プロの世界は厳しい。結果が出なければユニフォームを着ていられる時間はあっという間に過ぎ去っていく。
だからこそDeNAのファームを預かる村田修一・二軍監督には、選手たちの人生を背負うだけの覚悟がある。
「熱くなっていこうぜって常に言っています。どれだけこのチームを強くしたいのか、このチームで生き残りたいのかを前面に押し出してこないと、うちに秘めてますって言われても、見えなかったら意味ない。結果が出ないことは仕方ないですけれども、結果を出したいという姿勢は、常に前に出せるように」。
長年4番の座を務めたスラッガーの視線は、常に一軍の舞台を見据え、若手の心に訴えかける。ファーム中地区で現在トップを走る若き星たち。育成の場で、選手を一人でも多く一軍へ送り込み、定着させるための村田二軍監督の「熱き取り組み」に迫る。
◆ 一・二軍のポジティブな循環
現在の一軍では、村田二軍監督が手塩にかけて育ててきた若手選手たちが一軍で積極的に起用されている。もちろん苦しい一軍の事情もあるが、ファームの選手たちにとってもお呼びがかかるチャンスがすぐあるかもしれないという、ポジティブな緊張感と期待感に繋がっている。
「結果が出る・出ないはタイミングや、他にもいろいろなこともある」と勝負の世界の厳しさを知る村田監督は、一軍ですぐに通用するとは考えていない。大切なのは、一軍の舞台を経験し、通用しなかった時に「何が足りないか」を気づくこと。「小田(康一郎)もそう。宮下(朝陽)も何回も落とされて上がってを繰り返しています。足りないことを下でまた練習すればいいんです」
個のレベルアップのサイクルこそが、チームの底上げを支える基盤となる。
◆ チームを変革する“熱さ”
横浜を本拠地とするこの球団には、どこかクールでスマートな雰囲気があった。村田監督の現役時代も「熱はあまりなかったですね。自分のやりたい野球をみんなでやっている感じでした」と回想する。
しかし村田監督が求めるのは泥臭く感情を剥き出しにする”熱さ”。巨人に移籍した際は「主力選手でも状態が悪いときは進塁打に徹するなど、チームが勝つためにやっていましたね」。 常勝球団の常識は、カルチャーショックともいえるものだった。
キャンプから約半年間二軍監督を務めて「楽しいですよ」と笑う指揮官だが、その指導は時に熾烈を極める。
「育ってきたなと思える選手もいます。けれどもまだまだだなと思う選手に対しては、首根っこを捕まえて、どうなんだお前、それでいいんかっていう話はします。『俺は上に行きたいし、強くしたいし、絶対上に行くと思ってこの今の仕事をやってる。お前にそのついてくる気持ちがないのであれば、一緒に行く気はないからな』とはっきり言います」 。
大切なのはプロとしての心得。「データも大切ですし、振り返りに使うことはいいことです。でも結果がでなかったことの言い訳にしてはいけないんです。自分で考えて動けないと」。球界屈指のデータ解析力を誇るDeNAだが、それ以上に大切なものは執念や自覚。巨人で体感した勝負への厳しさを、若手選手一人ひとりの胸に植え付けようとしている。
◆ 目指すはリーグ優勝
村田二軍監督がこれほどまでに熱く選手と接するのは、一軍の相川亮二監督とともに勝ちたいという強い想い、そしてこの球団への深い愛着があるからに他ならない。
「この仕事って結局はチームが好きだからやっているんですよね。だから帰ってきています」と語る通り、その熱源は純粋なチームへの愛情。
「常日頃から横浜スタジアムでどう君が活躍するのかを考えてやれ」。
選手たちを鼓舞し続ける熱血指揮官は、ひとつの夢を思い描く。「将来はみんなと一緒にリーグ優勝して、ハワイ旅行に俺は行きたい」
若い選手たちがファームで同じ育成方針のもと、同じ考え方を共有して育っていけば、それは数年後の確固たるチームの基盤になる 。熱き指揮官のイズムを胸に、一軍の舞台で主役へと躍り出る若き力が、これからのベイスターズの歴史を作っていく。
取材・文 / 萩原孝弘