投手、野手にけが人が相次ぎ、2年ぶりのBクラスに甘んじたオリックスが、続投した岸田護監督の要望を受け、選手のけが防止などメディカル面の強化に向けて本格的な検討を始めた。最新機器を導入しスタッフを増員するほか、秋季キャンプ前にはトレーニングや計測機器が揃った外部の施設(ラボ)で選手の基礎的なデータを収集し、正しく効率よいトレーニングでけが防止につなげる。
「そのラボに行ったら何でも測れるんで、いろんなところを“見える化”していくっていうところですね。課題をつぶしたり変えなくていいところもわかります。そこを全部出していかないことには、新たに進んでいけないということです」。秋季練習が始まった10月10日、3年目のシーズンを託され大阪舞洲の球団施設で来季に向けスタートを切った岸田護監督が、新たな試みの狙いを明かした。
岸田監督の2年目、投では山下舜平大投手が右ひじ痛でオープン戦中に離脱。宮城大弥投手も4月初旬に左ひじを痛めて戦列を離れ、ともに5月にトミー・ジョン(TJ)手術を受けることに。打では頓宮裕真選手がオープン戦で右ひざを痛め、7月に手術に踏み切り森友哉選手も上半身のコンディション不良などで満足のいくシーズンを送ることができず8月に左手首の手術を受けた。吉田輝星投手はTJ手術後、1年で復帰したが、リハビリ中の多くの投手が万全な状態で1軍に戻ってくることは少なかった。103試合に出場し9本塁打を放った来田涼斗選手や前半戦の渡部遼人選手、後半戦の山中稜真選手ら新しい選手の台頭はあったが、後半戦に“失速”しクライマックス・シリーズ進出を果たすことはできなかった。
「難しいシーズンでした。チーム全員で頑張ってくれた前半戦はよかったのですが、投手陣の疲れはチームの疲れに直結してしまいますから、中盤以降に負けがこんできてしまいました」と振り返る岸田監督。ドラフトや補強があるものの、来季のスタートから最強の布陣が組めるか難しい状況。そのためにも現有戦力の底上げが急務になるのだが、体を鍛えてけがを防ぐためにも必要になるのが最新機器の導入だ。
球団にもデータ解析ができるトラックマンやホークアイなどの機器はあるが、まだ未導入の機器もある。「この秋はフィジカルの方をなんとかもう一回り二回り力強くしていきたい」という岸田監督が求めるものの一つが、地面反力を計測する機器だ。「それがあれば(体が)地面をとらえてどう動いているのか、どのタイミングで力を発揮することができるのかなどを測れます。それによってウエートトレーニングの仕方や練習の仕方も変わってくると思いますから、そこをしっかり数字化して取り組んでいこうというところです。フィジカル面はずっとやっているんですが、その数字を出さないとそれが本当に合っているのか明確になっていません。そこを明確にしていくということです。けがの予防にもつながっていくと思いますし、当然パフォーマンスにもつながると思います」
チームとしてけが防止について、手をこまねいていたわけではない。今年7月5日の京セラドーム。地下1階の会議室に福良淳一ゼネラルマネジャーや小浜裕一球団本部長、コンディショニング担当者、西武戦を終えた岸田監督、厚澤和幸コーチら1軍投手コーチ、水本勝巳巡回統括コーチ、2軍の風岡尚幸監督、平井正史投手コーチらが顔を揃えた。会議の呼びかけ人となった厚澤コーチは「確認作業です」と説明したが、投手陣のリハビリの現状やけが防止につながる話し合いがなされた。
出席した久保充広球団副本部長兼管理部長は、8月末「投手部門が中心でしたが、どういう対策をしていこうかという話を改めて話し合ったということです。トレーニングや治療、日々のアプローチも含めて取り組み方を改善していけば、けがの防止や早期復帰ができるのではという議論です。互いに意見を出し合いフランクに意見交換ができました。いい話し合いができたと思います。バックアップ体制を整えるのが私の仕事です。至らないところがあるのはわかっていますから、そこを改善するためにどう動けばいいかというのをやっています」と明かした。
トレーナーも拡充している。8月中に臨時のトレーナー一人が加わり、現在は二人がスポット的に選手のケアにあたっている。久保副本部長は「(導入する)機器は専門知識のある人がいた方がいいと思います。トレーナーも契約の問題があるので発表できるタイミングがくればお知らせします」と、スタッフの増員には前向きだ。
オリックスのトレーナーなどの体制について、自身も2025年3月に大阪でTJ手術を受けた吉田は「こんなに手術をする人が多いというのは異常事態だと思います」としながらも、「オリックスのこの環境に問題があるとは思ってはいません」という。そして「いろんな病院で(手術を)するなら、その病院でやった人は同じトレーナーがみるとかやったらやりやすいと思います。雇用の問題などがあるとは思いますが」と提言する。故障者へのより細やかなケアがリハビリをうまく進め、効率の良い復帰につながるということだろう。
けがの予防に正解はない。アマチュア時代のひじや肩の酷使があるだろうし、プロ入りしてから体ができ上っていないうちの練習過多や“勤続疲労”もあるだろう。トレーナーを増やしただけで解決するほど単純ではなく、複合的な要因が絡み合っているといえる。TJ手術の多さは、早い時期に決断することで選手生命を伸ばすという球団の中長期戦略でもある。ただ、設備面で他球団の後塵を拝していたことも事実。現状を打破しチームに変化をもたらせようとする試みが始まった。
取材・文=北野正樹