一軍昇格即スタメン。重圧がかかる復帰の舞台にも、蝦名達夫の心は整っていた。「特別緊張するというよりは、良い緊張感でできた」と語る通り、試合の要所で存在感を放った。
◆ 流れを渡さなかった好守
ゲームは中日先発・高橋宏斗に手も足も出ない状況で進んだ。そして1点ビハインドで迎えた無死満塁の6回。蝦名はあわやセンター越えの打球を背走し好捕した。犠飛による1点のみに留めた懸命のプレーは、チームの息の根を止めさせない要因となった。
「もうがむしゃらにやって。あそこで捕れたことは、チームの流れもありましたし、やっぱり最小失点に抑えられたことで、勝ちに繋がったのかなとは思います」
守備で呼び込んだ流れは、そのまま自身の打撃にも波及した。2点差を追う8回、この日初ヒットを放った佐野恵太に続き、投手交代直後の打席。ファームで改良した“シンプルな打撃”が実を結ぶ。
「ちょっとだけシンプルにを意識しました。あの場面はランナーがいてクイックも早かったんで、ちょっと早めに準備しとこうっていう感じなので、余計シンプルになったと思います」
逆転の足がかりとなった場面では、登板したての投手を前に「とにかく後ろに繋ぐこと、併殺だけは避ける意識」を徹底した。その気迫が打線のつながりを呼び、二死満塁の場面で再び見せ場がやってくる。度会隆輝の放ったヒットで二塁から一気にホームを狙うと、相手捕手のタッチを鮮やかにかわす回り込みスライディング。息をのむ好走塁で同点のホームを陥れて見せた。
「スライディングは良かったですね。練習やキャンプでも何回かやってきたので、それが出せたと思います」
◆ 指揮官も与える高評価
相川亮二監督も、勝負どころで帰ってきた男の走攻守にわたる活躍を高く評価した。
好守には「捕れると捕れないで当然大きな差があるので。守備でもすごい期待してる選手ですので。蝦名にとっては当たり前かもしれないですけど、しっかりチームにも貢献してくれたと思います」
走塁にも「あそこはもう紙一重の中でやってるプレー。リードであったり、スタートだったり、そういうものの積み重ねだと思います」
つなぎの一打もチームにも蝦名自身にも大きい一打と指揮官は頷いた。
お立ち台には同点打の度会隆輝と、逆転打の牧秀悟が登った。しかし一軍復帰即、走攻守で光を放った蝦名達夫も、間違いなく勝利の立役者のひとり。
怪我も癒え「体調は万全」と言い切る男の帰還は、勝負どころを迎えるチームにとって最高の追い風となる。
取材・文 / 萩原孝弘