広島連覇の軌跡
広島は優勝マジック『1』で迎えた18日の阪神戦、2-2で迎えた8回一死一、二塁からバティスタがタイムリーを放ち勝ち越し。このリードを8回はジャクソン、9回は中崎翔太が無失点に抑え逃げ切り、歓喜の瞬間を迎えた。37年ぶりにリーグ2連覇を達成した広島。17年シーズンの戦いを振り返る。
エース、守護神離脱も10連勝
3・4月:16勝10敗1分 勝率.615リーグ2連覇を目指し3月31日、本拠地・マツダスタジアムで阪神との開幕戦に臨んだ。開幕投手を務めたエース・ジョンソンは、昨季26試合中24試合でQS(6回3自責点以内)を達成していたが、まさかの3回2/3、7失点でノックアウト。エース・ジョンソンの乱調もあり広島は、6-10で開幕戦を落とした。
翌日5時間24分の熱戦を制し今季初勝利を挙げると、同日から引き分けを挟んで10連勝。この間に、エースのジョンソン、守護神の中崎翔太が離脱したが、先発陣は岡田明丈、九里亜蓮、加藤拓也、床田寛樹といった若手先発陣が好投し、救援陣も今村猛が抑えに回りカバーした。
4月13日の巨人戦、1点を追う9回に松山竜平、石原慶幸の本塁打など一挙7得点を奪い大逆転勝ち。同日に放送された『ニッポン放送ショウアップナイター 巨人-広島戦』で解説を務めた山本昌氏は「99年にドラゴンズで11連勝を経験しているんですけど、それに匹敵しますね」と広島の強さを表現した。
打線では昨季“神ってる”活躍でレギュラーに定着した鈴木誠也が4月25日の巨人戦から4番に定着。4月22日に放送された『ニッポン放送ショウアップナイター ヤクルト-広島戦』で山本昌氏は「昨年はシンデレラボーイ的な感じで来ましたけど、今年は凄みがでてきましたよね」と評価した。
投手陣が苦しむも月間勝ち越し
5月:15勝9敗0分 勝率.6255月2日からの中日との3連戦で、3日の試合で中村祐太がプロ初勝利を挙げるなど3連勝したが、5日の阪神戦から9日のヤクルト戦にかけて4連敗。5月6日の阪神戦では、5回表まで9-0でリードしていたが、5回に1点、6回に7点を奪われ1点差に迫られると、7回に3点を失い9-12で逆転負けを喫した。
投手陣が打ち込まれる試合が目立ち、5月12日に放送された『ショウアップナイタープレイボール』に出演した野村弘樹氏は「ジョンソンもいなくて、床田も抜けています。昨日(5月11日に)福井が投げましたけど、ピリッとしません。攻撃力はあるんですけど、それ以上に失点した場面が目立つ」と不安視した。
それでも、中崎が復帰した5月23日のヤクルト戦から投手陣が安定し7連勝。5月のチーム防御率を見ても5月22日までチーム防御率は4.48だったが、中崎が復帰した23日以降のチーム防御率は0.98と改善された。
打線は5月リーグトップのチーム打率.285、139得点。5月27日に放送された『ニッポン放送ショウアップナイター 巨人-広島戦』で解説を務めた山崎武司氏は「6番にエルドレッドみたいなバッターがいると、チームは強い」と分析した。
バティスタが交流戦で大ブレイク
6月:14勝7敗0分 勝率.667育成選手だったバティスタが6月2日に支配下登録されると、翌3日に一軍登録。同日のロッテ戦に代打で登場し、初打席初本塁打。さらに翌4日のロッテ戦でも、代打本塁打を放ち、NPBの一軍公式戦では史上3人目となる初打席から2打席連続本塁打となった。バティスタは6月7日の日本ハム戦で、来日後初めて1試合2本塁打を記録するなど、交流戦期間中に大ブレイクした。
主力では3番の丸佳浩が、6月は月間打率.402、6本塁打、22打点の大暴れ。6月は21試合に出場したが、無安打に終わった試合はわずかに4試合だった。
投手陣も開幕からリリーフを務めていた薮田和樹が、5月30日の西武戦から先発に転向。6月は6日の日本ハム戦、13日のオリックス戦の2試合に先発し、いずれの登板でも白星を手にした。特に13日のオリックス戦では、8回を3安打11奪三振無失点に抑える快投だった。
咽頭炎で離脱していたジョンソンも、6月9日の楽天戦で一軍復帰。同日の楽天戦で、6回を投げ2失点に抑え今季初勝利を手にした。
新井さんが魅せた大逆転劇!
15勝7敗1分 勝率.6827月7日のヤクルト戦は、“逆転の広島”らしい勝ち方だった。5点を追う9回、バティスタ、菊池涼介の本塁打、松山竜平のタイムリーで2点差に迫ると、代打で登場した新井貴浩が値千金の逆転3ランを放った。その裏、今村猛が、1番から始まるヤクルト打線を三者凡退に抑え試合を締めた。
前半戦は2位・阪神に8ゲーム差をつけて首位で折り返し、7月18日に放送された『ショウアップナイタープレイボール』に出演した大矢明彦氏は「カープは油断だけですよ。出た人が若手も頑張っていますし、非常にいい状態でゲームをやっている」と太鼓判を押すほどの強さを誇った。
後半戦に入っても、相手の隙を見せず強さが際立った。7月25日の巨人戦では、0-0で迎えた8回一死二塁から代打・西川龍馬が放った一、二塁間のゴロを、巨人の二塁・マギーが弾き、もたついている間に二塁走者の安部友裕が一気に生還した。
プロ野球解説者の山崎武司氏は「二塁のマギーがゆっくり動いているんですよ。その辺を三塁コーチャーの河田コーチは見逃しませんでした」(同日に放送された『ニッポン放送ショウアップナイター 巨人-広島戦』)と広島の走塁を絶賛。
翌26日の巨人戦でも、5回二死一塁から鈴木誠也が放った打球を、二塁のマギーが後逸。打球がセンター方向に転々としている間に、一塁走者の菊池涼介が躊躇することなく、一塁から一気にホームインした。山本昌氏は「あのプレーでホームインを許したのは初めて見ましたので、菊池選手のナイス走塁だと思いますね」(同日に放送された『ニッポン放送ショウアップナイター 巨人-広島戦』)とべた褒めした。
まさかの3試合連続サヨナラ負け…
8月:12勝13敗2分 勝率.4807月まで圧倒的な強さを見せてきた広島に、やや疲れが見えた。その原因について、8月6日に放送された『ニッポン放送ショウアップナイター DeNA-広島戦』で解説を務めた田尾安志氏は「外の球場での試合が多い。27試合中9試合しかドームで試合がない。大変だと思いますよ」。今年は例年に比べて涼しい夏となったが、移動に加え外の球場での試合が多かったことも選手に負担になっていたといえる。
また8月に入ってすぐに、松山竜平と安部友裕が故障の影響で、早期復帰したがスタメンから外れるということもあった。なかなかベストメンバーが組めない中で、開幕から代打で存在感を見せた西川龍馬が、8月12日の巨人戦でエース・菅野智之から一発を放ち、この1点のリードを守り切り勝利した。8月15日に放送された『ショウアップナイタープレイボール』に出演した山本昌氏は「(西川は)安部選手の穴を全く感じさせないですよね」とその働きぶりに感心した。
西川が存在感を見せた一方で、チームは厳しい戦いが続いた。8月22日から24日に行われた敵地・横浜スタジアムでのDeNA戦では、まさかの3試合連続サヨナラ負け。24日に放送された『ニッポンショウアップナイター DeNA-広島戦』で解説を務めた大矢明彦氏は「リリーフ陣が頑張って今までは、ゲームをモノにしてきたんですけどね。疲れが出てきていると思いますね」と敗因を分析。
開幕から支えてきたリリーフ陣に疲れがみえ、さらに23日の試合中に鈴木誠也が守備中に右足を骨折。気が付けば7月終了時点で2位・阪神と10ゲーム差をつけていたが、サヨナラ負けを喫した24日のDeNA戦後には阪神に6.5ゲーム差まで詰められた。
嫌な雰囲気の中、本拠地・マツダスタジアムに戻って行われた8月25日からの中日との3連戦を2勝1敗で勝ち越し。しかし、8月29日からの巨人(東京ドーム)との3連戦を1勝2敗で負け越した。結局、8月は2015年の3・4月以来となる月間負け越した。
2連覇へ一気に加速
9月:12勝2敗0分 勝率.8578月の失速が嘘のように9月は勝ちを積み重ねた。9月最初のゲームとなった1日のヤクルト戦に3-2で勝利。同日に放送された『ニッポン放送制作のヤクルト-広島戦』で解説を務めた野村弘樹氏は「カープの勝ち方としては、繋ぎという部分に課題を残しましたが、投げるべく人(左のエース・ジョンソン)が投げて、今日4番に入った松山、打つべき人が打った。こういった勝ち方ができるというのは、理想的な形ですよね」と評価した。
この試合から広島は破竹の9連勝。中でも9月5日からの2位・阪神との3連戦は劇的な勝利が続いた。5日の試合では1点リードの9回に福留孝介に逆転2ランを打たれるも、その裏に安部友裕が劇的2ランでサヨナラ勝ち。4度目の優勝マジック『12』が点灯する。
6日の試合では3点ビハインドの8回に丸佳浩、安部友裕のタイムリーで同点。延長11回に会沢のタイムリーでサヨナラ勝ち。7日の試合は初回に3点を失うなど、序盤リードを許す展開も2点ビハインドの5回に、丸佳浩のタイムリー、松山竜平の犠飛で同点に追いつくと、安部友裕がタイムリー三塁打を放ち逆転。このリードを小刻みな継投で、6-4で勝利した。
その後も順調に優勝マジックを減らしていき、マジック『1』で迎えた9月16日のヤクルト戦は4-5で敗れ、地元・マツダスタジアムでの優勝は叶わなかったが、9月18日の阪神戦(甲子園)に3-2で勝利しリーグ連覇を達成した。
同日に放送された『ニッポン放送ショウアップナイター 阪神-広島戦』で解説を務めた田尾安志氏は「お見事な2連覇でした。素晴らしかったです」と祝福した。
(ニッポン放送ショウアップナイター)