ヤクルト・山田哲人(C)KYODO NEWS IMAGES

◆ 開幕当初は不振も…

 2年ぶりのトリプルスリーへ向け、ヤクルト・山田哲人が調子を上げてきた。

 今季は開幕から打率1割台が続き心配されたが、5月12日の試合終了時点で打率は.282まで上昇。5月に限っては、ここまで10試合を戦って40打数13安打、打率.325、4本塁打と好調だ。

 2日・3日の中日戦では2試合連続で本塁打を放ち、5日の広島戦でも左越えに9号ソロ。劣勢のなかチーム唯一の得点を挙げた。11日のDeNA戦では10号ソロをバックスクリーンに運び、5年連続の2ケタ本塁打を達成。本塁打の数はここまで10本で、DeNAのロペスと並び2位タイ。盗塁数はリーグトップタイの10盗塁となっている。このまま上昇気流に乗っていけるだろうか。

 2015年と16年には、史上初となる2年連続のトリプルスリーを達成した山田だが、昨季は打率.247と低迷。本塁打も24本で、2年連続の38本から減少した。さらに、盗塁数もわずか14と、30盗塁だった前年の半分以下に終わり、“3年連続トリプルスリー”という偉業を成し遂げることはできなかった。

 チームも屈辱を味わう。球団ワーストの96敗を喫し、今季も現時点で借金5と苦しんでいるが、山田は「1番打者」としてその役割を果たしている。得点数33はリーグトップの成績で、四球の数もリーグ2位タイの31個。出塁すれば昨季よりも積極的に次の塁を奪う姿勢を見せている。

 今季は球団OBの宮本慎也氏をヘッドコーチに加え、リーグ連覇を果たした広島から石井琢朗、河田雄祐両コーチを招へい。チーム改革を断行した。改革はまだ道半ばだが、その中心に山田哲がいることに間違いはない。

◆ 期待がふくらむ「10割超え」のOPS

 山田の好調さを示す数値として「OPS」がある。現在、打率はまだ3割に届いていないものの、OPSは10割を超えている。OPSはセイバーメトリクスにおける打者の評価を表す指標で、出塁率と長打率を足した数値である。

 ここで、セパ両リーグのOPSランキング・ベスト5を紹介しよう。

【セ・リーグOPSランキング】
1位 1.076 丸 佳浩(広島)
2位 1.050 アルモンテ(中日)
3位 1.044 バレンティン(ヤクルト)
4位 1.008 山田哲人(ヤクルト)
5位 .981  ロペス(DeNA)

【パ・リーグOPSランキング】
1位 1.168 柳田悠岐(ソフトバンク)
2位 1.167 山川穂高(西武)
3位 1.005 秋山翔吾(西武)
4位 .939  大田泰示(日本ハム)
5位 .925  浅村栄斗(西武)

※5月12日試合終了時点

 一般的に.900以上で優秀とされるOPS。山田はここまで出塁率.420、長打率.588の合計「1.008」だ。

 ちなみに、トリプルスリーを達成した15年は「1.027」、16年は「1.032」といずれも10割を超えていた。同じく15年にトリプルスリーを達成したソフトバンクの柳田悠岐も、その年のOPSは「1.101」と素晴らしい結果を残している。

 昨季、不振に終わった山田のOPSは「.799」と8割にも満たない数字に終わっただけに、現時点でOPSが10割を超えていることを考えると、3度目の偉業達成にも大いに期待が持てる。

 打撃、走塁の両面で本来の輝きを取り戻しつつある山田哲。昨季の悔しさを糧に今後どこまで数字を上げていくか、注目だ。

文=別府勉(べっぷ・つとむ)

【別府勉・プロフィール】
1981年、神奈川県生まれ。野村克也監督時代の黄金期からヤクルトスワローズを応援し、学生時代を中心に全国各地の球場を回った。大学卒業後はスポーツ紙の取材編集の仕事を経て、Web業界へ。『ベースボールチャンネル』への寄稿を機に、野球ライターとして活動開始。

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別府勉

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