昨年まで西武でプレーした菊池雄星(C)KYODO NEWS IMAGES

◆ 白球つれづれ2018~第36回・菊池雄星の挑戦

 西武のエース、菊池雄星のメジャー挑戦が確実視されている。シーズン中には菊池の登板日となると10球団を超すメジャーのスカウトが集結、来季からのMLB挑戦は間違いなしと見られてきた。球団側もクライマックスシリーズでソフトバンクに敗れると、球団社長の居郷肇が「彼の長年の夢を実現させてやりたい」と初めてポスティング制度によるメジャー行きを容認。菊池争奪戦の幕が切って落とされた。

 日本を代表する左腕は現在27歳。入団以来、大器と言われながら伸び悩んだ時期もあったが、この3年は12勝(7敗)、16勝(6敗)、14勝(4敗)と確実に2ケタ勝利をマークして今季は10年ぶりのリーグ優勝にも貢献した。脂の乗る最適な時期の挑戦と言えるだろう。

 160キロに迫るストレートに右打者の膝元に鋭く曲がり落ちるスライダー。三振が取れて、スタミナもある。メジャー各球団にとっても魅力にあふれた素材であることは間違いない。一部には30球団が調査に乗り出し、エース不在のマリナーズやレンジャース、さらには飽くなき補強を目指すヤンキースやドジャースなどが有力と報じている。一方で、松坂大輔、ダルビッシュ有や田中将大ら先輩メジャーリーガーに比べてワンランク評価を下げる球団もある。

 「彼らほど日本での実績もないし、こちらでは先発の3~4番手候補。年俸にして8~9億の3~5年契約が妥当かな?」と視察に表れた某球団スカウトは微妙な評価だ。

◆ いくつかの不安要素も

 確かに菊池には不安要素もある。乗り越えなければならない壁と言ってもいいだろう。まず、気になるのは故障。これまでも肩、肘に違和感を訴えてほとんどのシーズンをフルに働いたことがない。メジャーの先発投手は160試合を超す長丁場を中4日でフル稼働が基本、左腕が悲鳴を上げないか?

 次に懸念されるのは球数の多さである。今季の投球を見ても5回で100球を超すのはザラ。これではメジャー流ならこの時点で即交代となる。さらに気になるのは神経質なほどの完璧主義者である点だ。日頃からリリースポイントや肘の下がり具合などを自ら細かくチェック。相手を見下して投げているうちはいいが少しでも打たれると脆さが顔をのぞかせる。

 ソフトバンク戦が代表例でプロ入り以来の連敗は13で止めたものの、大事なクライマックスシリーズでは再び炎上。「他のチームに投げている時とウチとでは顔つきから違う」とソフトバンク関係者が精神面の脆さを指摘する。ボールの大きさの違いやマウンドの傾斜なども含めて克服しなければならないポイントは多い。

◆ 悲願のMLB挑戦へ

 今オフのメジャーFA市場は大物が揃っており、中でも左腕が豊作と言われる。ドジャースのカーショーは残留を決めたようだが、ヤンキースのサバシアやワールドシリーズを沸かせたレッドソックスのプライスらサイヤング賞を獲得した大エースがズラリ。常識的にみれば彼らの去就が決まったのち菊池獲得に本腰を入れるチームが名乗りを上げるだろう。中でも長く先発ローテを守ってきたサバシアが来季は39歳、そこで若返り策が取られれば「ヤンキース・菊池」誕生も夢ではない。

 花巻東時代からメジャー志望。高校3年時には海の向こうから8球団のスカウトが面談にやってきた。その菊池に憧れて同校に進学した大谷翔平は一足早くメジャーにわたり「二刀流」で話題を独占した。ここは意地でも負けたくないのが本音である。

 11月1日(現地時間)にMLBの入札制度がスタートして申請期間は12月5日まで。選手と球団の交渉期間は30日と決まっている。年内には入団先が明らかになるだろう。西武にとっては痛いエースの流失だが、来春にはどこのユニホームに袖を通し、どんなメジャーデビューを果たすのか? 乗り越える壁が高い分だけ乗り越えた先の喜びも倍増する。雄星のさらなる覚醒を見てみたい。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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この記事を書いたのは

荒川和夫

1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中

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