今季104敗したチームで、12勝を挙げた投手がいる。
ロッキーズの菅野智之だ。ナ・リーグ西地区最下位に沈んだチームで、36歳の右腕は29試合に先発し、12勝12敗、防御率5.37。チームトップの154回1/3を投げた。
1年目から2年連続の2桁勝利は立派の一言だが、いまのMLBで「12勝したから好投手」と評価するのは少々乱暴でもある。勝利数は打線の援護や救援陣にも左右されるからだ。実際、菅野の防御率5.37は決して褒められた数字ではない。
では、104敗したチームで記録した12勝には、どんな意味があったのか。
ひとつ見逃せないのが、「5回」を投げ切った試合数だ。
先発投手が勝利投手になるには、原則として5回を投げ終える必要がある。一方で、近年のMLBでは先発投手の仕事量そのものが減っている。
『Baseball-Reference』によると、先発投手の1試合平均投球回は1996年の6.0回から、2006年は5.8回、2016年は5.6回と減少。今季は5.0回まで短くなった。30年前なら当然だった「6回まで投げる」が、いまではそうではなくなっているのだ。
そのなかで菅野は29先発のうち24試合で5回を投げた。到達率は82.8%。今季20試合以上に先発したメジャー120投手では41位タイだった。
決して突出した順位ではないが、防御率3点台の今永昇太(カブス)の到達率が84.4%だったといえば比較しやすいかもしれない。
ちなみにロッキーズで2桁勝利を挙げた投手は、2021年に12勝したヘルマン・マルケス以来5年ぶり。104敗したチームで12勝に届いた背景には、29先発のうち24度で5回以上を投げた積み重ねがあったことは間違いない。
シーズン途中には、現地でも一定の評価を受けていた。6月にロッキーズ専門サイト『Purple Row』が実施した読者調査では、回答者の約3分の2が2027年も菅野を残すことを支持していた。
しかし、シーズン終盤は苦しんだ。最後の7先発では0勝6敗、防御率7.57と大きく失速してシーズンを終えている。
高い防御率にはもちろん本拠地クアーズ・フィールドも影響していただろう。同球場は、標高約1600メートルに位置し、投手不利の球場として知られる。ただ、菅野はホーム防御率5.13、アウェー5.63。単純に「クアーズだから防御率が悪化した」と説明することもできない。
10月11日には37歳となり、今オフにはFAを迎える菅野。6月時点では残留を望む声も少なくなかったが、その後の失速も含め、ロッキーズに限らず再契約のオファーが出されるかは不透明だ。
防御率5.37だけを見れば、成功したシーズンとは言い切れない。12勝だけを取り出して高く評価するのもまた少し違う。
それでも、29先発のうち24試合で5回以上を投げた事実は残る。104敗を喫したチームで12勝を挙げた背景を考えるうえで、この82.8%という数字は無視できない。
華々しい数字ではないが、菅野のメジャー2年目を振り返るなら、「12勝」という結果だけでなく、そこに至るまでの登板内容と継続性もあわせて見る必要があるのではないだろうか。
文=八木遊(やぎ・ゆう)