「プロ野球生活の中で一番悔しいシーズン」
11月14日に都内で行われたアディダス「ALPHAEDGE 4D」の新商品発表会に楽天の則本昂大投手が登場。イベント終了後、今季の反省と来季への意気込みを語った。
「プロ野球生活の中で一番悔しいシーズン。ふがいない成績だった」と1年を振り返った右腕。今季は27試合に登板して10勝11敗、防御率は3.69という成績だった。
プロ入りから6年連続の2ケタ勝利をマークし、187奪三振で5年連続となる最多奪三振のタイトルを獲得。防御率はキャリアワーストだったとはいえ、タイトルを獲得しても本人は納得できない様子。「このふがいない成績を忘れないようにして、来シーズンはチームのみんな、ファンのみなさんと最高のシーズンにしたいです」と意気込みを語った。
なによりも「勝つこと」
今回はイベント終了後に少し時間をいただき、インタビューを受けてもらうことに。「悔しかった」と語った今季の振り返りから、自身の代名詞となりつつある“奪三振”についての考え方、リベンジに燃える来季に向けた想いを語ってもらった。
―― 三振を奪うということについてのこだわりは?
三振を獲れるに越したことはないと思いますけど、チームが勝つために必要なければいらないと思う。三振を獲ることで勝ちに近づくなら、獲っていければ良いと思うけど…。
『こだわっても…』と思っているので。三振の数で給料を稼いでいるわけではないし、三振を獲れば喜んでくださるファンの方もたくさんいるんですけど、やっぱり勝つこと。勝たないと、ファンは満足して帰ることができないと思います。
スポーツは勝ち負けがメインで、その先に個人の成績がある。『まずは勝たないと』って考えています。
―― では、逆に勝つために必要と考えていることは何ですか?
『客観視すること』が一番かなと思いますね。自分を。それができれば落ち着いて試合運びができると思うので。試合になるとどうしても目の前のことしか見えなくなったり、冷静さを欠いたりする。
特に歯車が噛み合っていないときはそうなりがちだと思います。今年の序盤はチーム全体がそんな感じでした。苦しい状況のときこそ、客観視してプレーすることが大事だと今年は思いましたね。
―― 1年目から大舞台でも結果を残してきた則本選手。それも自分を客観視できていたから?
いや……熱くなりすぎる時はどうしてもありました。アスリートだから仕方ない部分ではあるんですけど、そこを制御して客観視して、冷静になることは必要。
1年目や2年目だったら相手にデータもないし、熱くなっていれば良いかもしれない。でも、長くやればやるほど冷静になることは必要だと思う。
―― 田中将大投手もプロ入り当初は、常に全力投球するようなスタイルで、そこから経験を積み、ピンチの場面でギアを上げるような投球スタイルに変わっていった印象があります。
難しいですよね。慣れとかも必要だと思うので。自分のスタイルを変えることができたのは、田中さんの巧さというか、器用なところがあったからだと思います。スタイルを変えたら、それで選手生命が終わる可能性もあるので。
周りの人たちは良かれと思ってアドバイスしてくれるんですけど、自分で取捨選択することが重要。難しいですけど、田中さんはそれを実現できる“技術”があったと思います。
―― “考え方の変化”というよりは“技術力”の方なんですね。
そうです。結局そっちの方が重要になってくると思います。
「日本一って簡単じゃないな」
―― 今年はチームにも変化がありました。
平石(洋介)さんは僕が1年目のとき一軍打撃コーチ補佐で、コーチとしてもお若いので、選手に近い存在でした。でも、しっかりと言うことは言うし、やるべきことはやるし。優しさもありますけど、その反面厳しさもある。やることを徹底している。
―― 平石監督はまっすぐな方なんですか?
そうです。自分が『これだ!』と思ったら、その信念を貫く方です。
来年からは代行ではなくて、新監督としてチームがスタートするので、『平石監督を胴上げしたい』と考えている選手は多いと思う。
平石さんの指導のおかげで伸びてきた選手もいる。ここから若手がどんどん出てきてくれればチームは強くなる。
―― GMには新たに石井一久さんが就任しました。
何度かお話させていただく機会があって、ピッチャー寄りの目線で話していただきました。
―― アドバイス等は的確ですか?
高いレベルでプレーしてきた方で、色々な経験をされてきたので、それを僕たちに落とし込んでくれるし、チームが良くなるためにどうすれば良いか考えてくれる。新たなイーグルスになると思います。
―― “海外の方”は意識したりする?
今は正直なくて。例えば、去年20勝して、防御率1点台前半で、沢村賞取って、投手タイトル総なめで、ってなったら違ったかもしれないですけど。今の状況でその質問が来たときは『正直そんなに考えていない』というのが本音です。
来シーズン良い成績を残して、チームが優勝すればそれで良い。変な話、チームが優勝するなら自分が投げなくても良いと思っています。
―― 2013年を経験しているからこその『優勝したい!』という思いですね。
やっぱり1年目にあれだけ幸せなシーズンを過ごすことができたので。小学校1年生から野球をやってきたご褒美だったのかなと。その翌年からは試練かなと。
―― 難しいですよね、優勝するって。
難しい……。
『日本一って簡単じゃないな』って、ここ5年間はずっと思っています。
―― 『ソフトバンクが強い』と言われていても、今年はリーグ優勝できませんでした。でも、リーグ優勝したライオンズが今度はクライマックスシリーズで敗退しました。
やっぱり、ホークスは短期決戦の勝ち方を知っている。日本代表の試合と似たような部分はあったと思います。
―― 工藤監督も短期決戦用の思い切った采配で勝負しました。
選手にとっては葛藤がある采配だったと思います。でも、それを選手が全うして、日本一になった。そこにはシーズンを戦い抜いた上での信頼関係みたいな『これをすれば勝てるんだ!』というものがあったと思う。
だからこそ、内川さんの送りバントや、松田さんがベンチスタートということがあっても、優勝した瞬間はどの選手も良い顔をしていた。あれがあるべき姿だと思います。
―― 最後に来季の意気込みを一言でお願いします。
勝つ!ってだけです。
取材=ベースボールキング編集部(かとう・さとし)