◆ 一軍に吹き込むファームの熱
ペナントレースが佳境を迎えるなか、3位から虎視眈々と上位を狙うベイスターズ。
直近の中日戦でのスイープの立役者のひとりが蝦名達夫だった。初戦では攻守にわたりキラリと光るプレーを連発し、3戦目は殊勲のサヨナラヒットを放つなど、3連戦通して存在感を発揮した。
怪我からのリハビリを経てファームの地を踏んだ男が、昇格直後から即座に一軍の緊迫した戦いに溶け込み、結果を残しているのには明確な理由がある。それは二軍の場に充満していた“確かな熱気”と“勝負への執着”を、そのまま一軍へ持ち込んできたからだ。
ファームは現在、中地区の首位に位置している。優勝へ向けた2位・巨人との直接対決3連戦では、負け越したもののすべてが僅差のゲームとなり、グラウンドにはピリッとした空気が張り詰めていた。特に30日のゲームでは、3点差をつけられた最終回に猛攻を見せる。2アウトから救援の剛腕左腕アルベルト・バルドナードを捕らえて3連打で1点差にまで迫り、若き星たちの「勝ちたい」という強い気持ちが充満していた。最後までファイティングポーズを取り続けた教え子たちの姿勢に、村田修一二軍監督も頷く。
「やっぱり優勝争いしているからこその試合内容、粘りですよ。相手も必死、こっちも必死。だからこそこういう戦いができる」。
若手の成長や、実績組の調整の場にとどまらず、勝利のために一球一球に全員で集中する雰囲気がそこには存在していた。
ファーム合流時を振り返り、京田陽太もこう証言していた。
「正直ぬるいかと思っていましたが、村田監督をはじめ、勝利に対してみんなでガッといく感じがファームでもすごく伝わってきました。若い選手が声を出したりとか、練習もちゃんとしているところを目にする機会がありましたよ。今のチームとしてすごく良い循環になってきていると思います」
そのため、一軍への昇格通知を受けた際も、彼らの心と体に過度なギャップや戸惑いが生じることはなかった。
いきなりの活躍を披露した蝦名達夫も、二軍での感触を口にする。
「ファームもすごく緊張感を持っているというか、今までにないくらい集中してやっていた。一軍と同じ感じの気持ちや雰囲気でやっていたので、あまり変化は感じなかったです」
ファームで日々醸成されていた勝負への真剣味が、一軍特有のプレッシャーを自然な「良い緊張感」へとつながった。ファームでフォームをシンプルに修正し、感覚を研ぎ澄ませてきたからこそ、一軍の中でもブレることなく自分の役割を全うしてみせた。
村田二軍監督が植え付ける一切の隙を許さないピリッとした緊張感。そこを経て昇格してきた選手たちが、一軍の激しい戦いの中にスムーズに入り込み、チームに新たなエネルギーを注ぎ込んでいる。ファームで培われた“勝利への執念”という熱源は、今、終盤の一軍の戦いの大きな推進力となっている。
取材・文 / 萩原孝弘