力と機動力という異なる武器を兼ね備えた攻撃で、リーグ最多の得点を生み出している。
ナショナルズは2019年に球団史上初の世界一に輝いたが、その後は昨季まで6年連続でシーズン負け越し。2021年からは5年連続90敗以上を喫しており、長い再建期を過ごしてきた。
そんな中、昨季オフには33歳のブレーク・ブテラ監督を新指揮官に据え、若手主体のチームづくりがさらに加速。ここまで85試合を終えて43勝42敗と、再建の成果が徐々に結果に表れ始めている。
メッツを除く4チームが勝率5割超えのナ・リーグ東地区では4位に位置しているが、ワイルドカード争いには加わっている。再建モードから一気にポストシーズンを狙えるポジションにつけているといえるだろう。
チーム躍進の原動力となっているのが、この若い打線だ。
米データ分析サイト『Baseball Reference』によると、ナショナルズの野手陣はメジャー最年少となる平均24.9歳(出場試合数などに準じて調整した数値)。今季打席に立った15人の野手は全員20代で、最年長でもドリュー・ミラスの28歳に過ぎない。
ドジャース(平均30.6歳)、フィリーズ(同30.2歳)、ヤンキース(同29.8歳)が30歳前後の経験豊富な打線を組む中、ナショナルズは20代だけで構成された打線で、メジャー最多の得点を生み出している。
中心を担うのは遊撃手CJ・エイブラムズ、球界屈指の有望株として期待されるジェームズ・ウッド、俊足巧打のナシーム・ヌネスら。いずれも20代前半から半ばと伸び盛りで、すでに主軸としてチームを引っ張る存在になりつつある。
積極的なスイングと果敢な走塁は、この若いチームを象徴するスタイルだ。一人ひとりが長打力とスピードを兼ね備え、アウトを恐れず次の塁を狙う姿勢がリーグ屈指の得点力につながっている。
再建期の苦しい数年間で若手を積極起用し続けたことが、ようやく実を結び始めた格好だ。大型補強でスター選手をかき集めた打線ではない。自前で育てた若手がメジャー最高の得点力を生み出している点こそ、現在のナショナルズ最大の強みといえるだろう。
一方で課題は投手陣。エースのフォスター・グリフィンが8勝2敗、防御率2.93と奮闘する中、2番手以降の先発陣と守護神が頼りない。チーム防御率はメジャーワースト6位に低迷しているのが現状だ。
メジャー最高の得点力とメジャー最年少の打線。この2つを兼ね備えたチームは他にない。投手陣さえ整えば、「再建中」の肩書は過去のものになる。伸びシロたっぷりの打線を擁するナショナルズは、今季後半戦最大のダークホースとなる可能性を秘めている。
文=八木遊(やぎ・ゆう)