ニュース 2017.11.28. 12:00

FA制度誕生から25年…『人的補償』を振り返る

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広島・一岡竜司(C)KYODO NEWS IMAGES

今年も間もなく…


 11月も終わりが近づき、2017年も1カ月とちょっと。12月に入ると騒がしくなってくるのが、FA選手たちの動向だ。

 今年は7名がFA権の行使を宣言したが、未だ各選手の新天地は決まっていない。しかし、ここに来て西武・野上亮磨の巨人入りが大きく報じられるなど、徐々に動きが活発になってきた。

 FA移籍で注目されるのは、宣言した選手の行方だけではない。FAでの移籍には一部を除いて“補償”が必要となり、そこでまた新たな選手の動きが発生することがあるのだ。まずはその条件をおさらいしておこう。

【FA補償おさらい】
▼ Aランク(外国人選手を除くチーム内の年俸上位1位~3位)
・人的補償 + 年俸の50%相当の金銭
 or
・年俸の80%相当の金銭

▼ Bランク(外国人選手を除くチーム内の年俸上位4位~10位)
・人的補償 + 年俸の40%相当の金銭
 or
・年俸の60%相当の金銭

▼ Cランク(外国人選手を除くチーム内の年俸上位11位以下)
補償の必要なし


人的補償のルール


 上述の通り、Bランク以上の選手の移籍には補償が伴う。金銭か、金銭プラス人的補償になるのか。FA選手の動向以上に注目が集まる。

【人的補償おさらい】

▼ FA権を行使して他球団へ移籍したFA選手が補償対象選手(=Bランク以上)の場合…
・選手の旧年俸による金銭補償
・金銭補償と前球団が指名した選手1名を与える人的補償
のいずれかを支払わなければならない。

※人的補償に指名された選手がこれを拒否した場合、その選手は資格停止選手となる。


▼ ただし、以下の選手は人的補償選手として獲得する事ができない。
・プロテクトした28名の選手
・FA権取得により日本人扱いになった選手を含む外国人選手
・直近のドラフトで獲得した新人選手

※なお、以下の日本人選手はプロテクト枠に含まれなければ人的補償の対象になる。
・支配下選手登録されたトレード、自由契約選手
・複数年契約選手


 今年は大和と鶴岡慎也以外はBランク以上(推定)とみられるため、今後の展開に大きな注目が集まる。

 過去には意外な大物選手がプロテクト外となっていたり、プロテクトが回りきらずに移籍した有望株が新天地で開花したという例もあった。果たして、今オフはどんなドラマが生まれるのか。FA選手の動向と同様に、その“補償”からも目が離せない。


人的補償の歴史

1. 川辺忠義(巨人→日本ハム)
☆河野博文の補償
・1989年のドラフト2位で入団も、一軍出場がないまま1995年のオフに史上初の人的補償として移籍。
・1996年に新天地で一軍デビューを果たすも、1997年は再び一軍出場ゼロに終わり、自由契約となった。

2. 平松一宏(巨人→中日)
☆前田幸長の補償
・中継ぎやローテーションの谷間として奮闘も、人的補償で中日へ移籍。
・2003年には5勝をマークするなど復活の兆しを見せたが、2005年に自由契約となった。

3. ユウキ(近鉄→オリックス)
☆加藤伸一の補償
・高卒3年目のオフに人的補償での移籍を言い渡される。
・移籍1年目は7勝1敗、防御率1.93の好成績を残したが、その後も度重なる故障に苦しんだ。

4. 小田幸平(巨人→中日)
☆野口茂樹の補償
・野手としては初の人的補償。
・中日では控え捕手として重宝され、285試合の出場を果たした。

5. 江藤 智(巨人→西武)
☆豊田清の補償
・過去のFA移籍選手が人的補償となった史上初の例。
・西武では4年間のプレーに留まるも、通算350本塁打、1500安打、1000打点のメモリアルを達成。

6. 吉武真太郎(ソフトバンク→巨人)
☆小久保裕紀の補償
・ダイエー、ソフトバンクで300試合に登板も、巨人では19試合の登板に留まる。

7. 工藤公康(巨人→横浜)
☆門倉健の補償
・2度のFA移籍を経て、3度目の移籍は人的補償。
・巨人から勝利を挙げ、史上初の13球団勝利を達成。

8. 赤松真人(阪神→広島)
☆新井貴浩の補償
・移籍1年目から125試合に出場を果たすなどブレイク。
・2年目にはオールスターゲームに出場。
・人的補償からの開花における最初の例といえる。

9. 岡本真也(中日→西武)
☆和田一浩の補償
・移籍1年目は47試合に登板し、日本一に貢献。
・2年目は打ち込まれるシーンが目立ち、一転して二軍暮らし。オフに戦力外となる。

10. 福地寿樹(西武→ヤクルト)
☆石井一久の補償
・移籍1年目に初の規定打席到達を果たし、打率.320を記録。
・2008年、2009年と2年連続で盗塁王に輝くなど大きく飛躍。

11. 高浜卓也(阪神→ロッテ)
☆小林宏之の補償
・新天地で一軍デビュー。
・レギュラー奪取までは至らずも、これまで177試合に出場。

12. 藤井秀悟(巨人→DeNA)
☆村田修一の補償
・貴重な先発左腕として1年目は7勝、2年目は6勝をマーク。
・3年目は一軍出場ゼロに終わり、戦力外通告。

13. 高口隆行(ロッテ→巨人)
☆サブローの補償
・故障にも悩まされ、2年で戦力外に。

14. 馬原孝浩(ソフトバンク→オリックス)
☆寺原隼人の補償
・1年目こそ故障に苦しむも、2年目はセットアッパーとして55試合に登板。
・しかし、3年目に再び故障に襲われ、そのまま自由契約。現役を引退した。

15. 高宮和也(オリックス→阪神)
☆平野恵一の補償
・3年目に52試合に登板するなどブレイク。
・しかしその後は徐々に出番を減らし、2017年オフに戦力外。

16. 鶴岡一成(DeNA→阪神)
☆久保康友の補償
・併用のなか、藤浪晋太郎や呉昇桓と相性の良さを発揮。
・2016年に現役を引退。セレモニーも執り行われた。

17. 一岡竜司(巨人→広島)
☆大竹寛の補償
・巨人では13試合の登板に留まるも、移籍1年目から31試合に登板。
・今季は自己最多の59試合に登板するなど、連覇に貢献。

18. 藤岡好明(ソフトバンク→日本ハム)
☆鶴岡慎也の補償
・持ち味を発揮できないまま、2016年シーズン開幕直後にDeNAへトレード移籍。

19. 脇谷亮太(巨人→西武)
☆片岡治大の補償
・代打の切り札やバックアッパーとして活躍。
・しかし、2015年オフにFA宣言し、古巣へ復帰する。

20. 中郷大樹(ロッテ→西武)
☆涌井秀章の補償
・西武では14試合の登板に留まり、2年目は一軍出場ゼロ。
・2015年オフに自由契約となり、打撃投手という形で古巣に復帰。

21. 奥村展征(巨人→ヤクルト)
☆相川亮二の補償
・プロ2年目に人的補償で移籍。人的補償史上最年少で、プロ2年目も最短。
・1年目に一軍デビューを飾り、今季は44試合に出場。徐々に出番を増やしている。

22. 金田和之(阪神→オリックス)
☆糸井嘉男の補償
・1年目から34試合に出場。

23. 平良拳太郎(巨人→DeNA)
☆山口俊の補償
・新天地でプロ初勝利をマーク。


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