◆ プロ13年目の意地
待ちに待った一軍昇格、そして初のスタメンを担った関根大気が、その存在感を見せつけた。
23年には140試合出場を果たしたが、一昨年は79試合、昨年は9試合と年々活躍の場は減少。今年もファームで3割超えの数字を残しながらも、なかなか一軍から声のかからぬ日々を過ごしていた。
しかしファームでも大好きな野球への情熱を失うことはなかった。全ては一軍で勝利のために。
「日々自分の成長を感じながら、また仮説を立てて取り組みながらできていたので充実はしていました」
関根がそう語る通り、23年の好調時のフォームをベースにフィジカルを鍛え直すなど、常にレベルアップに向けて動き続けた。
中井大介野手コーチもその姿勢を評価する。
「ファームでずっといろんな思いがある中で、いい準備をして、こういう機会を自分で掴んできた」
そして待ち焦がれた一軍昇格は、8月に入ってすぐだった。久々の横浜スタジアムで打席に入ると、真っ青に染まったスタンドからひときわ大きな声援が送られた。
「めっちゃ嬉しかったですよ。ありがたかったですね」 温かいファンの想いを胸に刻み込んだ。
5日にはスタメンに起用され、球界屈指の左腕・高橋遥人から貴重なタイムリーツーベースを含むマルチヒットをマークした。
「まずヒットが1本、どんな形であれ『H』のランプがつくっていうのはすごく心が救われました。ただ、まだまだ打席の中で自分がやりたいけどできてないことはあるので、そこを出せるようにもう1個準備をしたい」
結果を残しながらも、さらなる高みを見据えて引き締める。それは一軍が甘い世界ではないことを熟知しているからでもある。
「レベルの高いピッチャーに対して、1打席1球あるかないかの打てる可能性のあるボールを打つ。そのボールをインフィールドに入れることができないと、あっという間にやられてしまいますから。確率の問題ですが、ツーストライク後はヒットになりづらいですから、その前にいかにいい打球をヒットコースに飛ばせるかですね」
中井コーチもその存在感に強い期待を寄せる。
「ほんとにいろんなことができる選手ですし、打席にいても塁にいても幅が出る。1から10まで言わなくても、本当にいろんなことを考えられる選手ですからね」
打席でも相手キャッチャーのマスクを拾う気遣いを忘れず、スタンドのファンの声援にも丁寧にお辞儀で応える。
「野球選手の前に社会人。野球以外の部分は、きっと野球の技術にもつながっている」 リスペクトと野球への探究心に溢れる好漢は、暑い夏に熱い新風を巻き起こす。 関根大気の逆襲が、始まった。
取材・文 / 萩原孝弘