オリックスの育成新人シャピロ・マシュー一郎投手が、けがなく1年を完走しようとしている。1年目での支配下昇格は逃したが、クローザーとして11セーブを挙げ2年目の支配下昇格に照準を定めている。
「自信をつけるために日々過ごしている、という感じですね」。マシューが間もなく終わるシーズンを振り返った。
東京都出身。國學院栃木高、國学院大から入団した独立リーグ・日本海リーグ「富山GRNサンダーバーズ」では、25年に14試合に登板し4勝0敗で前後期優勝に貢献。同年の育成ドラフト2位でオリックスに入団した。193㎝、105kgから角度のある最速153キロのストレートとスプリットなどを武器にする右腕で、ファームで2度目の登板となった4月18日のソフトバンク戦(タマスタ筑後)からクローザーに抜擢された。6月末から8月末まで、練習試合やフレッシュオールスターを含めた16試合連続して失点0を積み重ね、支配下入りをアピールした。
チーム事情もあり1年目での支配下昇格はならなかったが、ファームで23試合に登板。ダウリ・モレッタ投手(阪神)の15セーブに次ぐ11セーブを挙げ、チームの西地区2位に大きく貢献した。
「僕は、早い段階から(今年の支配下入りは)ないのかな、と思っていましたから、落胆はしませんでした。とにかく目の前の試合を大事にして、やるしかないと考えていました。だから(支配下入りを逃し)気持ちが抜けるかなとも思ったのですが、抜けずにここまで来ることができました」と振り返る。
マシューには、一つの考えがあった。「一番、意識したのは体を作ってプロ野球に慣れることでした。独立リーグを経験していますが、試合数は全然違いますし、登板ペースも違います。例えば、夏場はやはり(調子が)落ちてくる時期なので、この体の状態ならこういう感じなんだな、と1年を通してやってみないとわからないことがあるんです。2軍では結果も大事ですが、いろいろ試して自分を見詰めるということも大事にしています」。気持ちを切らさなかったのは、翌年の支配下入りに向けての準備期間にするという思いからだった。
1年間、けがなく戦力としてあり続けたのも、大きな収穫となった。「高校時代にひじを疲労骨折し、大学ではひざを手術しました。トレーナの方々やコーチの方々としっかり話し合いながら投げることができていることが一番いいと思います」
シーズン前から、小林宏育成チーフコーチと瞬間的に出力を上げる練習に取り組んできた。目いっぱい投げ込むのでなく「極限まで力を入れず、瞬間的に力を入れるんです」。「打者から『力感がない』と言われるのが一番、うれしいんです。真っ直ぐとわかっていても空振りを取れるピッチングが自分の良さでもあるので、そこをより良くしようとしています」と明かす。リリース直前まで力を入れない“脱力投法”は、けが防止にもつながっているという。
練習試合を含めた今季の登板数は、「40」を超える。23日の阪神戦(SGL)では10‐10の6回2死2塁から救援し、2回1/3を被安打0、奪三振2、無四球、無失点に抑えた。「育成選手なんで、投げる機会があればいくらでも投げます。練習はきついので、試合の方が楽しいですね。マウンドに上がったら、めっちゃ楽しいです。3月初めにファームで投げさせてもらってから、確実に成長していると思います。でもすごい人はもう最初から突き抜けているので、自分はまだまだだと思っています。『これだったら勝負できます』と言えるように毎日、頑張っていきます」。投げる喜びを自信に変え、1軍のマウンドを目指す。
取材・文=北野正樹