オリックスの育成2年目の田島光祐捕手が、2023年首位打者の頓宮裕真選手のアドバイスで課題の打撃を磨いている。
「技術はもちろんなのですが、(打撃に対する)考え方を教わりました。もうやるだけなんで、しっかりと準備をして打席に立ったら、バットを振るだけだと考えています」。田島光が前を見据えた。
田島光は岐阜・各務原市出身。龍谷大平安高(京都)の3年夏の甲子園に「6番・捕手」で出場、プロを目指して大学を中退し独立リーグのルートインBCリーグ、「信濃グランセローズ」に入団した。2024年は主将として日本独立リーググランドチャンピオンシップ初優勝に貢献。同年の育成ドラフト5位でオリックス入りした。
「捕手らしい捕手」というのが、指導者の評価だ。担当スカウトで球団職員の匠政博さんは「投手の特徴を生かしたリードができ、守備の要としてチームもリードできる捕手」と評価した理由を説明する。一方、「(投手に対する)尊敬の気持ちを持っているというんですか、ピッチャーを立てるというか、そのピッチャーでどうゲームを成り立たせていくかというところを感じますね。いまどき珍しいですね、ああいう感じの選手ってなかなか入ってこないんじゃないですか」というのは、現在、指導にあたる飯田大祐・育成コーチ。コミュニケーションも含め、投手のベストパフォーマンスを引き出すため謙虚になって努力を重ねる捕手としての姿勢を高く評価している。
1年目は2軍戦で45試合に出場し、113打数18安打、打率.159にとどまった。出場機会が限られる育成選手として、アピールするには打撃向上が急務だった。そこで取り組んだのが、秋季キャンプでの「1日1000スイング」だった。捕手としての練習だけでもハードワークの中、「守備は少し成長したと思うので、打撃に課題を置いてやりたい」とバットを振り込んだ。2年目の今季は、30試合に出場し、78打数25安打、12打点、打率.321。4月26日の阪神戦(安芸)では中堅へ本塁打も放ち、長打力もアピールした。「数じゃないと思いますが、やったという自信にはつながっていると思います」と田島光。
技術以上に打撃へのアプローチを変えてくれたのが、頓宮の存在だ。オフに「自主トレを一緒にやろうか」と誘ってもらった。数回程度だったが、打撃面で貴重なアドバイスを受けることができたという。「打席で当てにいかない、ということを教えてもらいました。(投手にフォームを)崩されようが、振るということを意識しなさいと。受け身にならず、どんどん攻めていこうとも。また、チームプレーの作戦でも自分の形を変えずにやった方がいいと」。数少ないチャンスを生かすために結果を求めがちだが、積極さを失わず自分のスタイルを確立することの大切さを学んだ。「やはり、打ってみないとわからないことがあるんです。振ったからこそ結果が悪かったんだと、プラス思考で考えることができるようになりました」と明かす。
頓宮はオープン戦で右ひざを痛めて戦列を離れているが、田島光の打撃を気にかけてくれているそうで、「ナイスバッティング」とLINEで激励してくれるという。育成選手として出場機会は限られ、好調を維持することは難しいが、「それが僕らの立場。与えられたチャンスの中で結果を出さなくてはいけないのが、育成選手なんで」と立場はわきまえている。
「休もうと思っても、10分でも15分でもバットを振ります。長い試合が終わった後、しんどくても今年1年はやり続けると決めています」と田島光。「楽しいことですか? ないです。野球のために過ごすのは当たり前なので。そういう積み重ねが大事だと、頓宮さんからも言われています。毎日やり続けることで気付くことがあります。自分の中に引き出しができて、おかしいなと思っても戻るところができたんです」。日焼けした表情に、自信と自覚がみなぎっている。
取材・文=北野正樹