開幕から好不調の波がありながら、ア・リーグ最多となる11本塁打を放っている村上宗隆(ホワイトソックス)。メジャーでも自慢のパワーを遺憾なく発揮しているが、いまだ二塁打と三塁打がゼロという事実にも注目が集まっている。
三塁打はともかく、二塁打が出るのは時間の問題だろう。それ以上に村上の成績で際立っているのが、三振と四球の多さだ。村上に限らず、近年、メジャーでは本塁打に加えて三振と四球が増加傾向なのは周知の事実でもある。
しかし、そんな傾向とは対照的な選手も少なからずいる。代表的なのがジャイアンツのルイス・アラエスだ。とにかくバットに当てるのがうまく、打率は高いが、本塁打が少なく、三振と四球も少ない。
そんなアラエスに似たタイプの打者の一人が、ブルージェイズの万能内野手アーニー・クレメントである。
クレメントの今季打率は.321で、ア・リーグ6位(日本時間27日時点、以下同)に位置している。興味深いのが安打の内訳で、36安打のうち23本が単打、残る13本は二塁打(リーグ最多タイ)となっている。まさに村上の「0-0-11」とは対極の「13-0-0」を記録している。
アラエスと同じく、クレメントも三振と四球が少なく、今季はここまで1四球、9三振。これは規定打席に達しているア・リーグの全85人の打者の中でどちらも最少である。22四球、41三振の村上とは、この2つの部門でも対極というわけだ。
今年3月に30歳の節目を迎えたクレメント。そのキャリアを振り返ると、2017年のドラフト4巡目でガーディアンズ(当時インディアンズ)に指名され入団し、2019年までの2シーズン半をマイナーで過ごした。
その間、打率は.280前後を残していたが、長打力に欠け、248試合でわずか3本塁打。それでもシュアな打撃と万能な守備力で、順調なら2020年は3Aで過ごすはずだった。しかし、その年はコロナ禍でマイナーリーグは全休を強いられた。
丸1年の“休養”を経て、クレメントは2021年にようやくメジャーデビューを果たすが、メジャーとマイナーを行ったり来たりの生活。2022年は出場試合数こそ増えたが成績は低迷し、同年の閉幕間際にDFA(事実上の戦力外)を通告され、アスレチックスに拾われた。
その後3か月後にはアスレチックスからもDFAを言い渡されたが、獲得に乗り出す球団は現れず。改めてアスレチックス傘下で再スタートを切ったが、2023年3月に3度目の“解雇”(自由契約)を通告された。
失意の中にいたクレメントを拾ったのが、他でもない現在所属するブルージェイズだった。2023年の開幕直前にマイナー契約を結ぶと、クレメントは3Aで結果を残し、5月にメジャー昇格。その年はメジャーで30試合の出場にとどまったが、2024年に139試合、2025年には初の規定打席到達も果たした。
さらにクレメントがその名を高めたのが、昨年のポストシーズンだ。ワールドシリーズまで歴代最多となる30安打を放ち、打率は.411をマークし、チームに大きく貢献。今年3月にはワールド・ベースボール・クラシックで米国代表入りも果たしている。
今季は様々な打順を担いつつ、二塁を中心に三塁と遊撃も守るなどいつも通りのユーティリティーぶりを見せつけている。開幕から低迷していたチームも、直近7試合で5勝2敗と息を吹き返しつつある。
クレメントは最終的にどんな成績を残すのか。打率だけでなく、三振や四球の数にも注目しておきたい。
文=八木遊(やぎ・ゆう)