メジャー1年目に35本塁打を放ちながら、全米野球記者協会(BBWAA)が選ぶ新人王の最終候補3人から漏れた村上宗隆。そんなニュースが注目を集めるなか、改めて考えてみたいのが選手の価値をどう測るかという問題だ。
例えば、35本塁打と0本塁打。これほど極端な成績を残した2人を、同じ物差しで評価するとどうなるのか。意外にも、その差はほとんどなかった。
ホワイトソックスの村上と、レイズのチャンドラー・シンプソンは、ともに2000年生まれの左打者ながら、そのプレースタイルは対照的である。
村上は127試合で77打点をマーク。打率.207、196三振と粗さも目立ったが、OPSは.825。持ち前の長打力をメジャーでも遺憾なく発揮した。
一方のシンプソンは151試合で打率.306、46盗塁を記録し、ア・リーグ盗塁王に輝いた。驚くべきは612打席に立ちながら本塁打がゼロだったこと。昨季のデビュー以来、レギュラーシーズン通算1053打席で一度も柵越えを記録していない。
では、チームへの貢献度はどちらが上だったのか。
打撃、守備、走塁などを総合的に評価するWARに注目したい。米データサイト「Baseball-Reference」の2026年の算出値は、村上が2.3、シンプソンが2.5。本塁打を35本も放った村上より、一本も打っていないシンプソンがわずかに上回った。
一方、打撃での得点創出能力は村上が上だ。OPSはシンプソンの.689を大きく引き離し、リーグ平均を100とするOPS+でも130対94。打率では約1割も下回るのに、出塁率は.347対.333で村上が上回っている。92四球を選んだことも見逃せない。
対するシンプソンは、シュアな打撃と足で安打を稼ぐ。今季放った175安打のうち、内野安打42本はメジャー最多。ほかの打者ならアウトになるゴロを、快足で安打に変えてしまう。
規定打席に到達しながら打率3割以上、本塁打ゼロという成績は、1999年のルイス・カスティーヨ以来。長打が重視される現代野球では、まさに異色の存在である。
さらに外野守備も大幅に良化。守備範囲を評価するOAAは前年のマイナス5からプラス9へ上昇した。
Baseball-ReferenceのWAR内訳を見ると、打撃では村上が21点分上回る一方、守備と走塁ではシンプソンが18点分リード。これだけなら村上が優勢だが、守備位置や出場機会による補正を加えると、評価は逆転する。
シンプソンが所属するレイズは98勝でア・リーグ東地区を制し、ワールドシリーズに進出した。42本塁打のジュニア・カミネロらが長打力を担う一方、バントや盗塁を絡めた攻撃でも相手を揺さぶった。ケビン・キャッシュ監督も、自らの持ち味を理解して技術を磨くシンプソンを高く評価。まさにチームの野球を象徴する選手の一人だった。
一方、ホワイトソックスでは村上だけでなく、コルソン・モンゴメリーとミゲル・バルガスも30本塁打を突破。村上は長打力を備えた打線の一角として存在感を示した。
WARの0.2差だけで優劣は決められない。35本塁打の村上か、46盗塁のシンプソンか。総合指標でほぼ互角でも、チームによってその選手の必要性は異なるだろう。
もし、自分の応援する球団にどちらか一人を迎えられるとしたら。あなたなら、どちらを選ぶだろうか。
文=八木遊(やぎ・ゆう)