DeNA・宮下朝陽(撮影=萩原孝弘)

◆ 脚光を浴びるドラ3ルーキー

 意義のある一打を放ち、昇格後の打率は3割を超える。いま宮下朝陽に注がれる視線と評価の裏には、プロの洗礼と、それを乗り越えてきた努力の時間が存在する。

 4月には掴んだ一軍の打席。デビュー2戦目にして初ヒット初打点、そして初ホームランといきなり脚光を浴びた。しかしその先待っていたのは甘い世界ではなかった。「ただもう速いボールを待っとこうみたいな感じだけだったんで…」。来たボールに対応するだけで精一杯となり、状況を俯瞰するゆとりなど皆無のまま、ゴールデンウィークを待たずして二軍降格。5月半ばに昇格するも、10日足らずで再び横須賀の地へと身を引くこととなった。

 一軍で通用するために。約半月課題と向き合い、掴んだ3度目のチャンス。かつてはただ圧倒されていた一線級のスピードボールが、いまは頭の中でイメージとして整理され始めていた 。

  「結構いい感じでは来ています。このまま継続したいですね。配球面でも150キロ超えるボールでも結構打つポイントのイメージがだいぶできてきてるんで」

 打席数を重ねることで、準備の質が向上した。 「夏に入ってピッチャーの球が結構見えやすくなりました。最初勢いがある時でも、中盤になってくると落ちてくる部分もあるんで、そこを考えながらの配球なども考えられるようになってきました」

 またストロングポイントのひとつは、右方向へ伸びる打球 。 「今は右方向を狙ったりしています。追い込まれたらもうそっちにという感じで考えてやってます」と自らの長所は把握している。

 しかし打席ごとの意図や、状況に応じた柔軟なスイングも身についてきている。スイープを決めたヤクルトとの初戦では、引っ張ってツーベース。 「結構刺されてたんで、ちょっと引っ張ろうかなとファウルしていて、そのあと引っ張りに行ったらそのまま弾き返せた感じでした。ちゃんと冷静に考えられてるかなっていうのはあります」

◆ 未だノーエラーの守備

一方守備においても、未だエラーは0。確かな意識の高さを持って、内野の要ともいえるショートの座を担う。

 「北海高校は守備に細かいんです。大学では少し意識が薄れてしまったことはありましたが、プロに入ってまた細かいところが必要になって。守備をしっかりっていう高校の時の意識は、プロでも生きていますね」

 北の大地で培われた守備意識を再確認し、安定した守備へとつなげている。

  「最近握り替えとかゲッツーとかのミスが結構ちょっと出てきてるんで、不安な部分はありますが、あんまり自分にプレッシャーかけたくないんで、練習をしっかりやれば、試合もそのままいけると思います」。

 怖さは準備の段階でクリアする。「難しい打球は正直セーフになっても仕方ない。スローイングは不安がないので、取れる打球をしっかりと捕ってから、取れるアウトを確実に取るという意識ですね」。上半身の強さから繰り出す正確な送球を武器に、冷静にアウトを積み重ねることにフォーカスしている。

◆ 鈴木尚典コーチの眼差し


 プロ入りから根気強く指導してきたのが鈴木尚典打撃コーチ。 元首位打者が求めたのは、小さくまとまる器の小ささではない 。持ち味であるスケールの大きさを殺さず、球界を代表するスラッガーへと育てることだった。

 「ほんとにいろんな可能性を持った選手なんです。スケールが大きな選手になってもらいたいから、彼のやっぱ長所である長打は絶対消さないように。将来的には20本、30本を目指そうって話は下にいる時からしてます」

  ただ当てにいくスイングを排し、強い打球を叩き込む意識 。そして一軍という過酷な戦場で生き残るための、厳しいプロの勝負鉄則を叩き込んだ。

 「今はレギュラーを取る途中の段階なんでね。やっぱり他にもいい選手がいるので結果は出さないといけないし。そうなるとスタメンで出たときには最低でも1本打つようにするとか、場面によってはコンタクトを重視したりとか。もう毎日勉強ですね」

 初昇格時の余裕のなさを見てきたからこそ、現在の変貌ぶりと日々の歩みには、指導者としての確かな確信が滲む 。「入ってきた時から、キャンプから見てるからね。最初は余裕が全然なかったです。今はまさに成長中ですね。ほんとに見ていて楽しいですよ。本物のレギュラーになるまで時間はかかるけど、順調にきていますよ」。

一軍での挫折、現場で自ら掴み取った手応え、そして恩師の言葉。「本物のレギュラー」という果てしない頂に向けて、日々力をつけてきている。

取材・ 文/ 萩原孝弘

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この記事を書いたのは

萩原孝弘

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