先頭打者から4連続本塁打からの捲土重来を期すオリックス・佐藤一磨(写真=北野正樹)

「常に誰かが声を掛けて下さり、一人になることはありませんでした。もう、感謝しかありません」。NPB史上初の屈辱から1週間、オリックスの佐藤一磨投手が静かに口を開いた。

 7月2日の日本ハム戦(エスコンフィールド)で、先発した佐藤一は、先頭打者からの4連続本塁打を浴び、1死も取れぬままマウンドを降りた。「単純に、打たれた球は甘かったんです。2日前のブルペンでの調整もその日のキャッチボールからいつも通りで、状態は悪くなかったんです。その中であの結果だったので、整理もつかずしんどかったですね」

 調子が悪くて打ち込まれたのなら理由もつくが、言い訳もできない状況だけにベンチで「もう終わった。もう無理だな」と自分を追い込んだという。「着替えもしなかったし、(体をケアしてもらうために)トレーナー室にも行かなかったんですが、厚澤さん(和幸投手コーチ)が来て『(体の)チェックはした? (結果は)関係ないからね。明日も投げる可能性はあるのだから、いつも通りのルーティーンをこなして』と声を掛けて下さいました。次の登板のことより、もう終わりというのが一番の感情だったので、そこに居るだけでした。次のための行動は何一つ考えていなかったんです」

 失意のままホテルに戻り、ルームキーを受け取った直後に携帯電話に着信が。2軍で若手を指導する小林宏育成チーフコーチからだった。「世界初らしいな。いくところまでいったんだから、これ以上は沈まない。いつか笑い話にできるようになればいいんだ。ここからが大事なんだよ」。育成選手当時から2軍監督として指導を受けてきた“恩師”の言葉に、前を向く勇気を与えてもらった。球場からホテルへの移動時間も計算した上で電話をかけてきてくれた配慮が、痛いほど身に染みた。

 登録抹消で2軍落ちも予想されたが、移動日なしで中継ぎ要員としてブルペン入りした翌日の西武戦(ほっともっと神戸)では、岸田護監督から「昨日はどうだったの」と優しく声を掛けてもらった。「どんな状態でも、まずはボールを扱えることが最低条件」との助言も受け、「キャッチボールからもっと意識を高く取り組むことが大事だと再認識しました」という。

 ロッカーでは、中川圭太選手が「大丈夫かぁ。もう(気持ちは)戻った?」と笑顔で話し掛け、エスピノーザ投手は携帯電話の翻訳機能を使って何かを伝えようとしてくれた。「普段はあまり話すことのない圭太さんが、親身になってくださって。そういう一言でずいぶん救われました。エスピさんはスペイン語だったと思うんですが、翻訳ができませんでした。2軍にいる時からよく声を掛けてもらっていましたから、うれしかったですね」。エスピノーザとは、1週間後に大阪・舞洲の球団施設で再会したが、ロッテ戦への移動時間もあり「今度、ゆっくりと話そう」と約束したという。

 世の中の温かさも、改めて知った。バファローズファンで知られる漫才コンビ「ザ・ぼんち」の里見まさとさんは、試合中の7月2日午後7時18分に自身のXで「オリックス 佐藤一磨投手 負けるな! チームには迷惑をかけたけど、最高の経験をしたね。バファローズを見てきた私も初めてです。悪いスタートですが、これ以上あなたにとって悪いことなどない。これからの佐藤投手を応援を込めてみています。勝利して笑っている佐藤君を待っています」と書き込んだ。

 また、当日の試合をテレビで解説していた元日本ハムの岩本勉さんは、自身のYouTubeで「僕も3連発を3度も経験したが、笑い話にできるような成績を叩き出してやろう思ってマウンドに立ち続け、開幕投手も任されるようになった。笑い話にできるような野球人生のストーリーを作るのが、あなたのミッションですよ」と自らの経験を踏まえて激励してくれた。「1試合を作る先発投手なので、『何をしているんだ』とか、あざけり笑う人がいて当然です。お二人とも面識はないのですが、そんななかでありがたい限りです」と佐藤一。

 努力を怠らずひたむきに練習を重ね、5年かけて支配下をつかみ初勝利を挙げることができた。「4連発」も笑い話になる日がくる。捲土重来の新しいストーリーは、始まったばかりだ。

取材・文=北野正樹

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北野正樹

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