DeNA・関根大気(撮影=萩原孝弘)

 プロ生活13年目を迎えた関根大気。23年には140試合出場で打率.261とキャリアハイをマークしたが、一昨年は79試合、昨年はわずか9試合出場に留まっている。

 今年も主戦場はファーム。しかし横須賀スタジアムのグラウンドに立つ背中から、調整という言葉は似つかわしくない。そこにあるのは凄まじいまでの“野球への情熱”に満ち溢れていた。

◆ あくなき探求心

 キャンプも二軍の嘉手納で過ごした関根。「朝5時に起きて動き始めていたら、夜9時には眠たくなりましたね」とストイックにスタートした今季。ファーム開幕して半月で調子は上がり、一時期は3割5分に迫る打率を残した。

 しかし目標はここで結果を出すことではない。「このままで上で3割以上打てるかと言われたら、そうではないなと。解決できる可能性がそこにあると思ったから、トライしようと思いました」

 名古屋遠征の際、信頼を寄せるトレーナーの助言を受け「身体の構造的に背骨の動きをひとつ立体的に使わないといけない」と特に右ピッチャーに対しての打撃フォームの見直しに着手している。

 「前までは若干の前傾姿勢から胸を回旋した形でした。これでは2次元の動きなので、前傾から投手方向に屈曲、そして回旋の形の3次元の形にしたいのです」。

 胸周りを中心に身体の構造をアタマに入れた上での、極めて論理的なアプローチ。ピッチャーがボールをリリースする際に手だけを引いていた感覚をなくし、最初から手を引いた状態からリリースとともに準備に入る。

 「オープンスタンスにすることで構えたときにはすでに回旋が作られる。トップを上げることで右肩は下がるので、右脇腹が屈曲の要素となる。若干の背中回りの丸みが前傾の要素となる。この3つを行う中でトップが作られて、動くことなくインパクトに向かっていく。胸と手が分離せず、つながっていく感覚がほしいのです」

 まだシーズン序盤。いまならまだ間に合う。「仮説を持って、朝早出して、メインで打って、試合でやってみています。変えるべきと思えた所は変えて、いつかくるチャンスまでに作り上げる。そこを掴み取らないとという感じですね」

 打率が落ちるリスクを冒してまで進化を求める姿は、一見危うくも見える。しかし、本人は平然と言い切る。

 「3割で呼ばれないのならば3割5分、それでもダメなら4割。それでもダメなら5割打つようにすれば、昇格できる可能性が広がると思うので」。あくまでもベクトルは自分。圧倒的な数字を残すことを目指す。次元の高い思考がモチベーションとなり、さらに野球への成長を促せるとの理念が、いまの関根を突き動す原動力となっている。

DeNA・関根大気(撮影=萩原孝弘)

◆ 「ユニフォームを着せてもらっている」責任の重み

 攻守走すべてにおいて、集中力を研ぎ澄ます関根。特に二軍のゲームではその姿は一層際立つ。常日頃から口にする「ユニフォームを着ていられるのは有限」との信条は、ワンプレーへの向き合い方からも伝わってくる。

 それには若手も刺激を受けている。成長著しい田内真翔も「関根さんについて行けば大丈夫」と絶大な信頼を口にするのは”プロとしての佇まい”を厳格に示していることに他ならない。

 その根底には、かつて筒香嘉智から教わったプロとしての心得を受け継いでいくべきとの信念がある。

 「若いときってやるべきことがたくさんあって、それを早く気づいてやっていれば野球への視野も広く持てたりしますから。僕はそのようにゴウさんに教えていただいて、いまありがたいことにユニフォームを着させていただけていますから」

 野球はその1球で人生を変えてしまう可能性もあるスポーツ。「例えば外野のポジショニング。レフトとライトは常にセンターを確認する。センターはコーチの指示を確認する。それに気づいていないで打球がそこに飛んで捕れなかったとき、それはピッチャーの人生やいろんな人の生活を変えてしまうことだってある」。

 プレーに入る前の規律、準備を徹底すること。それこそが、同じユニフォームをまとう仲間への、そしてプロという職業への向き合い方だと説く。「僕なんかが、って思うところもありますけど」と前置きしつつ「僕は伝えることまでは義務だと思っています。チームの事を考えたときに、これはしたほうがいいと思うことは、言わさせていただきますよ」。そこにはフォア・ザ・チームと愛する野球への情熱が溢れていた。

◆ 指揮官も「いい風を吹かせてくれる」


  村田修一・二軍監督も関根の存在を頼もしく見つめる。「すごく前向きに野球をする選手ですよね。スタイルも積極的ですし、すごく頼りがいのある選手です。順番的にも一番上に呼ばれる可能性のある外野手なので、いい状態にしておかないといけないですね」と一目置く。

 「二軍がいいスタートを切れたのは関根や柴田(竜拓)がいい風を吹かせてくれたからです。彼らを見て若い選手たちも朝から室内で打っていたり、外でノックしたり、トレーニングしている姿を見かけますので。いい習慣が伝統になればいいなと思っていますよ」

 ファームでは年長者の部類に入るが、高みを目指し続ける関根の姿。「もっと上手くなりたいという野球に対する熱意や愛情が人並み以上にあるんだろうなと思いますね。若い選手にはその野球を愛する姿勢を受け継いで、見習って野球に打ち込んでほしいです。現役にしかできない苦しさと楽しさが絶対にあるので」。いつかくるユニフォームを脱ぐ日が一日でも伸びるための手本としても、その背中は貴重な存在となっている。

 高卒1年目から一軍の舞台に立ち、通算653試合に出場している30歳は「素晴らしい選手たちってそういう部分も兼ね備えてるなって感じているんです」と”人間性”の重要性を強調する。

 「僕はまだまだ足りていないですけれども、野球の技術も野球以外の部分も必要だと思います。そこはつながっていると本気で思っていますので」。

 心技体を磨き、その時を待つ背番号63。日々の研鑽の先に、横浜スタジアムの歓声が待っている。

 取材・文=萩原孝弘

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この記事を書いたのは

萩原孝弘

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