◆ エースの顔が浮かばないチームも少なくない
たとえ本調子でなくとも大崩れすることなく、ペナントの行方を左右するような大一番のマウンドにも安心して送り出せる“エース”。チームにとってこれほど頼もしい存在はない。しかし、例えば巨人なら「菅野智之」というように、すぐにエースの顔が思い浮かぶチームもあれば、誰がエースなのかファンの間でも意見が分かれるチームもある。
エースというからには、まずは勝利を挙げることが最大の使命。さらに、ケガなく複数のシーズンを通して活躍することも求められるだろう。そこで、現在の各チームのエースを探るべく、2015年〜2017年の直近3シーズンにおける各チーム内での最多勝投手を挙げてみる。
もちろん、エースは数字だけではかることのできない存在でもある。たとえ勝利数は伸びなくとも、対戦相手に威圧感を与えられたり、チームメートのモチベーションを上げられる存在感を持っていることも重要な要素だ。ここではあくまで勝利数という“数字で見るエース”ということをお断りしておく。
【各球団直近3シーズン最多勝投手】
広島 :ジョンソン(35勝17敗)勝率.673
阪神 :メッセンジャー(32勝28敗)勝率.533
DeNA :今永昇太(19勝16敗)勝率.543
巨人 :菅野智之(36勝22敗)勝率.621
中日 :大野雄大(25勝28敗)勝率.472
ヤクルト:小川泰弘(27勝24敗)勝率.529
ソフトバンク:武田翔太(33勝18敗)勝率.647
西武 :菊池雄星(37勝23敗)勝率.617
楽天 :則本昂大(36勝29敗)勝率.554
オリックス :金子千尋(26勝23敗)勝率.531
:ディクソン(26勝29敗)勝率.473
日本ハム :有原航平(29勝28敗)勝率.509
ロッテ :涌井秀章(30勝27敗)勝率.526
◆ 4投手が25勝以上をマークしたソフトバンク
直近3シーズンの12球団最多勝投手は37勝を挙げた菊池雄星(西武)。プロ入りから数年間は期待値の高さゆえ伸び悩んでいた印象もあった菊池だが、初めて開幕投手を務めた2016年に飛躍的に進化。2017年は最多勝、最優秀防御率の個人タイトルも獲得した。
一方、チーム内最多勝投手の勝利数が唯一20勝を割ったのがDeNA。今永昇太の19勝がチーム最高だ。ただ、今永の数字はルーキーだった2016年から2年間で記録したもの。今後、若きエースとして成長していくことが期待される。
王者・ソフトバンクのチーム内最多勝投手は33勝を挙げた武田翔太。特筆すべきは、武田に続くバンデンハーク(29勝)、千賀滉大(27勝)、東浜巨(26勝)を含め4人もの投手が25勝以上をマークしていること。もちろん、この人数は12球団最多。しかも4人全員が6割以上の勝率を誇る。絶対的エースと呼べる存在はなくとも、エース級の投手を複数かかえていることにソフトバンクの強さが表れている。
“数字で見るエース”のなかには、ファンからすればまだエースの称号を与えるには早いと感じる名前もあるだろう。彼らが“真のエース”になるべく、大きく成長していくことを期待したい。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)