1998年4月に発売された『ワールドスタジアム2』

 これは横浜ベイスターズが、マシンガン打線で38年ぶりの日本一に輝いたシーズンに出た野球ゲームだ。

 レトロゲームショップで、28年前のプレイステーション用ソフト『ワールドスタジアム2』(ナムコ)を見かけて、懐かしくなり480円(定価5800円)で購入した。シリーズ累計1000万本超えのファミスタで知られる伝統のナムコ野球ゲームの時系列的には、1996年2月29日発売のスーパーファミコン『スーパーファミスタ5』、1996年7月26日のプレステ『ワールドスタジアムEX』、1997年11月28日のニンテンドウ64『ファミスタ64』、そして1998年4月29日のプレステ『ワールドスタジアム2』となる。『ワールドスタジアム』はEXでプレステ版特有の操作感を目指すもことごとく不評で、あえて2でファミスタに近い操作性に戻した、いわばナムコの野球ゲーム原点回帰ともいえる一作である。

 1998年は年間563本ものプレステソフトが発売され、ワースタ2のソフト同梱チラシで紹介されるのは、同時発売の「ネジる楽しさ、勝つ喜び」アナログコントローラ・ブラックネジコンと『鉄拳3』公式ガイドブックだ。同年には、『スーパーライブスタジアム』(アクエス)や『プレイスタジアム3』(バンプレスト)といったフルポリゴンの野球ゲームが立て続けにリリースされていた時期でもある。

 ゲームモードは135試合制のペナントレースはもちろん、自分だけのオリジナル選手を打撃や守備テストを受けて15分間で手軽に作れる「分身くん」。オリジナルの応援曲を作れる「作曲くん」といったモードが搭載されているが、本作の最注目は「戦国! 国盗(くにと)リーグ」である。

 『一九九X年、混迷する日本プロ野球界。リーグ制は崩壊し、各球団は勢力拡大の争いをくり広げていた。力無きものは滅びるのみ。この乱世を制し、天下を統一するのはどの球団であろうか……』

 えっ、ナベツネさんの演説? 球界再編の予言? とオープニングの説明字幕で一瞬緊張感が漂うが、このモードは、実在の12球団から1球団を選び試合をしながら領地を広げて全国統一を目指していく。かがり火が囲む野戦球場で試合をして、勝った方がその領地をもらえるわけだ。城(本拠地)を攻め落とせば、特殊強化アイテムを入手。他球団を滅亡させると、そのチームの選手をひとり入団させることができるのだ。

 さっそく長嶋巨人を選択して国盗リーグをスタートさせてみたが、序盤は地理的に本拠地が近いチームとの潰しあいになる。主にヤクルトと西武との連戦が続くが、この前年に両チームはリーグ優勝しているため、やたらと強い。本塁打王のホージーや古田敦也を擁するヤクルト打線、マルティネスや松井稼頭央のいる西武スタメンは強力で、さらに近隣の神奈川ではマシンガン打線のベイスターズも猛威を振るっている。気の毒なことに当時東京ドームが本拠地の日本ハムは、11日目に残り領土「1」の崖っぷち。西側ではブルーウェーブがホークスとカープの草刈り場となり、序盤に消滅危機も、やがて持ち直し、振ればヒットのイチローが中心となり阪神の城を制圧してしまった。

 「人材発掘」というコマンドもあるが、戦い続けていると「せっしゃをやとっていただきたい」と野武士からの売り込みもある。36本塁打のスラッガー忠次、打率.391の打てるキャッチャー家康らを雇い、全国統一を目指すのだ。日本地図で東北や北海道に球団がないことに時代を感じつつ、終盤は周囲にスター選手の強奪に成功した強豪球団しか生き残っておらず、まさに戦国時代さながらの仁義なき領土の取り合いが展開されることになる。

 シンプルなのに中毒性が高く、オプションで1試合1イニング制も設定可能でお手軽に遊べる「戦国! 国盗(くにと)リーグ」モードは好評で、ワースタ3で「幕末国盗リーグ」、5で「ぞくぞく海賊リーグ」と細部を変え定番化していく。40万本以上売り上げた『ワールドスタジアム2』だったが、当時そこまで話題にならなかった記憶がある。

 90年代後半の野球ゲーム界は、パワプロシリーズがプレステ、セガサターン、ニンテンドウ64と各機種で遊ばれる断トツのトップシェアを誇り、1998年6月にはサッカー日本代表が念願の初出場を果たしたフランスワールドカップが開催され、直前の5月には『FIFA ロード トゥ ワールドカップ98』(エレクトロニック・アーツ・スポーツ)、『ワールドサッカー 実況ウイニングイレブン3』(コナミ)といったサッカーゲームが立て続けに発売され人気を博した。特にプレステのウイイレ3は75万本のヒットとなり、この頃から、男子学生の間では誰かの部屋に集まると、ウイイレ対戦で盛り上がる世紀末のコミュニケーションツールとして定着していく。

 いわば1998年4月発売の『ワールドスタジアム2』は、パワプロ全盛期とウイイレブームに挟まれた不運の野球ゲームでもあった。だが、そのファミスタから継承した操作性の良さ、老若男女にやさしいゲームバランスは、令和の今遊んでも、違和感なく楽しめる。「パワプロか、パワプロ以外か」の時代に、プレステだけで5本もの作品をリリースした『ワールドスタジアム』シリーズは、あの頃の野球ゲーム戦国時代をたくましく生き抜いた、忘れられない名作なのである。

文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)