◆ 白球つれづれ2026・第38回
ソフトバンクの孫正義オーナーがこんな言葉を残したとか。
「普通は涙を流すんじゃないの?」
今月17日、ソフトバンクがリーグ3連覇を達成した。
9連勝で、2位の西武に11ゲーム差をつけての圧勝Vだから、小久保裕紀監督や、孫オーナーの胴上げから、祝勝会まで手慣れたもの。何よりチームには「日本一」の大目標がある。こんなところで歓喜の涙を流す選手はいない。(数字は優勝決定時の17日時点。以下同じ)
今季のホークスの強さを示すデータは山ほどある。
優勝直前の9連勝だけを見ても今季のストロングポイントが見て取れる。
連勝が始まった8日の日本ハム戦では「韋駄天男」周東佑京選手が、ランニング満塁本塁打を含む6打点の大暴れ。さらに左中間への大飛球もフェンスに駆け上がって超美技。
同カード2戦目は栗原陵矢、近藤健介両主砲のアーチ競演。3戦目は柳田悠岐選手の連発などで新庄ハムに3タテ。通算成績も18勝5敗2分けとライバルに引導を渡した。
続く対ロッテ3連戦では、高卒3年目の前田悠伍投手が開幕から無傷の12連勝を記録すれば、1番打者に定着した正木智也選手が3戦3発で勝利に貢献。
15日からのオリックス戦でも第2戦では延長戦にもつれ込む接戦を栗原と柳町達選手の連続タイムリーで競り勝つと、優勝を決めた第3戦は柳町の同点打の後、牧原大成選手が決勝適時打。昨年の最高出塁率男が久々の五番起用に応えれば、昨年の首位打者が七番に座って大仕事をやってのけるのだから、人材の豊富さは目を見張る。
しかも、9連勝中7試合は5点以上の得点力を誇り、1点差ゲームも3勝負けなし。つまり、相手チームにとっては付け入る隙が無いわけだ。
開幕直後は戦力が整わずに苦しんだ。
昨季14勝のエース・有原航平は古巣の日本ハムに移籍。同じくMVP男のリバン・モイネロはWBCの疲れが抜けずにファームスタート。同じく昨季13勝の大関友久は不調が続き、中継ぎエースの藤井晧哉は右肘手術で戦線離脱の異常事態。普通のチームなら投手陣崩壊の一大事だが、ふたを開けてみれば前述の前田悠の台頭に、大津亮介、松本晴が2ケタ勝利をマークする急成長。さらに昨季は中継ぎ要員だった上茶谷大河投手までが大活躍。
アイスホッケーで例えれば第1FWがダメなら、第2FWに総入れ替えしても戦えるのだからあきれるほどの質量だ。
加えて昨季からの懸案事項だった捕手の強化にはDeNAから山本祐太選手を獲得。近藤と並ぶ主砲に栗原が覚醒して、ただいま本塁打、打点の2冠王をうかがう。指揮官がシーズン前に語った「一度チームを作り替える」狙いはすべてのピースが埋まり、さらに隙の無い「王国」に進化した。
チーム作りには、いくつかの必要事項がある。
ドラフト、現役ドラフトにトレードなどの「発掘力」。FAや外国人獲得などには巨額の「資金力」も必要になる。これらを育てて戦力に仕立て上げる「指導力」。フロントから現場までが一体になる「組織力」も重要ポイントである。
これらすべてを兼ね備えるソフトバンクに対して、下位に低迷するチームは決定的な差がある。
今年度、選手会から発表された12球団の年俸平均を見ると1位のソフトバンクが8706万円で2位に阪神、3位に巨人と続く。これに対して11位はロッテの4041万円に、最下位はヤクルトの3991万円とホークスの半分以下。(外国人と育成選手は含まず)その育成選手は、ソフトバンクが54選手と契約して4軍まで組織化しているのに対して、楽天と広島は各11選手のみ。(開幕前の時点)この両チームが現在最下位にあえいでいることは決して無縁ではないだろう。
志を高く持つ王者が、飽くなき補強を続ける。それを超えるには何が必要か?
残る11球団に重い宿題が課せられている。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)