「8対8」の変則紅白戦を実施
来季へ向けての戦いはもう始まっている――。若手主体で行われているヤクルトの松山秋季キャンプでは、ハードな練習メニューをこなすだけではなく“考える野球”も浸透させていく。その1つが11日に行われた「8対8」の紅白戦だ。
野手の守備陣営が7人と少なくなるこの変則試合の狙いは、選手に“考える”意識を植え付けること。采配を振るのは監督やコーチではなく、選手自らが行う。
小川淳司監督は「選手たちが状況を作った中でどういうことが求められるのか、自分の思いと、ベンチが考えるところというものを感じてくれたらいいと思う」と意図を語り、紅組は塩見泰隆に、白組は西浦直亨に、それぞれ指揮権を与えた。
試合は8-6で紅組が勝利。試合後、塩見は「投手との兼ね合いで(シフトを)締めたり寄ってみたりと工夫した」と自らの采配を振り返ると、西浦は「考えた通りにうまくいかないこともあるし、考えることで新しくひらめくこともある」と、戦術の難しさを身をもって感じたようだ。
小川監督「考えてやるということの認識はできた」
「俺だったらどうするかなと思いながら見ていた」という宮本慎也ヘッドコーチは、「攻撃のときに盗塁であったり、エンドランであったりをしてもいい場面で、何も仕掛けられていなかった」と語り、「カウントを作るとか、投手によって守備位置を変えてみるとか、状況によって変えてみるとか、無理かもしれないけど動いてみるとか…もうちょっとやって欲しかった」と厳しい言葉を並べた。
ただ、小川監督は今回の試みで「考えてやるということの認識はできたと思う」と手応えを感じた様子。今季のCSファーストステージ敗退後には、「来年に向けて新たに変化していかなければいけない」と、悔しさとともに決意をにじませた指揮官。選手たちに“考える野球”が浸透すれば、来季こそ優勝争いに加わることができるはずだ。
今秋ドラフト指名選手がキャンプ訪問
10日には、今秋のドラフト会議で指名された選手たちが今キャンプを見学。球団初の試みで、これにより新人選手たちが自らプレーする前にプロのレベルを感じ取ってもらい、考えさせることもできる。
ドラフト1位指名の清水昇(国学院大)は11日の紅白戦の様子も見学し、プロの実戦を目の当たりにした。「球が甘かったら外野まで運ばれるし、ヒットを打たれてしまう。自分の持ち味であるコントロールを何段階でも上げられるようにしたい」と、さらにレベルアップした姿を追い求めていく覚悟だ。
「1月の入寮日までに自分ができることをやっていきたい。しっかり自分の軸をぶらさずにやっていきたい」と語った右腕には、即戦力の期待もかかる。期待の若手選手だけではなく、来季新たに加わる戦力も含め、ツバメ軍団が再スタート。心身ともに追い込むキャンプの成果を来季、結実させてみせる。
取材・文=別府勉(べっぷ・つとむ)