オリックスの宇田川優希投手が、高知市で行われている秋季キャンプで支配下と1軍マウンドへの復帰に向け、猛アピールを続けている。
「ゾーンに強い球を投げることを意識して、今出せる全力で投げ込みました。来季に向けた競争が始まっていますから、実戦のブルペンのつもりで投げました」。キャンプ2日目の投球練習日に、43球を投げ込んだ宇田川が声を弾ませた。
宇田川は2020年育成ドラフト3位指名で仙台大から入団。22年7月に支配下登録されると、150キロ超の直球とフォークを武器に19試合に登板して2勝1敗3ホールド。中継ぎとして防御率0.81とブレイクし、チームのリーグ連覇に貢献した。23年にはレギュラーシーズンで自己最多の46試合に登板して防御率1.77をマークしたが、24年は肩や肘の故障で13試合の登板にとどまり、25年3月11日にトミー・ジョン(TJ)手術を受けた。
今季は3月19日のショウワコーポレーション戦で552日ぶりに実戦復帰し、順調に復帰に向けて登板を重ねたが、7月15日の練習試合で肘の違和感で緊急降板。以後は実戦から離れたが経過は順調で、フェニックスリーグでの登板は無理をせず来季を迎えた方がよいとの判断で見送られた。
高知キャンプでのブルペンでは、球速は測っていないものの低めに重くて伸びのある速球を投げ込み、岸田護監督や厚澤和幸コーチに復活ぶりをアピールした。ウエートトレーニングで腕の筋肉が盛り上がり、可動域も広がって窮屈になったため、ユニホームの右脇の下を自ら切り裂いた。1年以上のリハビリでの成果が、こんなところにも表れている。
来季からの支配下復帰、1軍マウンドに向け、大きく前進したように見えたが、宇田川は「来年、いい状態になっても確実に(支配下に)戻れると思ってはいません」という。「(途中離脱した)今年のこともありますし、マシューらほかにもいいピッチャーがいますから『1軍に呼びたい』と思わせないと支配下も見えてきません。余裕があるわけじゃないんです。ブルペンで誰よりもいいという状態を見せたいのが一番です」と宇田川。過去の実績は捨ててアピールすることに注力する。
宇田川には、個人的に支配下になること以上に、1998年生まれの山崎颯一郎投手、小木田敦也投手の3人で“結成”した「小木田世代」が揃って復活しチームに貢献したいという思いが強い。2026年シーズン終了後、兼任コーチの平野佳寿投手や山田修義投手、本田仁海投手らが相次いで現役を引退、阿部翔太投手も戦力外通告を受けた。2021年からのリーグ3連覇や日本一をブルペンで支えてくれた先輩と後輩たちだ。「比嘉(幹貴投手コーチ)さんも含めて、頼りになる先輩たちが引っ張っていい雰囲気を作ってくださったのです。平野さんらが、みんなが力を発揮しやすいような環境作りをしてくれました。今、そういうチーム作りができるのはあの人たちを見て育った僕らしかいないんです」
小木田世代の3人は、2022、23年の優勝と日本一に貢献。2年間で宇田川は計23ホールド、山崎は計33ホールド、小木田も12ホールドを挙げた。山崎は今季、3年ぶりに50試合以上に登板(52試合)、25ホールドを記録し、復活を果たした。宇田川も復活の兆しをみせ、小木田も二度のTJ手術からの再起を目指している。
「新しいメンバーもどんどん入ってきていますが、優勝することができていません。リハビリで一緒になることの多い小木田とは、次は僕らがそういう立場にならないといけないよね、という話はよくしています。今度は僕らがチームを引っ張る番なのです」。自身と仲間の復活が、チームに活力を注入すると信じている。
取材・文=北野正樹