◆ 白球つれづれ2026・第39回
ソフトバンクが、早々とパ・リーグ3連覇を決めた。一方のセ・リーグも阪神が巨人とデッドヒートを展開してきたが、どうやら球団初の連覇が見えてきた。
いよいよ、野球界はクライマックスシリーズに突入して最後の戦いの時を迎える。
そんな頂上決戦の時期。一方で各球団とも来季に向けて動き出している。
夏頃から、ドラフト会議に向けた新戦力の絞り込みが始まり、現有戦力の中から現役引退組や、来季の戦力外選手への通達が始まる。
今月27日。DeNA・藤浪晋太郎投手の姿は東京・稲城市のGタウンにあった。ファームリーグの巨人戦に先発。3回を8安打5失点。これがベイスターズで投げる最後の舞台となった。
その4日ほど前に、来季の戦力外が明らかになっている。
メジャー帰りの昨年途中からDeNA入り。手薄な投手陣の救世主になるかと期待されたが1年目は6試合の登板で1勝止まり。満を持した今季も長いファーム生活が続き、一軍では、わずか3試合に登板。0勝1敗、防御率6.30。中でも課題とされて来た制球力は10イニングで15四死球と改善の兆しも見えずでは、戦力外と判定されても致し方ない。
2012年のドラフトではオリックス、ヤクルト、ロッテなど4球団競合の上、阪神に1位入団。いきなり3年連続2ケタ勝利を記録して期待通りにエースの駆け上がった。
ところがプロ4年目あたりから成績が下降カーブに入り出す。
この年の広島戦では、覇気のない投球と感じた金本知憲監督(当時)が打たれてもマウンドに送り続けて161球を投げさせた“事件”まであった。
翌17年からは1軍での登板が激減。それと同時に制球難が顕在化する。ストレートの球速は常に150キロ中盤以上をマークするが、コントロールが定まらない。特に右打者の内角に「抜ける」ボールが出だすと、死球も増える。
この悪癖は23年からメジャーに挑戦後もついて回り、2年半の間に4球団を渡り歩いたが最後はマイナー球団で壮大な挑戦を終えた。ちなみに米国での防御率は7.18。ここでも64投球回で52個の四死球を記録している。
もはや改善が難しいとも言われる藤浪の制球難だが、それ以外の欠陥を指摘する球界関係者も多い。
「彼は周囲のアドバイスに耳を貸さないと言う評判がある」と阪神OBは語る。
良く言えば「自分の信念を貫くマイペース派」。厳しく言うなら「唯我独尊のお山の大将」と言ったところか。大阪桐蔭高時代に甲子園大会の春夏連覇から虎のエース。若くして頂点を極めた男のブライドと、葛藤も垣間見える。
だが、現状のまま再起を果たすには無理がある。
「海外もないわけではないが、NPBでプレーさせてもらえたらいいなと考えています」ファームでの登板を終えた藤浪は改めて、現役続行とNPBでのプレーを希望した。
だが12球団の中でも先発陣に人材を欠いたDeNAで通用せず、他球団も若返り策を推進しているチームが多い。そして、何より「扱いにくい」と言うレッテルまで貼られる現状で、すんなりNPB復帰の確率は低いと言わざるを得ない。
今では韓国や台湾などアジア圏や中南米に活躍の場を求めて再挑戦する選手も多い。国内なら独立リーグに活路を見出す方法もある。
「最後の方は(2軍で)いい感覚で投げられた。自分らしい投球が取り戻せていた」と、あくまで前を向く藤浪。ファームでは、そこそこの成績は残せるのに1軍に昇格すると元の姿に戻ってしまう。これは投球のメカニックよりも、精神的な面が大きいと見て取れる。
一度、これまでのフライドを捨て、メンタルトレーニングに時間を割き、1からの挑戦をスタートさせない限り再生は難しい。
今季限りで石川雅規(ヤクルト)や平野佳寿(オリックス)西勇輝(阪神)らの名投手が現役引退を決めた。
MAX161キロの剛速球を誇る藤浪も来季は33歳。残された時間は長くない。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)