オリックスの高卒5年目の池田陵真外野手が、日米通算250セーブのレジェンドでチームの先輩、平野佳寿投手兼任コーチの言葉を胸にゲームに臨んでいる。
「僕からしたら大スターです。平野さんもうまくいかなかったこともあると思うのですが、その経験を踏まえた上ですごくいいことをおっしゃっていただきました」。池田が感謝の思いを言葉にした。
池田は大阪府出身。大阪桐蔭高3年時に主将として春夏の甲子園に出場し、2021年ドラフト5位でオリックスに入団した。右方向へも長打が打てる打撃がアピールポイントで、2年目にウエスタン・リーグの打率(.301)、出塁率(.362)の2冠に輝いた。
しかし、1軍で定位置確保には至らず、昨季は下半身のコンディション不良などもあり、プロ4年目で初めて1度も1軍の試合に出場することができなかった。24年オフには、同じ右打者で逆方向に強い打球が打て「目標としている」高校の先輩、浅村栄斗選手(楽天)の自主トレに参加させてもらい飛躍を誓っただけに、1軍から評価されなかったことへのショックは大きかった。
今季も開幕1軍を逃し、2軍戦で打率2割台。打撃の内容はよくても、結果につながらないことも多い。「走攻守」のうち、首脳陣にアピールするのは打撃だとわかっているが、結果を求めすぎるためか数字を残せていないのが実情だ。
焦りにも近い気持ちで送る日々の中で、チームの大先輩で投手コーチを兼務する平野佳寿投手と話す機会があった。たわいない話をしている中で、思い切って「人がよく見えてしまって、自分を見失っている時があります。1軍に上がってレギュラーを獲りたいんです。そのために必要なのはセンスなのか、運なのかということを考え込んでしまうことが多いんです」と打ち明けた。平野からは「イケちゃんは、つかみにいっている。例えばレギュラーを」と返ってきた。
「(レギュラーの)チャンスがきた時には、自分では気付かないままに奪っていく時もあるし、その逆もある。努力をして練習をいくらしても、この世界だから仕方がないという考えもできるよ。飛んでいる綿や虫と同じで、つかみにいったら絶対に逃げるからね」。続けた平野の言葉に、池田は「レギュラーを獲る、ということばかり考えていたら、うまくいくこともいかなくなってしまう。掴みにいかずに忍耐強く待ち続けるじゃないですが、その間に自分を見詰めるじゃないですか。自分と向き合えば、やるべきことが明確になってきます。考えなくてもいいことを考えていたんです」と気付かされ、迷いは吹き飛んだという。
年齢も離れ、野手と投手の関係では挨拶以外に話すケースは少ないが、池田の悩む姿を見た石川亮選手が先輩の話を聞けば参考になるのではと、二人の会話に池田を入れてくれたらしい。
「その考えは違うという人も間違いなくいると思います。『掴みにいかんかい』と。それも正解かもしれません。でも、ここ2年間、『絶対にレギュラーを獲ったる』『1軍に上がりたい』と思い続けてうまくいってなくて、何かを変えなくてはいけないと思っていた自分に、平野さんの言葉はぴったりだったんです」と目を輝かせた池田。
6月に入って心機一転、頭を丸めた。「レギュラーを追わないからといって、練習をさぼったりボーっと(チャンスを)待ったりしていても、絶対にチャンスは巡ってきません。今、やれることをしっかりとやって準備をしています」。足元を見つめ自分と向き合い、自然体で臨む。
取材・文=北野正樹