DeNA・浜地真澄(撮影=萩原孝弘)

◆ 再起を期すリリーフ右腕

 阪神時代、中継ぎとして眩い光を放った浜地真澄。しかし、新天地・横浜で飛躍を誓った移籍初年度、彼を待っていたのは非情な現実だった。悲鳴を上げた右肘にメスを入れ、リハビリの先にあったのは育成契約という名の再出発。一軍の重要な戦力になることを見据える背番号052は今、確かな足取りで“あの場所”への帰還を目指している。

 キャンプ前には「極力早く」と支配下への思いを明かしていた。その言葉通りファームのマウンドでは堂々たる姿でここまで9試合で2失点とアピールを続けている。

 だが本人の言葉は冷静そのもの。「一軍でイケると思われたら支配下になるのは当然。呼ばれないということはまだやらなければならないことがあるんです」

 マウンド上の数字にフォーカスすれば、復活に向けた視界は明るいように見える。事実ストレートの球速も150キロを超え、クリーニング手術を受けた右肘も「不安はないです」と言い切る。

 だが、自身の感覚は誤魔化せない。生命線であるストレートの質の向上を目指し、球速も上がってきているが、術後の感覚がまだ完全に噛み合っていない。「真っ直ぐの質が良くないというか、安定しないというか…。術後の感覚が今ひとつかなというのが正直なところですね」。

 投げられなかった日々も脳裏をよぎる。「もう一度怪我したらと考えてしまうと…身体がロックしているような気も多少するので、それがボールの質にもつながってきているのかなという気もします」。気持ちと裏腹に、本能的に出てしまう防衛反応。自らとの孤独な戦いを続けている。

 一軍で通算126試合に登板。2022年には52試合に登板し防御率1.14、3勝1敗21ホールドの実績がある。それは一軍の打者のレベルも身を持って知っているということとイコール。

 さらに彼が見つめているのは支配下にただ戻ることではない。「上に行って敗戦処理がしたいわけではないんです。もちろんいい場面で投げたいんです」

 通算33ホールドポイントをマークしたリリーバーとしての矜持とプライド。

 「今でも戦えない訳ではないんですけれども、ぼくも一軍で多少なりとも投げていたので、これならイケるというものがもうひとつ、ふたつ欲しいです。目指している部分を考えると、それがあれば抑えられる確率も上がると思います」。

 しびれる場面で自分の名前がコールされるため、自分への妥協なき問いかけを続ける。

◆ 名伯楽の眼力

 入来祐作二軍チーフ投手コーチも、浜地の苦悩を敏感に察知していた。「投げられるようになっただけでもいいことです」とまずは復帰に安堵する。しかし「去年彼はリリーフですぐに“決着”が付かないことが嫌で、決め球として一生懸命フォークを自分のものにしたくてやっていたんです。けれども肘をやってしまって…」とまず背景を説明しながら、視線を下に向ける。

 故障明けの現在にも「ちょっとづつですが自然な投げ方になっきているとは思いますけれども、本人もまだ気持ち悪いと思っているんじゃないですかね。僕もそう思っています」と復活は道半ばだと説く。

 違和感は名伯楽の目にもしっかりと映っている。「彼は真っ直ぐの質も、コマンドももう少しいいはずなんですよ。その辺は彼ももどかしいでしょうね」

 復活のキーは「彼は真っ直ぐ、スライダー、カット」とキッパリ。「カットはすごくいいですよ。僕は彼の本来のピッチング、得意な球をコツコツと投げ続けていってほしいですね。粘り強く投げていくことが彼の生きる道だと、僕は思っています」。その眼差しは厳しくも優しく再起を願っていた。

 連投やイニング跨ぎなど、実戦復帰へ向けてクリアすべきステップはまだ残されている。そこでいまこそ活かされるのが阪神時代の光と影の日々の糧。「あそこで経験させてもらえたからこそ、いい練習がいまでもできていると思います」。自身の感じるズレを修正し、高みを目指す。この積み重ねが、今の浜地の全てとなる。

 かつての最多登板数と同じ52を背負っていた栄光は今、0をつけた背番号として自身の背中にある。その0を消し去る日はイコール、“勝利への貢献”を果たす、あの頃の勝負師・浜地真澄のリボーンを意味するはずだ。

取材・文=萩原孝弘

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この記事を書いたのは

萩原孝弘

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