MLBの名将ボビー・コックス氏(写真=Getty Images)

 訃報が飛び込んできたのは先週末。ブレーブスなどで監督を務め、通算2504勝を記録したボビー・コックス氏が、84歳で死去した。

 監督として歴代4位の勝利数を記録するなど、メジャーリーグ史に残る名将の一人だったコックス氏。1990年代後半にアメリカで過ごした筆者にとっても思い出深い指揮官の一人だった。

 コックス氏は選手としては全く無名の存在だった。もともとドジャースと契約を結んだが、メジャー昇格には至らず、ブレーブスを経てヤンキースへ移籍後の1968年から2シーズンだけメジャーでプレーした。

 指導者としての道を歩み始めたのは1971年。29歳の若さでマイナーリーグのコーチに就任すると、1977年にヤンキースの一塁ベースコーチとして世界一を経験。その年のオフ、36歳の時にブレーブスの監督に就任した。

 しかし当時のブレーブスは暗黒期の真っただ中。1981年まで4シーズンにわたって指揮を執ったが、勝ち越したのは81勝80敗の成績を収めた1980年の1度だけだった。

 わずか4年で監督の職を解かれたコックス氏だったが、即座にブルージェイズの監督に就任。ここでも1984年まで4シーズンにわたって指揮を執り、4年目にチーム史上初の地区優勝に導くも、ロイヤルズとのリーグ優勝決定シリーズに敗れ、解雇されてしまう。

 3戦先勝制だった同シリーズは、この年から4戦先勝制に変更。3勝1敗とした後にロイヤルズに3連敗を喫し、ワールドシリーズ進出を逃す不運も重なった。その後、常勝軍団を築いたコックス氏だが、ポストシーズンでの勝負弱さをこの時から垣間見せていた。

 ブルージェイズの監督を解任された後、コックス氏はゼネラルマネジャーとして、5年契約でブレーブスに復帰。5年計画を立てると、その間に若手を育成するなど、礎を築いた。GM就任から5年目のシーズン途中には自らを指揮官に据え、再びグラウンドに戻った。

 GMコックス氏がまいた種は翌年の1991年に早くも開花する。7年連続負け越し、3年連続地区最下位だったブレーブスは、25歳の若きエース、トム・グラビンや24歳のジョン・スモルツら投手陣が躍動。MLB史上初めて、前年最下位からの地区優勝を果たし、全米を驚かせた。

 そしてコックス氏率いるブレーブスはそこから2005年まで地区14連覇を達成(ストライキでシーズンを終えた1994年を除く)。その間、ワールドシリーズには5度出場したが、世界一に輝いたのは1995年の1度だけだった。

 1995年の春に渡米した筆者にとって、現地で初めて目にしたワールドシリーズは、投のブレーブスと打のインディアンスの対戦。前評判はインディアンスが高かったと記憶しているが、グラビン、スモルツに加えて、グレグ・マダックスがエースとして君臨していたブレーブスに軍配が上がった。

 当時はカージナルスを応援していた筆者にとって、ブレーブスは憎いくらい強いチームだった。半官びいきの性分で、アンチ・ブレーブス、アンチ・ヤンキースでもあったが、なぜかコックス監督だけは憎めない存在でもあった。

 監督時代に162回の退場を宣告されたという熱血漢はレギュラーシーズンで通算2504勝2001敗と大きく勝ち越すも、ポストシーズンでは67勝69敗。詰めの甘さがどこか憎めない理由だったのかもしれない。

「生涯ブレーブスだったのは、彼(コックス氏)の存在が最大の理由だったかもしれない」(チッパー・ジョーンズ氏)

「私にとって第二の父親のような存在だった」(アンドリュー・ジョーンズ氏)

「GM時代に私をトレードで獲得してくれた。監督がいなければサイヤング賞も取れていなかっただろう」(スモルツ氏)

「彼を一言で表すなら“情熱”だ。試合に対して、選手に対して、そして監督という仕事に対して毎日情熱を持って接していた」(グラビン氏)

教え子たちからは追悼の声が次々寄せられている。

(※ブレーブス専属ライターのマーク・ボウマン氏の記事より)

文=八木遊(やぎ・ゆう)

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