源田を発掘した安達スカウトが担当
西武の渡辺久信球団本部シニアディレクター(SD)兼編成部長は21日、FA宣言している浅村栄斗内野手(28)から「残留はせず、移籍したい」という内容の電話があったことを発表。チームの主将にして打点王の流出が決定した。
その日の夕方には、楽天がTwitterで獲得を正式に発表。ファンの間では大きなショックが広がったものの、SDも「非常に残念ですけど、何回も話し合って浅村選手が決めた決断なので、我々としてはそれを尊重したいと思います」と語っているように、本人が決めたことを覆すことはできない。来年の春にはリーグ連覇と、今年届かなかった日本一を目指した戦いが始まるだけに、前を向いて戦いの準備を進めていかなければならない。
そんな中、救世主候補として“ある男”に注目が集まっている。今秋のドラフト3位で指名した、山野辺翔(やまのべ・かける)内野手だ。
桐蔭学園高から桜美林大、社会人・三菱自動車岡崎を経てプロ入りを果たす24歳。右投右打の内野手で、ちょうど浅村が抜ける二塁のポジションを主戦場としてきた。
走攻守3拍子揃った即戦力候補の内野手として注目を集め、スピードが最大の魅力。加えて、170センチ・74キロ(※ドラフト時の球団発表データ)と小柄な体格ながらパンチ力も兼ね備えており、プロのスカウトからは「右の茂木(栄五郎/楽天)」や「菊池(涼介/広島)タイプ」といった声も挙がっていた。
新聞やドラフト情報誌などでは「内野の層が薄いチームの下位指名候補」といった見立てが多かったが、西武はこの選手を3位で指名。担当スカウトはあの源田壮亮を発掘した安達俊也スカウトで、「小柄ながらパンチ力があり広角に打てる。守備範囲が広く、盗塁のできる走力と三拍子揃った好選手」と高く評価していた。
『偶数年のドラフト3位』がスゴイ
また、ファンの期待をさらに大きくしているのが山野辺の“指名順位”である。
西武といえば、伝統的に『ドラフト3位』で指名した選手が活躍する傾向にあり、古くは松井稼頭央(※ドラフト当時は「松井和夫」)やかつてのエース・西口文也、帆足和幸に片岡易之、最近では浅村栄斗に秋山翔吾、金子侑司、外崎修汰、そして源田壮亮もドラフト3位での入団だった。
特にすごいのが、最近の『偶数年』におけるドラフト3位指名選手の当たり率。ドラフトが現行の体制になった2008年以降で見てみると、以下のようになる。
▼ 西武・偶数年のドラフト3位
2008年:浅村栄斗
2010年:秋山翔吾
2012年:金子侑司
2014年:外崎修汰
2016年:源田壮亮
ご覧のように、今では全員がレギュラーへと成長。浅村・秋山・金子は後に個人タイトルも獲得しており、浅村・秋山・外崎・源田の4名はその活躍ぶりが認められて侍ジャパンのメンバー入りも果たすなど、『西武の3位』から球界を代表する選手へと飛躍を遂げている。
中でも源田は社会人からのプロ入り1年目から即戦力として大活躍を見せており、山野辺はその源田と同じ安達スカウトの担当。ともに“大学・社会人を経てからプロ入りする即戦力候補の内野手”として重なる部分がある。
さらに、源田はトヨタ自動車からのプロ入りだったのに対し、山野辺は所属チームは三菱自動車岡崎も、今夏の都市対抗野球ではトヨタ自動車の補強選手として活躍を見せていた。多少強引な部分もあるが、これだけの材料が揃えば期待が高まってくるのも仕方がない。
西武は期待の男と11月15日に入団交渉を行い、すでに入団内諾を獲得。プロとしての第一歩を踏み出した山野辺は「身が引き締まる思いです。開幕一軍を目指して頑張りたいです。そして広島カープの菊池選手みたいになりたいです」と意気込みを語っている。
山野辺は2年前の源田のように、1年目からチームを救う活躍ができるか。来季も西武の“ドラフト3位ルーキー”に注目だ。