野上士耀(のがみ・しきら)捕手の急逝を受け、自主練習に切り替えていたオリックスの2軍は10月3日、大阪舞洲の球団施設で全体練習を再開した。球団関係者によると、7日から始まる「みやざきフェニックスリーグ」までに、外部のカウンセラーによる選手らのメンタルケアを行う予定。チームを預かる風岡尚幸2軍監督は、前日の自主練習で最後までバットを振っていた野上さんとの会話や表情を振り返り、「信じられない思い」と沈痛な表情で語った。
4日ぶりの全体練習。午前9時半、2軍選手や1軍の残留選手がグラウンドに集合し、佐藤広・育成グループ長から野上さんの急逝について説明などを受けた後、全員で黙とうを捧げた。風岡監督は「彼もここまで精一杯、生きてきて頑張ってきた矢先なので、本人も悔しいと思うし僕らも同じ思い。選手は野上君の分も野球にぶつけて頑張ってもらいたい。(亡くなる前日の自主練習での)19歳の輝いていたあの笑顔は忘れない。それだけに信じられないです」と、早すぎる別れを悲しんだ。
風岡監督によると、亡くなる前日の9月29日、個別練習に最後まで取り組んでいたのが野上さんだった。全体練習後の捕手練習を終えた午後3時ごろ、野上さんは室内練習場で打撃マシンと向き合っていたという。「毎日、コツコツとやることが大切だよ」と声を掛けた風岡監督に、野上さんは「(今)ちょっと調子がいいのでやりたいんです」と笑顔で答えたそうだ。「自分でやってうまくなるのがこの世界。それは、自分に任せるよ」が、最後に交わした言葉だった。
「僕は彼のバッティングスタイルがすごく好きだったんです。高校生の割に、ボールに向かっていく姿勢というのが、今のうちの若いメンバーにはなかなかないタイプなんです。身体はちっちゃいんですけど。最初は出る機会が少なくて途中で代打で使ったりしたんですが、他の人から『えっ(ここで使うの)』って言われたこともありました。僕は、これからを見といてと言ってたんです」。個人的と断りながらも、野上さんの打撃に将来性を感じていた分、最後まで居残って練習する姿に「頑張っているな」という思いで声を掛けたのだろう。
「プロ野球の世界に足を踏み入れて、最初はうまくいかないことが多くつまづくことも多かったんですが、1年間やってきて環境にも慣れ、笑顔も出てきて少しずつ自分の意見も言えるようになってきて、これからだっただけに、本当にもう残念でしかありません。あれだけ目を輝かせ『明日もやります。頑張ります』と言ったのを聞いていただけに信じられない思い。すごい笑顔で、輝いていましたから忘れられないですね」と風岡監督。
2軍選手らは、7日から宮崎県内で行われるフェニックスリーグに参戦する。「来季に向けて(チームは)始まっています。監督として1年目、彼も1年目。非常に残念でつらいです。でも、チームの長である以上、歩みは止められません」。大きな悲しみを乗り越え、野上さんの思いを背負いチームは前に進む。
取材・文=北野正樹