オリックスの3年目右腕が、劣勢での中継ぎで存在感を示している。
「毎試合、死に物狂いでやっています。今年ダメならクビだと思っているんで。それがいい結果になっているのかなと思います」。権田が胸に秘めた思いを、静かに言葉にした。
権田は、上田西高(長野)、明星大、TDKから2023年ドラフト7位でオリックス入り。同期入団の高島泰都投手、古田島成龍投手が1年目から1軍で活躍したのに対し、権田はシーズン終了直前の10月1日に1軍登録されたものの、登板機会は巡ってこなかった。捲土重来を期した昨季は、9試合登板にとどまった。
3年目の今季は開幕1軍を逃したが、ファーム12試合で防御率0.69が評価され、4月17日に1軍昇格。しかし、2戦目のソフトバンク戦(4月28日、京セラドーム)で1‐4の9回から登板、1死から連打を許し栗原陵矢選手に3ランを浴びて、翌日に選手登録を抹消された。
社会人出身の26歳。もう後がないという危機感は強く、試合に臨む準備から見直した。「去年もああいう納得のいかない成績だったので、何かを変えないといけないなと思って。練習からやることをやって、ちゃんと準備をしてダメだったら仕方がないと」。これまで手を抜いていたわけではなかったが、ブルペン担当の比嘉幹貴投手コーチは「今までできていなかったわけではないんですが、しっかりと(試合展開の)先を見ることができるようになったり、(結果的に)無駄な準備になってしまうこともあったりするのですが、それも怠らず、しっかりと準備をしてくれています。ちゃんとゾーンに勇気を持って投げられるようになっていると思います」と変化を感じ取る。
5月15日に再昇格を果たし、以後、6月末までの10試合で無失点。すべて負けパターンと呼ばれる劣勢での登板だが、6月9日の交流戦、ヤクルト戦(同)では杉本裕太郎外野手のサヨナラ打で勝ち投手に。この試合では1‐3の8回から登板し、打者6人を無安打、2奪三振に抑えたことで味方打線の奮起を呼んだ。
7月2日の日本ハム戦(エスコン)では、先発投手が4連続本塁打を浴びた直後から登板。3イニング目に1点を与えたものの、序盤のゲームは作った。「試合の流れが悪かったので、先頭打者を取ることだけを考えていました。(登板が)急過ぎてあまり緊張はしませんでした」と振り返る。
再昇格後の11試合(14イニング)で、特筆すべきは先頭打者への対応だ。打者14人に対し、走者を許したのは四球での一人だけ。また、奪三振は16でゴロアウトも多い。「先頭打者は意識しています。三振やゴロは意識していませんが、変化球(で打ち取る)ピッチャーなんで、そこは失敗しないように心掛けています」と明かす。16.20あった防御率が2.30まで一気に改善することができたのは、打者と向き合い勝負ができているからなのだろう。
勝ちパターンで逃げ切る中継ぎ投手に比べ、ビハインドの場面で登板する投手の評価は必ずしも高くない。それでも失点を防ぐことで勝ちにつなげたり、相手打線の勢いを止めて翌日の試合を戦いやすくしたりするなど、果たす役割は大きい。「それが僕の役割だと思っています。勝ちパターンで投げたいとかという気持ちはあまりなくて、負け試合でもチームには貢献できるし、勝ちにつながって貢献できることもあります」。与えられた役割を全うすることだけを考えて、今日も準備を怠らない。
取材・文=北野正樹