◆ 12球団最多18名がFA移籍
11月26日、巨人は西武からFA宣言した炭谷銀仁朗の獲得を発表した。これで西武は先にFAで楽天へ移籍した浅村栄斗につづいて、今オフ2人目のFA移籍。FA制度が始まって以来、12球団最多となる18人目のFA流出となった。
過去にも多くの主力選手を見送ってきた西武だが、その度に必ず後継選手が出てくるということでも知られている。今回は西武のFA流出とその“穴埋め”の歴史をまとめてみた。
◆ 流出翌年に優勝するケースも多々あり
▼ 1996年~1997年
[移籍] 清原和博:130試 率.257 本31 点84(1996年)
[台頭] 高木大成:130試 率.295 本7 点64(1997年)
1996年のオフ、チームの顔だった清原がFAで巨人に移籍。打力の低下が懸念されたなか、前年に一軍デビューを果たし、80試合の出場で打率.278とアピールした高木を捕手から一塁にコンバートした。
打撃に専念させたことも奏功し、高木は3番に定着。4番・鈴木健、5番・マルティネスとともに強力クリーンナップを形成して大きな穴を埋めた。
▼ 2003年~2004年
[移籍] 松井稼頭央:140試 率.305 本33 点84(2003年)
[台頭] 中島裕之:133試 率.287 本27 点90(2004年)
2003年には、走攻守はもちろんのこと、人気の面でもチームを支えてきた松井稼頭央がFAでメジャーリーグに挑戦。大黒柱の移籍に揺れたチームだったが、その後継として抜擢された4年目の中島裕之が大きく成長した。
前年までの一軍出場48試合だった男がレギュラーに定着して133試合に出場。攻守に渡る奮闘で見事に穴埋めを果たし、チームの優勝・日本一に大きく貢献した。
▼ 2007年~2008年
[移籍] 和田一浩:138試 率.315 本18 点49(2007年)
[台頭] G.G.佐藤、中村剛也、栗山巧
2007年オフには、長らくクリーンナップの一翼を担ってきた和田一浩がFAで中日に移籍してしまう。それでも、G.G.佐藤が代わりに5番を務め、さらに中村剛也が46本塁打を放つ大活躍。和田の移籍を感じさせない圧倒的な打力でリーグ優勝を成し遂げた。
ちなみに、和田が抜けたレフトには栗山巧を起用。以降、栗山は長きにわたりこのポジションを守り、チームを支えていく存在になる。
▼ 2012年~2013年
[移籍] 中島裕之:136試 率.311 本13 点74(2012年)
[台頭] 浅村栄斗:144試 率.317 本27 点110(2013年)
松井稼頭央の後を受け、攻守に渡りチームを支えてきた中島も松井と同じように海外へと移籍した。屋台骨の移籍はチームに大きな影響を及ぼすかに思えたが、今度は高卒5年目の浅村栄斗が台頭。最終的に110打点を挙げるなど、打者として大きく成長を見せて中島がいなくなった打線を支えた。
ただし、中島が抜けた後のショートのポジションは残念ながら埋めることができず、2017年に源田が出てくるまで苦しい状況を強いられてしまう。
◆ 打者が育つ土壌
上に挙げた「穴埋め例」はなかでも非常にうまく成功した例で、穴埋めに成功した年はリーグ優勝(1997年、2004年、2008年)したり、リーグ2位(2013年)でシーズンを終えたりと、好成績を残している。穴埋めどころか、戦力の増強に成功したといえるのだ。
ほかにも、西武はFA流出のたびにうまく穴埋めをしている。
▼ 1994年~1995年
石毛宏典 ⇒ 鈴木健
▼ 2010年~2011年
細川 亨 ⇒ 炭谷銀仁朗
▼ 2011年~2012年
帆足和幸 ⇒ 野上亮磨
▼ 2013年~2014年
片岡治大 ⇒ 浅村栄斗
▼ 2017年~2018年
野上亮磨 ⇒ 多和田真三郎(榎田大樹)
こうして見ていくと、新たな発見もある。FA流出をキッカケに台頭して穴埋めを担った選手が、後にFA移籍してしまうという流れができていることだ。松井稼頭央⇒中島裕之⇒浅村栄斗というのはその象徴的な例だろう。
今オフも浅村と炭谷が移籍。現時点では、浅村の抜けた二塁には外崎修汰をコンバートするという線が有力視されており、捕手は今季マスクを被る機会を増やした森友哉がそのまま入ることになるだろう。
打線も打点王が抜けるのは痛いとはいえ、顔触れをみるとそんなことは感じさせないラインナップ。また、西武といえば次から次へと強打者が台頭してくるチームなだけに、新星の登場にも期待が高まる。
文=中田ボンベ@dcp