◆ 即戦力と外国人の契約延長で投手補強
ソフトバンクと広島が日本シリーズで激闘を繰り広げるなか、他の10球団ははやくも来シーズンへ向けて動き始めている。なかでも、今季10年ぶりにリーグ優勝を果たした西武の動きが早い。
クライマックスシリーズ敗退直後に辻発彦監督の続投と、渡辺久信シニアディレクターが球団初のGMに昇格することが決定。同時に、鈴木葉留彦球団本部長が任期満了に伴い退職となることも発表された。
これにより、来シーズンからは渡辺GMが編成面の実質的なトップとなる。1980年から1990年代にかけての黄金時代を知る辻監督、渡辺GMラインで悲願の日本一を目指していく陣営だ。
迅速な動きは人事面だけではない。今季途中に中継ぎの補強として獲得したカイル・マーティン、デュアンテ・ヒースの契約延長を発表。課題であった中継ぎ陣を立て直し、“勝利の方程式”を確立させたふたりが、来シーズンは開幕からフル稼働する。
日本シリーズに出場したソフトバンクは、強力打線はもちろん、先発・中継ぎと投手陣も充実していた。CSでの勝敗を分けたのはまさに投手陣だっただけに、両外国人投手の残留は心強いだろう。
加えて、先発投手の補強も抜かりない。ドラフトでは西武を除く11球団が根尾昂(大阪桐蔭高→中日)、藤原恭大(大阪桐蔭高→ロッテ)、小園海斗(報徳学園高→広島)の高校生野手3人に入札するなか、即戦力候補となる松本航(日体大)の一本釣りに成功。最速155キロを誇り、大学日本代表にも選ばれた逸材のねらい打ちに成功した。エース・菊池雄星のポスティングによるメジャーリーグ移籍が濃厚なだけに、1年目からローテーションに入って活躍できる選手をピンポイントで射抜いた。
◆ FA流出に備えた指名も…
外国人選手の契約延長、ドラフト1位での即戦力獲得だけではない。将来への布石も打った。
ドラフト2位では、素材型とされる浦和学院高の渡辺勇太朗を指名。身長190センチの長身に、150キロに迫るストレートはまるで高校時代の大谷翔平(エンゼルス)を彷彿させる。松坂大輔(現・中日)、涌井秀章(現・ロッテ)、菊池と高卒ドラフト1位をエースに育てあげた実績もある球団だけに、数年後のローテーションを担う存在としての期待は大きい。
また、3位では二塁がメインポジションである山野辺翔(三菱自動車岡崎)、5位では高校生捕手の牧野翔矢(遊学館高)を指名。このオフは浅村栄斗、炭谷銀仁朗両選手にFAで退団の可能性があり、万一に備えるという意味も少なからず含まれていることだろう。もちろん、ルーキーがすぐに戦力となるわけではないが、そこはしっかりと補強できた。
その他、今季メジャーに挑戦した牧田和久(パドレス)の再獲得も調査しているという。牧田はパドレスと2年契約を締結しているが、バイアウトされる可能性もある。メジャー定着とはならなかっただけに、もしもリリースされるようなことがあれば、古巣として「いの一番」に名乗りを上げるはず。先発・中継ぎ・抑えと様々な場面を経験した男だけに、頼りになることは間違いない。
連覇への道のりは簡単なものではない。しかし、早い段階で打てるべき手はすべて打ち、備えをすることは決して無駄にはならない。「打倒・ソフトバンク」を合言葉に、来シーズンこそ悲願の日本一を勝ち取ることに期待したい。