新たな歴史を刻んでみせる。育成出身で7月末に支配下昇格を果たし、背番号「92」をつけることになった台湾出身の陳睦衡(チェン・ムーヘン)投手が、球団初の背番号を歴史に残る番号にしたいと意気込んでいる
「正直にいうと、(けがで)出遅れたし、まだ復帰してから時間も経っていません。パフォーマンスもそこまで出せていなかったので、思ったより早かったなと思います」。支配下昇格が発表された7月30日、大阪・舞洲の球団施設で陳が率直な思いを口にした。
陳は、2024年9月の「第13回 BFA U18アジア選手権」に台湾代表として出場。韓国戦に先発し5回1/3を投げて被安打2、7奪三振、無失点。日本戦では4回を無安打、2奪三振、無失点で6大会ぶりとなる優勝に貢献した。メジャー球団も関心を寄せる中、オリックスと同年10月に育成契約を結び、11月の秋季キャンプに参加した。
1年目の昨季は、5試合に登板し1勝0敗、防御率1.17。飛躍が期待された今季は、春季キャンプ終盤に右ひじを痛め、6月9日の独立リーグとの交流戦で実戦復帰した。2軍での公式戦登板は2試合(6イニング69球、被安打1、奪三振4、四死球0、無失点、防御率0.00)にとどまったが、最速152kmをマークするなど順調な回復ぶりと素材として高い評価を受け、支配下に抜擢された。背番号は「92」。球団関係者によると、1989年に発足したオリックスで選手が着用するのは初めてという。
来日当初は、台湾とのボールの違いに苦しんだそうだが、経験を重ねることで解消。けがで戦列を離れている期間には、出力が上がるような体の使い方やひじの負担を軽減する投げ方などを勉強し、ウエートトレーニングなどで筋肉量が増え、体重も入団時より11kg増量した。
台湾出身の日本ハム・孫易磊(スン・イーレイ)投手、ソフトバンク・張峻瑋(チャン・ジュンウェイ)投手、ヤクルト・翔聖(ショウセイ)投手ら同世代の選手の活躍も励みになった。張は高校の同級生で同じクラス、翔聖とは中学のクラスメート。孫は昨年5月に支配下になり、張は7月27日に一足先に支配下入りしていたが「張は高校のエースで、本当にすごいピッチャー。(先を越された)悔しさはありませんでした。自分には自分のテンポがあります。人と比べることなく自分のペースで成長することを考え、落ち込むことはありませんでした」と明かす。
翔聖は今季の支配下入りを逃したが、8月7日のオリックスとの2軍の交流戦(杉本商事Bs)で先発し、5回を73球、被安打2、奪三振3、与四球1、無失点で今季3勝目を挙げた。前日には半年ぶりに会食し、互いの健闘を讃えたという。陳は支配下入りした2日後のソフトバンク戦(タマスタ筑後)で3番手で登板し、2回2/3、65球、被安打0、奪三振2、与四球4、1失点で今季初勝利を挙げた。希望は先発。近く予定される登板に向け「四球を少なくして球数を減らし、5回を投げ切りたい」と意気込んだ。目標とする1軍のマウンドに向け、背番号「92」の新しい歴史を創る。
取材・文=北野正樹