一回裏に「緊急ミーティング」を開いたオリックス・山崎勝己コーチ(写真=北野正樹)

 「ここで集まろう」。17年ぶりに東京ドームでの主催試合となった8月3日の楽天戦の1回途中、オリックスベンチで山崎勝己バッテリーコーチ兼ディフェンス担当は、異例の決断を下した。安達了一・内野守備走塁コーチ、松井佑介・外野守備走塁コーチとも目が合ったが、3人に言葉は要らなかった。守備の乱れも絡み4失点で1回表の守備を終えると、山崎コーチは先発を外れていた選手会長の若月健矢捕手に、ベンチに引き揚げてくる選手に集まるように指示を出した。

 ベンチ前での「緊急ミーティング」の始まりだった。円陣を組み、首脳陣が指示を与え選手を鼓舞することは珍しくないが、通常は攻撃面に関することが主で、打撃コーチが担当することが多い。守備を終えて引き揚げてきた選手の一人が「(反撃をするため)作戦系の指示があるのかなと思った」と振り返ったほどで、1回裏に守備を担当するコーチが選手を集めることは、極めて異例。オリックスでも今季、初めてのことだった。

 「『もう一回、守備からどっしり構えていこう』と話しました。後半戦のベルーナ(での西武戦)から守備の面で失点を重ね、よくない傾向なので。どの選手のプレーがどうなのかではありません。(野球に)エラーはつきものです。エラーをなくすのではなく、チームの流れとして守備で勝たないといけない。ベルーナから、何かを変えなくてはいけないと思っていました。他のコーチも同じ考えでした。今、話さなくてはいけないと、あのタイミングで思ったんです」と山崎コーチ。

 松井コーチは「凡事徹底というか、内外野ともにもう一度、1球1球に執着心を持ってやっていこうと3人(のコーチ)で話をしていました。誰がミスしたとかではなく、チームとしての意識づけです。やるのは選手ですが、我々も技術だけでなく、掛け声や対話など準備の部分も含めてやっていかなくてはいけないと思っています」と説明。安達コーチは「常に『ゲッツーでなく、1個(のアウト)でいいよ』と言っています。焦ったら1個も取れなくなってしまいますから。場面、状況に応じてですが、自分の状況判断というところだけはしっかりとやっておいて、とは言っています。取れるアウトをしっかりと取るということが、やっぱり大事になってきますから」と明かす。

 この日の試合は、最大5点差を紅林弘太郎選手の2ラン(2回)、来田涼斗選手のソロ(6回)で追撃、宗佑磨選手の2ラン(7回)で追いつき、9回に来田の3ランでサヨナラ勝ちし、3連敗を免れた。以後の2試合では、守備面での健闘が光っている。京セラドームに舞台を移した5日の楽天戦では、2‐1の5回に中川圭太選手が辰己涼介選手の左への飛球をフェンスに直撃しながらジャンピングキャッチしたり、宜保翔選手もジャンピングスローや好判断で併殺を完成させたりするなど堅守でエスピノーザの10勝目をアシスト。6日は1‐3で競り負け、同一カード3連勝は逃したが、紅林の好守や来田の美技で試合を盛り立てた。宜保は「無理に2つ(のアウト)を取りに行くというより、プレー完結くらいの気持ちでやっています。元々、意識はしていましたが、再認識した感じですね」といい、宗も「チームの守備面は引き締まったと思います」と明かす。

 宮城大弥投手、山下舜平大投手がトミー・ジョン(TJ)手術で離脱しているほか、故障から完全復活をしていない選手も多く、苦戦が続くオリックス。後半戦の西武戦からは、経験豊富な厚澤和幸投手コーチと指導2年目の比嘉幹貴投手コーチが、ベンチとブルペン担当を替わった。チーム内に変化をもたらせることで“化学反応”を生み、活性化につなげる狙いなどがあるとみられるが、異例の緊急ミーティングも好結果を生んでいる。

 実は、緊急ミーティングは、岸田護監督や波留敏夫ヘッドコーチの了解は得ていなかったという。「残り40試合あまり。1位は無理でも、2位、3位の可能性はあります。そういう意味でも西武にも、楽天にも負けるわけにはいかないのです。いいタイミングでチームを引き締めてくれたと思います」と波留ヘッド。当たり前のことを、いつも通りにやることでピンチに耐え、チャンスを広げる。オリックスは再び、強く前に進む。

取材・文=北野正樹

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