『プロ野球スピリッツ2026』

 プレイステーションのゲームソフトディスク版の生産が、2028年1月をもって終了することが発表された。すでにディスク版の販売はダウンロード版の8分の1にとどまっているという。これも時代の流れだが、やがて誕生日やクリスマスのキッズの枕元に置かれるゲームソフトとか、通販で予約したソフトが発売日に届くのか頻繁にポストをチェック的な風景も過去のものになるだろう。

 あと何度、プレステ新作をディスクで買えるだろうか……と思いつつ、7月16日発売のPS5『プロ野球スピリッツ2026』(コナミデジタルエンタテインメント)ディスク版を購入した。前作はパッケージのメインビジュアルはNPB12球団の選手のみだったが、今回の中央には大谷翔平が登場。ドジャースではなく、日本代表ユニフォームの大谷だ。そのデザインからも伝わってくるように、プロスピ2026は「WBCモードに全振り」の新作である。

 2026ワールドベースボールクラシックモードを選択すると、アメリカ、ドミニカ共和国、ベネズエラといった各国のメジャーリーグのスター軍団が実名で収録されている。米国のジャッジやスキーンズ、ドミニカのタティスJr.やゲレーロJr.、ベネズエラのアクーニャJr.といった豪華な面々がプロスピベースで動くのは感動的ですらある。

 日本代表チームは現在のメンバーも収録されているが、2006年、2009年、2023年と歴代の優勝チームも登場する力の入れようだ。王貞治監督が率いる記念すべき第1回大会の2006年チーム、原辰徳監督が「本当にお前さんたちはねぇ強い侍になった!」と絶叫した2009年侍ジャパンの中心選手は、もちろん野手はイチローで、投手は松坂大輔である。06年チーム対09年チームで対戦すると、平成の名勝負「松坂vs.イチロー」が再現できてしまう。もちろん「全盛期の松坂vs.2023年の大谷」や「投手・大谷vs.32歳のイチロー」のガチンコ対決という夢のマッチアップも可能である。ちなみに歴代の日本代表優勝チーム同士でCPU対戦させると、毎試合のように僅差の接戦になる。

 2026WBC全47試合分の実際の名シーンを完全再現してミッションクリアを目指す「SCENARIO」モードも実装されており、各国の熱戦が追体験できる。なお日本代表チームのエディットも可能だが、選手の入れ替えを行なった場合、架空のユニフォームデザインに変更される仕様となっている。今季ブレイクした前田悠伍(ソフトバンク)や浦田俊輔(巨人)といった若手選手を一足早く代表入りさせ、世界の強豪たちとの武者修行に励むのも、近未来の侍ジャパンシミュレートとして興味深い。

 本作は間違いなく、「史上最高のWBCゲーム」だと断言できる。これだけで買いだ。ただ、プロ野球ファンとしては妙な寂しさもある。正直に書くと、WBCモードやMLBのスター選手の再現に力を入れすぎた結果、NPBのゲームモードは、これなら選手データアップデートで良かったんじゃ……と愚痴りたくなるほど前作からの大きな変化はない。巨人ベンチの橋上監督代行は間に合わせているが、驚くべきことに「2026」と表記しながら、バンテリンドームのテラス席「ホームランウイング」が存在しないのだ。WBC決勝の舞台ローンデポ・パークを初収録する一方で、中日の本拠地は前年の状態のままである。プロスピをディスクで買うユーザーは、普段スポーツニュースで「メジャーリーグも大谷も嫌いじゃないけど、日本のプロ野球をもう少し報じてくれよ」と愚痴っているコアな野球ファンも多いはずだ。ペナントレース完全再現ガチ勢は、早期の球場アップデートを信じて待つしかない。

 国内No.1リアル系野球ゲームだからこそ、実現できた渾身のWBCモード。同時に昨今のメジャー人気に押される、国内プロ野球の立ち位置の難しさを痛感させられるNPBモード。やはり野球ゲームは、その時代を映す鏡だ。だからこそ、ディスク版で、貴重な資料として手元に残しておきたいと願うのである。

文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)

この記事を書いたのは

中溝康隆

1979年埼玉県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。2010年開始のブログ『プロ野球死亡遊戯』が話題に。『文春野球コラムペナントレース2017』では巨人を担当し初代日本一に輝いた。主な著書に『プロ野球死亡遊戯』(文春文庫)『令和の巨人軍』(新潮社)ほか。新刊『巨人軍vs.落合博満』(文藝春秋)も絶賛発売中! 

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